外壁塗装のDIYはどこまで可能か|高所作業の線引き

業者選びと見積もり

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月5日編集方針と検証の手順

外壁の塗り替えに数十万円かかると知って、「自分でできないだろうか」と考える方は少なくありません。ホームセンターには外壁用の塗料が並んでいますし、動画サイトには自分で塗った記録がいくつも上がっています。

できるかできないかで言えば、できる部分とできない部分がはっきり分かれます。分かれ目は技術ではなく、地面から手が届くかどうかです。

この記事では、脚立やはしごからの転落について国が公表している数字と、外壁材のメーカー団体が出している手入れの資料をもとに、自分でやってよい範囲、やらないほうがよい範囲、やった結果あとで困ることを整理します。

なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。費用や工法の判断は、現地を見た施工業者によります。

  1. 結論:分かれ目は「足場が要るかどうか」
    1. この記事で扱わないこと
  2. どこまでが手の届く範囲か
    1. 「1階だけ塗る」が難しい理由
  3. 転落事故は何件起きているのか
  4. 足場の決まりは自分の家には及ばない
  5. 高圧洗浄機を自分で使うとどうなるか
  6. 洗剤を使った水洗いはDIYの範囲
  7. 屋根に上がるのは別の話になる
  8. 養生をなめると家の中まで汚れる
    1. 風のある日は中止する
  9. 塗るより前の工程のほうが長い
  10. 北海道では条件がさらに狭くなる
  11. そろえるものは塗料だけではない
  12. 余った塗料と缶をどう捨てるか
  13. 自分でやってよい範囲の目安
  14. 保証は誰も引き受けてくれない
  15. DIYで多い失敗の型
  16. チョーキングを落とし切れるか
  17. あとで塗り替えるときに不利になるか
  18. 業者に頼むと何が含まれているのか
  19. ひとりで作業しないという原則
  20. 見積もりを取ってから決めても遅くない
  21. よくある質問
    1. DIYならどのくらい安くなりますか
    2. 脚立で2階の壁を塗るのは無理ですか
    3. 高圧洗浄機を借りて洗うだけでも効果はありますか
    4. ローラーと刷毛、どちらを使えばいいですか
    5. 冬のあいだに準備だけしておくことはできますか
    6. 塗料は何を選べばいいですか
    7. 途中でやめてしまった場合、どうなりますか
    8. 物置やカーポートも同じ考え方ですか
    9. 2階の窓から手を伸ばして塗るのはどうですか
    10. DIYでやったことを業者に言わないほうがいいですか
  22. まとめ

結論:分かれ目は「足場が要るかどうか」

先に要点を示します。

  • DIYの線引きは、脚立やはしごに乗る必要があるかどうかです。乗る時点で性質が変わります
  • 脚立・はしごからの転落は、国民生活センターの医療機関ネットワークに433件(2010年12月〜2019年2月伝送分)の情報が寄せられ、約半数が入院を要する事故でした
  • 外壁材の団体は、高所作業を伴う点検・手入れ・塗り替えを施主自身が行わないよう求めています
  • 洗剤を使った水洗いのように、手の届く範囲でできる手入れははっきりあるので、そこは自分でやってかまいません

費用を抑えたい気持ちは自然なものです。ただ、削れるのは「手間」ではなく「工程の順番」ではないという点は、先に知っておいたほうが後悔が少なくなります。

この記事で扱わないこと

どこまでが手の届く範囲か

手の届く高さの外壁

まず物理的な話です。一般的な2階建て住宅で、地面に立って手が届くのは高さ2メートル前後までです。ここから上は、脚立か、はしごか、足場が必要になります。

足が着くかどうかで作業の性質が変わる
足が着くかどうかで作業の性質が変わる
高さ 必要になるもの 作業の性質
足が床に着く範囲 なし、または踏み台 手入れの範囲
脚立・はしごに乗る範囲 脚立・はしご 低い高さでも重傷事故が報告されている
2階まわり 足場 個人が組めるものではない

1階の腰から下、玄関まわり、物置の壁といった足の着く場所であれば、DIYを検討する余地があります。ただし高さだけで決まるものではありません。素材が何か、いまどんな傷み方をしているか、使う塗料がその素材に合うかで判断は変わります。窯業系サイディングのように、塗り替えは住宅会社等に相談するよう案内されている外壁材もあります。

反対に、2階の壁面、破風、軒天、雨どいの上側は、いずれも脚立やはしごの上での作業になります。

ここで注意したいのは、塗る作業だけでなく、その前の洗浄と補修も同じ高さで行うという点です。塗るのは一度でも、洗う・乾かす・補修する・下塗りする・上塗りするで、同じ場所に何度も上がることになります。作業の回数だけ、危険にさらされる回数が増えます。

「1階だけ塗る」が難しい理由

1階だけなら足が着くから、と考えたくなりますが、外壁は面でつながっています。1階だけを塗ると、2階との境目で色とツヤの差がはっきり出ます。同じ塗料でも、経年した塗膜の上と新しい塗膜では見え方が変わるためです。

加えて、外壁は上から下へ水が流れる面です。上側を触らずに下だけ直しても、上から流れてくる汚れや水の影響は変わりません。部分補修としては成り立っても、塗り替えの代わりにはならないと考えたほうが実態に合います。

転落事故は何件起きているのか

転倒した脚立

国民生活センターは、脚立やはしごが関係する事故について、医療機関ネットワークに寄せられた情報を公表しています。数字を引用します。

脚立・はしごの事故の実態

20歳以上の事故が458件報告され、そのうち転落事故が433件で約95%を占めています。約半数(206件)で入院を要し、3件の死亡事故も発生しました。年代では60〜70歳代が半数以上(236件)。屋外での事故が約8割を占めています。

この数字の読み方に注意が必要です。これは2010年12月以降2019年2月末までに、医療機関ネットワークの参画医療機関から伝送された事例を精査したもので、全国の事故件数でも、直近の集計でもありません。実際に起きている事故はこれより多いと考えるほうが自然です。

症状の内訳では骨折が4割で、頭蓋内損傷や脊髄損傷といった重いけがも報告されています。若い人は手足を痛めるのに対し、高齢になるほど頭や胴体を打っているという傾向も示されています。

同センターは消費者へのアドバイスとして、脚立やはしごを使用しない方法を検討すること、一人きりでの作業をやめること、作業中の「あと少し」をなくすことなどを挙げています。塗装に限った話ではありませんが、外壁の作業はここで挙げられている条件をほぼ全部満たしてしまいます。

出典:国民生活センター「思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落」

足場の決まりは自分の家には及ばない

住宅を囲む足場

ここは誤解されやすいところです。足場に関する細かい決まり(幅1メートル以上の場所では本足場を原則とする、悪天候のあとに点検する、など)は労働安全衛生規則にもとづくもので、事業者と労働者の関係に適用されます。持ち家を自分で塗る個人には、そのままの形では適用されません。

ただ、規則が適用されないことと、危なくないことは別です。厚生労働省の資料では、一人親方等を含めた建設工事従事者全体で、年間約400人が現場での災害により亡くなっているとされ、その対策として足場の基準が強化されてきました。これは外壁塗装だけの数字ではなく建設工事全般のものですが、規則で守られ、指導も受けている現場でさえ、事故がなくならないという事実は残ります。規則の外にいる個人が、そのぶん安全になるわけではありません。

出典:厚生労働省「足場からの墜落防止措置が強化されます」

高圧洗浄機を自分で使うとどうなるか

高圧洗浄機のノズル

家庭用の高圧洗浄機は手に入りやすく、外壁の汚れがよく落ちます。ただし、外壁材のメーカー団体は注意と禁止をはっきり書き分けています

  • 高圧洗浄 … サイディングの塗膜やシーリング目地を傷めることがある(注意)
  • スチーム洗浄 … 塗膜や目地を傷めるのでやめてほしい(禁止)
  • 基本は「水洗い」または「洗剤を用いた水洗い」

業者の高圧洗浄と家庭用機での洗浄は、圧力の管理と当て方が違います。近づけすぎる、同じ場所に当て続ける、目地に直角に当てるといった使い方をすると、汚れといっしょに塗膜やシーリング材を削ってしまいます。削れた目地から水が入れば、洗ったことがきっかけで傷みが進みます。

洗浄そのものの目的と工程は高圧洗浄の記事で扱っています。

出典:日本窯業外装材協会「サイディングの維持管理はどうするの お施主様へ」

洗剤を使った水洗いはDIYの範囲

柔らかい布での水洗い

やらないほうがよいことばかり並べましたが、手の届く範囲の手入れは、資料でも施主向けに案内されています。窯業系サイディングの維持管理資料には、次の方法が示されています。

手順 内容
1 食器洗い用洗剤を水で5〜10倍程度に薄める
2 柔らかい布か柔らかいブラシで洗う
3 流水で十分に洗い流す

骨材が入った仕上げなど、柔らかい布が適さない仕上げもあると注記されています。また、藻やカビを殺す薬剤で繁殖は止められても、色素のある藻やカビは死んでも跡が残ること、漂白作用のある薬剤はサイディング自体を傷める危険があることも書かれています。

同じ資料には、高所作業を伴う点検やお手入れ、塗り替えや補修工事は、お施主様ご自身では絶対に行わないでくださいという一文があります。手入れは勧めつつ、高所は止める。この線引きがそのまま答えになっています。

コケや藻そのものの見分け方は外壁のコケ・藻・カビの記事で扱っています。

出典:日本窯業外装材協会「サイディングの維持管理はどうするの お施主様へ」

屋根に上がるのは別の話になる

住宅の屋根

外壁より危ないのが屋根です。理由は転落だけではありません。

  • 化粧スレートは踏む場所を誤ると割れます。割れた場所から水が入ります
  • 金属屋根は乾いていても滑ります。勾配が緩く見えても、靴底の相性で足が出ます
  • 北海道に多い無落雪屋根は、中央のといに向かって水が集まる形です。といや排水口を踏むと変形します
  • 屋根の上では体を支えるものがありません。バランスを崩したときに掴む先がない状態です

「上がって見てくるだけ」も同じです。警視庁は点検商法への注意のなかで、屋根に登らせないでくださいと呼びかけていますが、これは他人だけの話ではありません。自分が上がっても危険は変わりません。

屋根の状態を知りたいだけなら、地上から双眼鏡で見る、脚立の上ではなく2階の窓から見る、棒の先にスマートフォンを固定して撮るといった方法があります。屋根材ごとの見方は屋根材と塗装の記事にまとめています。

出典:警視庁「点検商法」

養生をなめると家の中まで汚れる

窓まわりの養生

塗装で意外と手間がかかるのが養生です。塗料は思った以上に飛びます。ローラーで転がすだけでも細かい飛沫が出ますし、風があれば数メートル先まで届きます。

養生する場所 忘れると起きること
窓・サッシ ガラスとゴムに点状の汚れが残る
玄関まわり・照明 触れる場所に手あとが付く
給湯器・換気フード 吸気口をふさぐと運転に影響する
植栽・芝 洗剤や塗料が落ちて枯れることがある
隣家の車・物置 賠償の話になる

とくに隣家の車に飛んだ場合は、拭けば取れるとは限りません。乾いた塗料は塗装面に固着します。業者に頼めばこの範囲は工事に含まれますが、自分でやるなら飛散の責任も自分で負うことになります。

風のある日は中止する

養生をきちんとしても、風のある日は塗料が飛ぶ範囲が読めません。プロの現場でも風の強い日は塗装を止めます。日程の都合で無理に進めると、近所とのトラブルにつながります。

塗るより前の工程のほうが長い

下地を整える作業

DIYの見積もりが甘くなるのは、たいてい塗る前の工程です。国の仕様書では、塗装の前に行う「素地ごしらえ」が素地の種類ごとに定められています。汚れや付着物の除去、研磨、穴埋めといった作業です。

戸建ての塗り替えでも、実際の順序はこうなります。

  • 洗浄 → 乾燥を待つ
  • ひび割れ・欠損の補修
  • 目地の打ち替え → 硬化を待つ
  • 養生(窓・床・植栽を覆う)
  • 下塗り → 乾燥を待つ → 中塗り → 乾燥を待つ → 上塗り

待ち時間がそのまま工期です。塗料には塗り重ねの間隔が製品ごとに決められていて、短すぎても長すぎても本来の性能が出ません。休みの日だけで進めると、この間隔が守れなくなります。

塗り回数と使用量の考え方は塗り回数と塗料の量で扱っています。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」

北海道では条件がさらに狭くなる

国の仕様書には、気温5℃以下、湿度85%以上、結露などで乾燥に不適当な場合は塗装を行わないという条件があります。ただし、これは公共建築物の工事を発注するための基準であって、戸建て住宅にそのまま適用されるものではありません。実際に守るべき温度・湿度は製品ごとに違うので、使う塗料の施工仕様書が優先します。ここでは「どのくらいの水準が問題になるのか」の目安として引用しています。

北海道では、これに次の条件が重なります。

  • 条件を満たす日が春から秋に集まるため、途中で冬に入ると再開が翌年になりやすい
  • 朝晩の冷え込みが早く、1日のうちで塗れる時間帯が短い
  • 塗り終わらないまま冬を越すと、下塗りだけの状態で雪と凍結にさらされる

途中でやめられないという点が、北海道でのDIYをいちばん難しくしています。時期の考え方は北海道で外壁塗装ができる時期にまとめています。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」

そろえるものは塗料だけではない

材料費が安く見えるのは、塗料以外を数えていないからということがあります。手の届く範囲を塗る場合でも、実際にはこれだけのものが要ります。

区分 具体的なもの
塗料 下塗り材、上塗り材(下塗りは素地で変わる)
下地 補修材、パテ、研磨紙、ワイヤーブラシ
養生 マスカー、マスキングテープ、ブルーシート
塗る道具 ローラー、替えローラー、刷毛、バケット
洗い 洗剤、柔らかいブラシ、ホース
身を守るもの 手袋、保護めがね、防じんマスク、汚れてよい服
後始末 ウエス、新聞紙、廃液を入れる容器

意外に響くのが下塗り材です。素地の状態によって使う種類が変わり、上塗りだけを買っても足りません。チョーキングが進んだ壁には浸透して固める種類、吸い込みの激しい壁には別の種類、というように選択が分かれます。

ここを省いて上塗りだけを重ねると、はがれる時期が早くなります。塗料の選び方は寒冷地で選ぶ塗料で扱っています。

余った塗料と缶をどう捨てるか

見落とされがちなのが後始末です。塗料は、中身が残ったままでは一般ごみとして出せないのが通例です。扱いは市町村ごとに違い、少量なら新聞紙などに吸わせて固めてから可燃ごみ、缶は資源として分別、というように案内が分かれます。

合わせて注意したいのが次の点です。

  • 洗い水を排水溝や側溝にそのまま流さない
  • 油性塗料のうすめ液は引火性があるので、火気と換気に注意する
  • 使った布やウエスは、まとめて放置すると発熱することがある

捨て方はお住まいの市町村のごみ分別案内で確認してください。業者に頼んだ場合、残った材料と廃材の処分は工事の中に含まれます。

自分でやってよい範囲の目安

ここまでを一覧にまとめます。あくまで一般的な目安で、建物の状態によって変わります。

やること DIYの可否の目安 理由
手の届く範囲の水洗い できる 資料でも施主向けに案内がある
基礎まわり・物置の塗装 できる 高所作業にならない
ウッドデッキ・木の柵 できる 塗り直しが効く
2階の外壁 勧められない 高所作業になる
屋根 勧められない 転落と踏み割りの危険
目地の打ち替え 勧められない 後の補修の妨げになる
ひび割れの充填 慎重に 水の逃げ道をふさぐことがある

ひび割れを市販の材料で埋める作業は、あとから正しく直すときの手間を増やすことがあります。判断の目安は外壁のひび割れの記事にまとめています。

保証は誰も引き受けてくれない

自分で塗った場合、当然ながら施工の保証はどこにもありません。次の点も押さえておいてください。

  • 塗料メーカーの保証は製品そのものの品質についてのもので、塗り方の結果までは対象になりません
  • リフォームかし保険は登録した事業者が使う仕組みで、自分で施工した工事には使えません
  • 作業中に自分がけがをしても、労災保険は適用されません(雇われて働く人のための制度です)
  • 脚立の転倒で隣家の車や窓を壊した場合は、個人賠償責任の話になります

保証やアフター点検の中身については塗装の保証とアフター点検で扱っています。

DIYで多い失敗の型

公開されている失敗例と、材料の仕様から想定できるつまずきを整理します。どれも塗る技術より、条件の管理でつまずいているのが共通点です。

起きること 原因になりやすい条件
数か月ではがれる 汚れ・チョーキングを落とし切っていない
塗ったのに色ムラが出る 使用量が足りず膜が薄い/塗り継ぎの位置
ふくれが出る 下地が乾く前に塗った
光沢が出ない 低温・高湿で乾燥が進まなかった
1年で色が褪せる 屋外用でない塗料を使った
目地まわりで塗膜が割れる・べたつく シーリング材と塗料の相性を確かめずに塗り重ねた

最後の項目は説明が要ります。シーリングの上を塗ること自体は、珍しいことではありません。国の仕様書にも、シーリング材が硬化したあとに塗り重ね適合性を確認したうえで塗装する手順が示されています。

問題になるのは組み合わせのほうです。シーリング材と塗料が合っていないと、塗膜が割れる、いつまでもべたつく、変色するといったことが起こります。動きに追従できない塗膜であれば、目地の伸縮でひび割れます。製品どうしの適合性は、メーカーの資料を見ないと分かりません。ここがDIYでつまずきやすいところです。

目地の扱いはコーキングの打ち替えの記事で扱っています。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」

チョーキングを落とし切れるか

手で触ると白い粉が付く状態をチョーキングと呼びます。塗膜の樹脂が紫外線で分解し、顔料が表面に出てきた状態です。

この粉の上に塗料を乗せると、粉ごとはがれます。だから洗浄で落とす必要があるのですが、家庭用の洗浄機と手作業でどこまで落ちるかは、壁の状態によります。落ちたかどうかの判断も、乾いてから手で触って確かめるしかありません。

国の仕様書では、塗装の前に行う工程として汚れ・付着物の除去が素地ごとに定められています。木部であれば油類は溶剤でふき取る、やには削り取るか電気ごてで焼いてからふき取る、といった具合です。プロの工程でもここに手数がかかっているということが読み取れます。

あとで塗り替えるときに不利になるか

DIYで塗った壁を、あとから業者に頼む場面はよくあります。このとき問題になるのは「何をどう塗ったか分からない」という状態です。

塗料には水性と油性、樹脂の種類、下塗り材との相性があります。相性の悪い塗料を重ねると、はがれやふくれの原因になります。前に何を使ったか分からないと、業者は安全側に振って下地から作り直すことになり、その分の費用が乗ります。

DIYで塗るなら、使った塗料の製品名・色番号・購入時期・塗った範囲を写真とメモで残しておいてください。これがあるだけで、次の工事の判断がずいぶん楽になります。

業者に頼むと何が含まれているのか

DIYと比べるときは、塗料代だけを並べても比較になりません。工事に含まれているものを並べると、次のようになります。

工事に含まれるものと、自分でやる場合に自分が負うもの
工事に含まれるものと、自分でやる場合に自分が負うもの
  • 足場の架設と解体、およびその期間の安全管理
  • 洗浄と、洗い水・廃材の処分
  • ひび割れ・欠損・目地の補修
  • 養生(自宅と近隣の両方)
  • 塗装(下塗り・中塗り・上塗り)と、乾燥時間の管理
  • 近隣へのあいさつと工程の連絡
  • 工事中の事故に備えた保険
  • 引き渡し後の保証と点検

ただし、この内訳は業者と契約によって変わります。塗装の保証期間や対象範囲は法律で一律に決まっているものではなく、施工者との契約で決まるものです。廃材処分や近隣対応が含まれているかも、見積書によって違います。何がいくらで含まれているのかは、契約前に見積書と契約書で確かめてください。

そのうえで、個人でそのまま置き換えられるのは塗装の作業だけです。足場、廃材処分、保険、保証は代わりがありません。金額の差はここに出ています。

工事中の事故と保険の考え方は工事中の事故と近隣への損害で扱っています。

ひとりで作業しないという原則

国民生活センターのアドバイスに「一人きりでの作業はやめましょう」という項目があります。地味ですが、事故の重さを左右する条件です。

公表されている事例では、音を聞いた家族が駆けつけた、うめき声に気付いた近所の人が救急要請したという経過が記されています。裏を返せば、気付く人がいなければ発見が遅れていた状況です。

どうしても作業するのであれば、誰かに声をかけてから始める、作業時間を伝えておく、携帯電話を身につけるといったことは最低限の備えになります。高齢の家族が同じことをしようとしているときは、止めるより先に代わりの方法を出すほうが受け入れられやすいようです。

出典:国民生活センター「思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落」

見積もりを取ってから決めても遅くない

DIYを検討している段階でも、まず見積もりを取ってみることをおすすめします。理由は3つあります。

  • 自分の家の実際の塗装面積が分かる(延床面積からの概算とはずれます)
  • 塗装以外に補修が要る箇所が見つかることがある
  • 足場・洗浄・下地補修・塗装の費用の内訳が見える

見積書を見たうえで「ここは自分でやる」と決めるなら、それは根拠のある判断です。見積書の読み方は見積書のチェックポイントにまとめています。

点検を勧めてくる訪問には注意

「無料で点検します」と訪ねてきた相手を屋根に上げるのは避けてください。国民生活センターや警視庁は、点検を口実にした勧誘への注意を呼びかけています。詳しくは訪問販売・点検商法の記事で扱っています。

よくある質問

DIYならどのくらい安くなりますか

材料費だけを見れば安くなりますが、足場を組まずに済ませようとする時点で範囲が限られます。物置や柵のように手の届く範囲であれば、材料費だけで収まることもあります。壁一面の塗り替えを比べる形にはなりにくいというのが実際のところです。

脚立で2階の壁を塗るのは無理ですか

物理的にできる場面はあります。ただ、片手で塗りながら体を支える姿勢になり、事故の情報がいちばん集中している条件です。国民生活センターも「脚立やはしごを使用しない方法を検討しましょう」と案内しています。

高圧洗浄機を借りて洗うだけでも効果はありますか

汚れは落ちます。ただし、外壁材の団体は高圧洗浄が塗膜や目地を傷めることがあると注意しています。手の届く範囲であれば、洗剤を薄めた水洗いのほうが安全です。

ローラーと刷毛、どちらを使えばいいですか

面はローラー、細かい部分は刷毛、というのが一般的な使い分けです。ただ、道具より使用量の管理のほうが仕上がりを左右します。薄く伸ばして塗ると、見た目は塗れていても膜の厚みが足りません。

冬のあいだに準備だけしておくことはできますか

できます。塗る作業はできませんが、写真を撮って傷みを記録する、業者を探す、見積もりを取るといった準備は冬のうちに進められます。冬の過ごし方は冬に見つけた傷みへの応急処置で扱っています。

塗料は何を選べばいいですか

外壁材との相性と、下塗り材の選択で決まります。北海道では低温での乾燥条件も関わってきます。寒冷地で選ぶ塗料にまとめていますが、判断が難しいと感じたら、それ自体が業者に頼む理由になります。

途中でやめてしまった場合、どうなりますか

下塗りだけの状態は、仕上げの塗膜がないぶん、雨や紫外線に弱い状態です。北海道では、そのまま冬を越すと凍結の影響も受けます。再開の見通しが立たないときは、早めに業者へ相談してください。

物置やカーポートも同じ考え方ですか

屋根に上がらずに済むなら、物置や柵、ウッドデッキはDIYに向いています。塗り直しが効きますし、失敗しても住まいの防水に影響しません。屋外用の塗料を選び、素地の汚れを落としてから塗るという基本は同じです。

2階の窓から手を伸ばして塗るのはどうですか

窓枠に体重を預ける姿勢になり、脚立の上と同じかそれ以上に不安定です。手が届く範囲も限られるため、塗り継ぎの跡が残りやすくなります。

DIYでやったことを業者に言わないほうがいいですか

逆です。伝えたほうが正確な見積もりになります。使った塗料が分からないと、業者は安全側の工程を組むしかなく、費用が上がる方向に働きます。

まとめ

外壁塗装のDIYは、できる範囲とできない範囲がはっきり分かれます。分かれ目は塗る技術ではなく、脚立やはしごに乗るかどうかです。

脚立・はしごからの転落については、国民生活センターの医療機関ネットワークに433件の転落事故(2010年12月〜2019年2月伝送分)の情報が寄せられ、約半数が入院を要し、死亡事故も3件報告されています。60〜70歳代が半数以上を占めるという内訳も示されています。全国の総数ではなく、参画医療機関から集まった範囲の数字です。

一方で、手の届く範囲の手入れは、外壁材の団体自身が施主向けに方法を案内しています。食器洗い用洗剤を5〜10倍に薄め、柔らかい布かブラシで洗って流水で流す。この範囲であれば、自分でやる価値のある手入れです。

塗る作業そのものより、洗浄・補修・乾燥待ちという前工程のほうが長いという点も見落とされがちです。北海道では塗れる期間が限られるため、途中で止まると翌シーズンまで持ち越しになります。

費用を抑えたいのであれば、まず見積もりを取り、内訳を見てから範囲を決めるほうが結果的に安全です。壁一面をどうするかと、物置や柵をどうするかは、別々に決めてかまいません。

もうひとつ、判断のときに忘れられがちな点があります。自分でやると決めた瞬間から、工期の管理も自分の責任になります。洗ってから乾かす時間、目地が固まるまでの時間、塗り重ねの間隔。どれも待つしかない時間で、天気次第で伸びます。休みの日だけで進めると、この待ち時間が何週間にも広がります。

そのあいだ、外壁は下塗りだけの状態で外気にさらされます。北海道では、この期間が長引くほど冬に近づきます。始める前に、終わりまでの日程が引けるかどうかを確かめてください。引けないのであれば、その時点で結論は出ています。

業者に一部だけ頼めるかどうかは、部分塗装の記事にまとめています。

手が届く塀を自分で塗る場合も、先に確かめることがあります。詳しくはブロック塀の塗装の記事をご覧ください。

工事中のにおいの正体と対処は外壁塗装のにおいにまとめています。

ドローンを使った点検の法令と限界は外壁のドローン点検にまとめています。

本記事は公表資料をもとに一般的な考え方を整理したもので、個別の住宅における作業の可否や安全性を判断するものではありません。労働安全衛生規則にもとづく義務は事業者に課せられるもので、持ち家を自身で作業する個人に直接適用されるものではありません。公共工事の仕様書は公共建築物を対象としたもので、戸建住宅にそのまま適用されるものではありません。塗料・廃液の処分方法は市町村により異なります。高所での作業には転落の危険が伴います。実際の作業の可否は、ご自身の状況をふまえて慎重にご判断ください。

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