タイルの家を選んだとき、「これなら塗り替えが要らない」と聞いた方は多いと思います。ところが年数がたつと、目地に黒い筋が出て、白いものが垂れ、春の雪解けのあとに足元でかけらを見つける。
訪問してきた業者から「タイルが浮いていますよ」と言われて、その場で判断できずに調べ始めた方もいるはずです。困るのは、何を見れば手入れが要ると分かるのか、そして誰の言うことを信じればよいのかが分からないことです。
手がかりになるのは、国が公共建築の改修について定めている仕様書と、タイルの業界団体が公開している資料です。ここでは、その2つを軸に、見る場所・確かめ方・直し方・北海道で工事ができる時期を順に整理します。
当サイトの運営者は塗装の専門家ではなく、公的資料とメーカーの公開仕様を読んで整理する立場です。金額は書かず、見積書のどの行が動くかまでにとどめます。
結論:外壁タイルは「目地と浮き」を見る外壁
タイルそのものは焼き物なので、本体を保護するための塗り替えは要りません。傷みが出るのは目地・シーリング・下地・タイルの裏側で、タイル自体にもひび割れや欠けは起きます。国が定期報告で使う調査の項目は「タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等の劣化及び損傷の状況」で、その判定基準には剥落・著しい白華・ひび割れ・浮きが並びます。見る対象は、この4つです。このうち浮きは目で見ても分からないので、叩いて範囲を確かめます。直し方は1か所の浮きの大きさで分かれ、北海道ではそこに吸水率と気温が加わります。ただし、どこまで当てはまるかは張り方で変わるので、そこから確かめる順番になります。
出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
この記事で扱わないこと
重なるテーマは既存の記事に譲ります。外壁材どうしの比較は外壁材の種類と選び方、下地のモルタルそのものの改修はモルタル外壁の塗装にまとめました。
壁を全部替える工事は外壁張り替えで何が起きる?、分譲マンションで誰がどう決めるかはマンションの外壁塗装にあります。凍害の仕組みそのものと、ひび割れの幅の読み方も深追いしません。
張り方は湿式・乾式・接着剤で3つに分かれる
同じ「タイル外壁」でも、留め方は1つではありません。セメントモルタルで張る湿式、専用の下地に引っ掛ける乾式、有機系接着剤で張る方法の3つがあります。どれに当たるかで、このあと出てくる国の資料が自分の家に当てはまるかどうかが変わります。改修の仕様書は「セメントモルタルによるタイル張り仕上げ外壁」に範囲を区切り、国の全面打診ルールも乾式を対象から外しています。先に張り方を押さえておけば、業者の説明も読み分けられます。

3つの張り方は留め方と適用範囲が違う
| 張り方 | 留め方 | 国の改修仕様書の適用範囲 |
|---|---|---|
| 湿式(セメントモルタル張り) | 下地モルタルを介してタイルを張る | 4章4節が対象にしている張り方 |
| 乾式(引っ掛け) | 専用の下地にタイルを物理的に引っ掛ける | 適用外。メーカーの施工要領による |
| 接着剤張り | 有機系接着剤で下地に張る | 材料の規格は仕様書にあるが、改修の節は湿式が前提 |
湿式は下地モルタルの層をはさむので、浮きは「タイルと下地のあいだ」だけでなく「下地と躯体(建物の骨組み)のあいだ」でも起きます。乾式は専用の下地に引っ掛けて留める方式で、国の資料には点検方法の記述がないため、見る場所はメーカーの施工要領によります。
メーカーの工法名から張り方をたどる
新築時の図面が残っていれば、仕上表に工法名が書かれています。メーカーの外装タイルには工法ごとに名前が付いています。たとえばLIXILは、専用の下地に引っ掛ける方法と、弾性接着剤で張る方法を別の工法として案内しています。
図面が見当たらないときは、建てた会社や販売した会社に問い合わせるのが早道です。壁を見ただけで湿式と乾式を言い当てるのは難しいので、図面か施工した会社の情報を優先してください。
仕様書が想定するのはモルタル張り
この記事で何度も引く国の改修仕様書は、4章4節の冒頭で適用範囲を区切っています。「この節は、既存のセメントモルタルによるタイル張り仕上げ外壁の改修に適用する」と書かれており、乾式で引っ掛けたタイルは想定されていません。
なお、業界団体が運営する接着剤張りの認定制度は、下地の範囲を限っています。コンクリート・モルタル・押出成形セメント板・ALCパネルと、厚さ14mm以上の窯業系サイディングです。接着剤で張れる下地にも線が引かれている、ということになります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/全国タイル工業組合「Q-CAT認定制度」
「タイルはメンテナンスフリー」でも周りは傷む

「タイルは手入れが要らない」という説明は、半分だけ当たっています。焼き物のタイルは日光や雨で色があせにくく、塗り替えの対象になりません。ただしタイルを留めている目地・シーリング・下地モルタル・接着層は、他の外壁と同じように傷みます。国の判定基準に挙がっている4項目のうち、目地から染み出す白華と浮きはタイル本体ではなく目地や裏側に出るサインで、ひび割れはタイルにも目地にも出ます。「塗り替えが要らない」ことと「見なくてよい」ことは、別の話になります。
剥落・白華・ひび割れ・浮きの4項目を見る
剥落は、タイルが落ちて下地がむき出しになっている状態です。白華は白い粉や筋で、ひび割れはタイル面だけでなく、目地の切れも数に入れてください。
浮きは、タイルと下地、または下地と躯体のあいだに隙間ができた状態を指します。表からは分からないので、あとで触れる打診で確かめることになります。
自分で見るのは手の届く範囲と足元まで
自分で確かめるのは、手の届く高さと、壁の足元までにしてください。見るのは、目地の切れや欠け、白い筋、そして地面に落ちているかけらです。
写真を撮って日付とともに残しておくと、業者の説明と突き合わせられます。高い場所に上がって見るのは工事の領分で、道具も足場もない状態で近づくものではありません。劣化のサインの見方は外壁の劣化サインはどこを見る?にまとめています。
白華は2種類、鼻たれと粉吹きで対処が違う

白いものが出たとき、その正体は2つに分かれます。全国タイル業協会は、目地から染み出してタイルに覆いかぶさるものを「鼻たれ」、釉薬(うわぐすり)のないタイルの表面に粉が吹くものを「粉吹き」と呼び分けています。鼻たれは、タイルの裏面の隙間や壁面のひび割れから外の水が入ると発生する、と説明されています。しかも「いったん発生した鼻たれは、水の入り口をなくさない限り容易には止まりません」。一方の粉吹きは水洗いで落ち、通常2〜3年で細孔がふさがって出なくなるとされています。同じ白でも、原因も対処も違います。
出典:一般社団法人全国タイル業協会/全国タイル工業組合「よくある質問(タイルのお手入れ編)」
雨筋の黒い汚れと虹色は劣化ではない
目地周りの黒ずみは、多くが汚れです。同協会は、埃・排気ガス・煤煙が「雨水の流れる個所に集中してスジ状に残る汚れ」と説明し、水洗いや拭き取りで落ちるとしています。サッシ周りのシーリング材から溶け出した成分に塵埃が付いて汚れになることもあります。
タイルが虹色に光る現象も、汚れが平滑な膜になって光が干渉するものです。協会は「特にタイルの吸水性が少なく表面につやがあり、平滑度の高い良質タイルに生じやすい」としています。どちらも国の判定4項目には入りません。洗い方の基本は高圧洗浄は何をしているのかを参考にしてください。
浮きは打診で範囲を確かめ、位置を印してもらう

浮きの扱いは、国の仕様書では点検ではなく工事の一部として書かれています。「補修範囲は、テストハンマー等により、はく落のおそれがある浮き部について確認し、アンカーピンニング等の位置をチョーク等で明示する」という手順です。大事なのは、浮きが「あるかないか」ではなく「どこからどこまでか」を決める作業だという点になります。範囲が決まらなければ、工法も数量も決まりません。印の付いていない「浮いています」は、この手順でいえば途中で止まっている状態です。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
打診音は高くなる傾向、ただし一律ではない
建築研究所の資料は、打診法を次のように説明しています。ハンマーで仕上材の表面を軽く打撃し、その打撃音の大きさや周波数の高低を健全な部分と相対的に比較して、浮きの有無を判断する方法です。
「一般的に浮きのある部分の打撃音は高音となる傾向」があり、浮きの層が表面に近いほどはっきりするとのことです。ただし同じ資料は「仕上材の種類や浮きの状況によってはその傾向は一律ではない」とも断っています。健全な部分と聞き比べる前提の方法なので、素人が1か所だけ叩いて判定できるものではありません。
出典:国立研究開発法人建築研究所「建築研究資料No.145」
浮いていると言われたときに聞く3つ
その場で契約せず、次の3つを聞いてください。どこを見たのか、目視か打診のどちらで確かめたのか、そして浮いている範囲に印を付けたのか。
3つとも答えが返ってくるなら、記録として残せます。屋根や壁に上がらせる前に断るべき場面もあるので、断り方は外壁塗装の訪問販売|断り方とクーリング・オフを先に読んでおくと落ち着いて対応できます。
国の全面打診ルールは戸建てに何を意味するか

「10年に一度は全面打診」という話を見かけますが、これは建築基準法12条にもとづく定期報告の調査方法です。対象は特定建築物(一定規模以上の学校・病院・店舗など、定期報告の対象になる建物)で、戸建て住宅の義務ではありません。しかも調査項目は「タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)」となっており、乾式のタイルは外れています。それでも、目視から手の届く範囲の打診、そして落下で人に危害が及ぶ部分の全面打診へと進む3段階の考え方は、点検を頼むときの注文の仕方として使えます。年数のほうは調査の周期であって、手入れの周期ではありません。
出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
落ちたら人に当たる面から先に見る
この考え方の原型は、外壁タイルの落下による人身事故をきっかけに出された平成2年の建設省通達にあります。別紙の診断指針は、壁の高さのおおむね半分までの範囲に公道や通路がある壁面を「災害危険度」の大きい壁面と定めました。高さ6mの壁なら、3mほど先までに人の通る場所があるかどうかです。
落下の危険が及ぶ範囲を示す「影響角」は、縦2・横1の勾配で引いた斜線と壁面がなす角と定義されています。家に置き換えれば、玄関やポーチの上のように、その範囲に人が通る面が先に見る場所になります。
出典:建設省「外壁タイル等落下物対策の推進について(住指発第二二一号)」
赤外線は「打診と同等以上」が条件
令和4年1月の告示改正で、打診以外の調査方法として無人航空機による赤外線調査が明確化されました。条件は「テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」であることです。
つまり赤外線なら何でもよいわけではありません。ドローンで何が分かり、何が分からないのか、費用と法律の線引きは外壁のドローン点検に詳しく書いています。
タイル補修は4系統、浮きだけで9工法ある
国の改修仕様書は、タイル張り仕上げ外壁の改修を4つに分けています。ひび割れ部・欠損部・浮き部・目地で、それぞれに工法名が並びます。なかでも浮き部は9工法あります。よく見かける「アンカーピンか張り替えか」という2択は、この9つを大づかみに2つへ束ねた言い方にすぎません。見積書に書かれた工法名が4系統のどこに当たるかを見れば、業者が何を直そうとしているのかが読めます。仕様書と違う呼び名で書かれていたら、どの系統の工事なのかを業者に聞いてください。
見積書の工法名を4系統に当てはめる
| 系統 | 仕様書に並ぶ工法 |
|---|---|
| ひび割れ部 | 樹脂注入工法 |
| 欠損部 | タイル部分張替え工法/タイル張替え工法 |
| 浮き部 | アンカーピンニング系6工法/注入口付タイル固定工法/タイル部分張替え工法/タイル張替え工法の計9工法 |
| 目地 | 目地ひび割れ部改修工法/伸縮調整目地改修工法 |
アンカーピンは、タイルと下地を貫いて躯体まで届かせる金属のピンで、浮いた部分が落ちないように留める部品です。浮き部の9工法のうち6つは、注入口付のピンを使うか、注入を部分にするか全面にするか、注入する材料は何か、という組み合わせで枝分かれします。残りは、タイル中央から留める固定工法が1つと、部分と全面の張り替えが2つです。名前が長いのは組み合わせを並べているからで、覚える必要はありません。
張り替えの2工法は欠損部と浮き部の両方に並ぶので、名前だけでは症状が決まりません。どちらへの張り替えなのかを聞いてください。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
1か所0.25㎡が浮きの直し方の分かれ目
国の資料が分かれ目に置いているのは、壁全体で何㎡浮いているかではありません。1か所あたりの大きさです。仕様書のタイル部分張替え工法は「1か所当たりの張替え面積が0.25㎡程度以下の場合に適用する」とされています。0.25㎡はおよそ50cm角です。建築研究所の資料は、下地モルタルを含む層が躯体との間ではく離した場合について、0.25㎡未満なら部分的なピンと注入を選ぶ、と整理しています。0.25㎡以上では、剥落を防ぐだけなら同じ部分注入でよく、水の侵入を止めて耐久性まで確保するなら全面注入を選ぶ、という分け方です。だから、打診で範囲に印を付けてもらう作業が先に来ます。

全面注入は接着ではなく水を止めるため
エポキシ樹脂を入れれば元どおり接着する、という説明には注意が要ります。建築研究所の資料は、浮き間隙に注入された樹脂が躯体と仕上げ層を必ずしも確実に接着するとは考えられないとしています。劣化した面に樹脂を入れただけで接着できると考えるのは誤りだ、とも書かれています。
同資料の整理では、剥落に対する安全性はアンカーピンで確保し、全面注入の効果は浮き間隙をなくして水の侵入を防ぐことにあります。穿孔した穴の中では樹脂がピンと一体になって固まるので、樹脂が働かないという話ではありません。役割が分かれている、ということです。「注入だけ」という提案を受けたら、ピンを打つのかどうかを確かめてください。
出典:国立研究開発法人建築研究所「建築研究資料No.145」
穿孔は目地へ逃がし、固定工法だけ中央
タイルに穴をあけられるのが不安、という方は少なくありません。仕様書のアンカーピンニング系6工法には、いずれも同じただし書きが付いています。「穿孔位置がタイル陶片にかかる場合は、穿孔位置を近傍のタイル目地部分に釣り合いを保ちながら移動する」という規定です。
同じ「注入口付」でも、部分注入と全面注入の3工法は目地へ逃がす側です。中央にあけるのは注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入タイル固定工法だけで、特殊ドリルでタイル中央に穴をあけ、化粧キャップか樹脂パテでふさぎます。適用できるタイルの大きさは小口平以上が目安で、小口平は60mm×108mmのタイルを指します。穴の位置は工法で決まるので、どちらを使うのかを聞けば見た目の変化も予想できます。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/一般社団法人全国タイル業協会/全国タイル工業組合「よくある質問(タイル基礎編)」
ひび割れ・欠損・目地は手順と協議の分かれ目

浮き以外の3系統にも、決まった手順があります。ひび割れ部については、漏水・周辺タイルの浮き・錆汁のいずれかが見られる場合は、改修方法を決める前に協議するという扱いです。欠損部は、目地割りを既存に合わせ、下地面を水洗いしてから直します。目地は「目地ひび割れ部改修工法」と「伸縮調整目地改修工法」に分かれ、後者は動くことを前提にした目地の話になります。幅の読み方とシーリング工法の一般論は既存の記事に譲り、ここではタイル固有の判断だけを扱います。
錆汁や漏水があれば決める前に協議
錆汁が出ているということは、内部の鉄筋や金物まで水が届いている可能性があります。表面を埋めて終わりにすると、原因が残ったままになりかねません。
仕様書がこの3つの症状を「協議」の対象にしているのは、見えている範囲だけでは工法を決めにくいからだと読めます。ひび割れの幅と場所の読み方は外壁のひび割れはどこまで大丈夫かにまとめました。
伸縮調整目地は3〜4mごとに入る動く目地
目地には、タイルを並べるための目地と、動きを逃がすための伸縮調整目地があります。仕様書は伸縮調整目地の位置を、垂直方向で「柱の両側又は開口端部上下及び中間3〜4m程度」、水平方向で「各階ごと打継ぎ目地の位置」と示しています。
動く目地の切れを固い材料で埋めてしまうと、動きを逃がす役目を果たせなくなります。打ち替えと増し打ちの選び方はコーキングは打ち替えと増し打ちどちらを選ぶ?にあります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
タイルの塗装で直せるもの・直せないもの
「タイル外壁に塗装は要るのか」という問いへの答えは、直したいものが何かで変わります。国の改修仕様書がタイル張り仕上げ外壁について並べている4系統の工法に、「塗る」という工法は入っていません。浮きも目地の切れも、塗って隠せる対象ではないということです。一方で、タイルの家にも塗装工事はあります。動くのは軒天・破風・雨樋・水切りといった付帯部で、そこは他の外壁の家と変わりません。見積書に「外壁塗装」とだけ書かれていたら、中身がどちらなのかを確かめてください。
塗る対象は付帯部、タイル面の可否は別
付帯部とは、外壁面の周りにあって塗装で守る部材のことです。どこを塗り、どこを塗らないのかを図か文章で示してもらってください。付帯部の内訳は付帯部の塗装とは?にまとめています。
タイル面そのものに透明な塗料をかけるかどうかは、また別の判断です。柄を残す塗装の考え方は外壁のクリア塗装にありますが、こちらは窯業系サイディングを前提にした記事なので、タイルの可否はメーカーと施工会社に確かめてください。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
北海道のタイルは吸水率と耐凍害性で見る

寒い地域でタイルを見るときの入口は、吸水率です。日本産業規格のJIS A 5209はタイルを吸水率で区分しています。全国タイル業協会の資料によれば、Ⅰ類が3.0%以下、Ⅱ類が10.0%以下、Ⅲ類が50.0%以下です。業界団体の認定制度では、「吸水率がⅠ類のものについては、十分な耐凍害性能があると判断し、データ提出を求めない」という扱いになっています。2008年のJIS改正で測定方法が自然吸水から強制吸水に変わり、磁器質・せっ器質・陶器質という呼び名からⅠ〜Ⅲ類に移りました。区分は材質の名前ではない、という点に注意してください。水を吸う材料が凍って壊れる仕組みそのものは凍害とは?にあります。
出典:一般社団法人全国タイル業協会/全国タイル工業組合「よくある質問(タイル基礎編)」/全国タイル工業組合「Q-CAT認定規格」
耐凍害性は「有無」を特記する項目
タイルなら全部が凍害に強い、というわけではありません。国の仕様書は、新築側でも改修側でも同じ書き方をしています。「JIS A 5209(セラミックタイル)に基づき、タイルの形状、寸法、耐凍害性の有無、耐滑り性等は、特記による」。有無を書き分ける項目である以上、すべての製品が備えている性能ではない、ということです。
今張ってあるタイルは、仕上表の品番からメーカーの製品データをたどると、吸水率の区分と耐凍害性の有無が分かります。品番が追えなければ、施工した会社に聞くのが早道です。張り替えで新しいタイルを選ぶときも同じです。メーカーの製品データには、寒冷地で使えるかどうかを示すマークが付いていることがあります。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
寒冷地のタイルの年数は見つからなかった
では北海道でタイル外壁は何年持つのか。この問いに答える公的なデータは、調べた範囲では見つかりませんでした。
北方建築総合研究所は、平成20〜22年度の共同研究で、鉄筋コンクリート造の外断熱にタイルを張った外壁を扱っています。「耐久性を検証する方法が確立されていない」ことを、当時の課題に挙げていました。通気層の有無や下地材の違いがタイルの付着強度に及ぼす影響も明らかになっていない、として、気中凍結水中融解試験で付着強度を測っています。これは鉄筋コンクリート造と外断熱の研究なので、木造の戸建てにそのまま当てはめられるものではありません。年数の答えが見つからない以上、点検の記録を残しておく価値が出てきます。
出典:北方建築総合研究所「鉄筋コンクリート建物におけるタイル貼り外断熱外壁の耐久性に関する研究」
タイル工事も気温5℃以下は原則施工しない

タイルの補修にも、塗装と同じ気温の条件が定められています。国の改修仕様書は外壁改修工事の共通事項として、「気温が5℃以下の場合は、施工を行わない」と定めています。やむを得ず施工する場合は、板覆いやシート掛け、ヒーターでの採暖を求める書き方です。タイル張りの節にも「施工中又は施工後の気温が5℃以下になると予想される場合は、原則として、施工を行わない」とあります。降雨、降雪、強風が予想される場合も施工しません。秋に浮きが見つかってから慌てて動くと、この線に引っかかりやすくなります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
自分の町の施工できる期間を先に見る
当サイトの市町村別 塗装カレンダーは、気象庁の平年値から道内28市町村について条件がそろいやすい月を整理した表です。判定に使ったのは国の仕様書が示す気温の水準で、条件がそろう期間は市町村で2か月違います。
この表は塗装を前提に作っていますが、判定に使った5℃という気温の線は、外壁改修工事の章がタイルにも定めている線と同じです。塗装の時期を扱った北海道で外壁塗装ができる時期はいつ?は「気温5℃以上」を条件に挙げていますが、こちらは塗料メーカーが示す施工条件です。国の仕様書は「5℃以下では行わない」と書いており、5℃ちょうどの扱いだけが違います。自分の町で何月まで動けるかを見てから、相談の時期を決めてください。
打診の費用は半分近くが仮設費という調査
タイルの点検にかかる費用は、タイルの単価よりも先に足場で動きます。国土技術政策総合研究所の資料は、全面を打診で診断するにはゴンドラなどの仮設足場が必要で、所有者の負担が大きくなると述べています。費用調査では、仮設費が費用の半分近くを占めていたと報告されています。足場を組むかどうか、その足場で何を一緒にやるかが、金額を動かす大きな要素になるということです。なお、義務のある特定建築物でも定期報告の報告率は平均70〜80%にとどまり、そのなかには「検査は実施していない」という報告も含まれる、と同じ資料は述べています。
出典:国土技術政策総合研究所「住宅・建築物の外壁調査・診断技術の取組み」
見積書で動くのは㎡・か所・本数の数量
見積書は、次の行に分けて見ると比べやすくなります。
- 仮設:足場やゴンドラの種類と面積
- 調査:打診の範囲と報告書の有無
- 浮き補修:か所数・アンカーピンの本数・注入口の数
- 張り替え:面積と、特注タイルになる場合の納期
- 付帯部:塗装や板金など、足場があるうちにやる工事
打診で印を付けた範囲と、見積書のか所数がつながっているかを確かめてください。「一式」でまとまっているときの読み方は外壁塗装の見積書はどこを見る?にまとめています。塗装の費用の目安は費用シミュレーターで立てられます。
工事を頼む前にタイル点検の記録をもらう

業者に最初に頼むのは、工事ではなく点検の記録です。どこを、どの方法で確かめ、浮きの範囲をどう印したのか。それが書面で出てくるかどうかで、そのあとの見積書を検算できるかが決まります。相見積もりを取るときも、同じ記録を各社に渡せば、数量の違いが比べられます。逆に記録が出てこない見積書は、何を根拠にその数量になったのかを追えません。工事の前に一度、紙の上で話を止める工程があると考えてください。点検だけを有償で頼めるかどうかも、はじめに聞いておくと話が早くなります。
どこをどうやって確かめたかを書いてもらう
点検の報告書に入れてほしいのは、次の項目です。
- 確かめた面(どの方角の壁を、どこまで)
- 方法(目視か、手の届く範囲の打診か、全面打診か)
- 範囲を示す図と、印を付けた位置
- 国の判定基準4項目のどれに当たるか
- 提案する工法の名前
手の届かない範囲を目視で済ませた面があるなら、その面がどこかも書いてもらってください。工法名まで書かれていれば、前に挙げた4系統の表と照らせます。
張り替え後は全面打診と引張試験で確かめる
直したあとの確認方法も、仕様書に書かれています。タイル張りはモルタルや接着剤が硬化したあと「全面にわたり打診を行う」とされています。引張接着試験は「100㎡ごと及びその端数につき1個以上、かつ、全体で3個以上」という決め方です。
ただし、これらは公共建築の工事の規定で、試験の合格基準もコンクリート下地を前提にしたものです。戸建てで求めるのは数値そのものではなく、直した範囲を打診で確かめて記録を出してもらうことのほうになります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
よくある質問
検索でよく見かける疑問のうち、年数と金額については公的な裏づけを確認できませんでした。「10年ごとにメンテナンス」という数字は業者の記事に多く出てきますが、国の10年は特定建築物の調査の周期です。タイルそのものの寿命を示した公的な資料も見つかっていません。
ここでは答えられる範囲を先に示し、数字を出せないものについては代わりに何を見ればよいかを書いています。判断の材料が増えれば、業者から返ってきた説明も比べやすくなります。
タイル外壁に手入れは本当に要らないのですか
タイル本体の塗り替えは要りません。ただし目地・シーリング・下地は傷むので、剥落・白華・ひび割れ・浮きの4項目を見る必要があります。
見た目に異常がなくても点検は要りますか
浮きは目で見ても分からないので、見た目に異常がなくても浮いていることはあります。戸建てに法律上の義務はありませんが、気になるなら打診での点検を頼んでください。鼻たれや足元のかけらのように目視で拾えるサインもあるので、雪解けのあとに一度見て記録しておくと変化が分かります。
アンカーピンと張り替えはどちらがよいですか
面積だけでは決まりません。国の仕様書は、欠けているタイルを欠損部として張り替えの対象にし、浮きにはピンと注入の工法と張り替えの両方を並べています。1か所の浮きが0.25㎡未満なら部分的なピンと注入が候補です。0.25㎡以上でも張り替えは選べますし、ピンと注入なら剥落を防ぐだけか水の侵入まで止めるかで、部分注入と全面注入に分かれます。ピンは剥落を防ぐ役割、全面注入は水の侵入を止める役割と目的が違うので、その点の説明を聞いてください。
補修したタイルはどのくらい持ちますか
年数の目安に公的な裏づけは見つかりませんでした。参考までに、北方建築総合研究所は鉄筋コンクリート造の外断熱の研究で、耐久性を検証する方法が当時は確立されていないとしています。水の入り口が残っていれば同じ症状が戻る、という見方のほうが実際的です。
冬に浮きが見つかったらどうすればよいですか
まず業者に相談し、落下の危険がある範囲に人が入らないようにする対策を先に取ってください。応急の措置と本格的な補修は別で、後者は国の仕様書が「気温が5℃以下になると予想される場合は原則として施工しない」としています。動ける時期はカレンダーで確かめられます。
乾式のタイルでも打診は要りますか
国の調査基準は乾式工法を対象から外しており、改修仕様書もモルタル張りが前提です。乾式の点検方法は国の資料に示されていないため、メーカーの施工要領と施工した会社に確認するのが確実です。
まとめ
外壁タイルは、塗り替えではなく目地と浮きを見る外壁でした。まず張り方を確かめ、剥落・白華・ひび割れ・浮きの4項目を記録します。
浮きは打診で範囲に印をもらい、1か所0.25㎡と「ピンで留め、全面注入で止水」の役割分担で工法を読みます。北海道ではそこに吸水率と気温5℃が加わります。
次の一歩は、家を回って写真を撮り、点検の記録を書面で求めることです。
記事への指摘や監修のご相談はお問い合わせから。工事の依頼や見積もりは受け付けていません。
板を張る外壁は窯業系サイディングの塗り替えで扱っています。
引用した仕様書と調査基準は公共建築物・特定建築物向けで、戸建ての義務を定めるものではありません。

