屋根と外壁は同時に塗るべき?足場から考える判断の順番

費用と相場

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月4日編集方針と検証の手順

外壁の見積もりを取ったら、「屋根も一緒にどうですか。足場が一度で済みますよ」と言われた。言われてみればそのとおりに思えるけれど、金額はその分だけ上がる。今やるべきなのか、判断がつかない。

この提案は、多くの場合もっともです。ただし「足場が一度で済む」という理由だけで決めると、かえって損をすることがあります。屋根と外壁は傷み方の速さが違い、屋根材によっては塗る工事そのものが向いていないこともあるからです。

この記事では、足場に関する法令と、木造住宅の劣化について国の研究機関がまとめた資料をもとに、同時にやる価値がどこから生まれるのか、どういうときに分けたほうがいいのかを整理します。金額の相場そのものは北海道の外壁塗装の費用相場で扱っているので、ここでは判断の順番に絞ります。

なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。掲載する金額はすべて参考値で、実際の見積もりは現地の条件によります。

  1. 結論:足場は「2回ぶんの費用」ではなく「2回ぶんの手間」
    1. この記事で扱わないこと
  2. 足場はなぜ省けないのか
    1. 幅が1メートル以上あれば本足場が原則
    2. 足場代は値切る対象ではない
    3. 組んだあとの点検も決められている
  3. 屋根と外壁は傷み方の速さが違う
  4. 同時にやると何が減るのか
    1. 北海道では「回数」の意味が重い
  5. 屋根に工事が要るかを先に見る
    1. 屋根材によって選択肢が変わる
    2. 塗り替えで水の抜け道をふさぐ失敗
  6. 同時にやらないほうがいい場合
    1. 「今しかない」と言われたら
  7. 同時にやるときの工程の組み方
    1. 足場を外す前に一緒に見る
  8. 北海道の屋根の形と足場の関係
    1. 雪を落とさない屋根
    2. 隣家との距離が近い面
  9. 足場を架けるついでにできること
    1. 見積書では分けて書いてもらう
  10. 屋根と外壁で使う材料は同じではない
    1. 見積もりの並べ方
  11. 足場が架かっているあいだの点検を頼む
  12. 屋根を触らずに数年延ばす選択
    1. その年に何を優先するか
  13. よくある質問
    1. 屋根も一緒にやると、どのくらい安くなりますか
    2. 屋根だけ先にやって、外壁は数年後でもいいですか
    3. 足場なしでできると言われました
    4. 足場代が「無料」の会社があります
    5. 瓦屋根も塗れますか
    6. 屋根が金属で、さびが出ています
    7. 太陽光パネルが載っています
    8. 同時にやると工期はどのくらい延びますか
    9. 近所への説明は1回で済みますか
    10. 屋根と外壁で塗料の耐用年数が違うと、次もずれませんか
    11. 足場を組んだまま何日も作業がない日があります
    12. 途中で屋根をやめることはできますか
  14. まとめ

結論:足場は「2回ぶんの費用」ではなく「2回ぶんの手間」

先に要点を示します。

足場の話は最後に来る
足場の話は最後に来る
  • 足場は組む・ばらす・運ぶで費用が決まります。工事を分ければ、この一式が2回発生します
  • ただし節約できるのは足場と、それに付随する準備の分だけです。塗料代や職人の手間が減るわけではありません
  • 屋根と外壁の傷みの進み方がずれている場合、無理に合わせると早すぎる工事になります
  • 屋根材によっては塗る工事が適さないものがあります。その場合は「同時に塗る」という選択肢自体がありません

つまり、判断の順番は①屋根に工事が要るか → ②その工事は塗装か → ③時期を合わせられるかです。足場の話はいちばん最後に来ます。順番を逆にすると、必要のない工事を足場代のために前倒しすることになります。

この記事で扱わないこと

足場はなぜ省けないのか

住宅を囲む本足場

「屋根だけなら足場なしでできませんか」と聞かれることがあります。結論から言うと、住宅の外まわりの工事で足場を省く前提は成り立ちにくくなっています。法令の側が厳しくなっているためです。

幅が1メートル以上あれば本足場が原則

労働安全衛生規則が改正され、令和6年4月1日から、幅が1メートル以上の箇所で足場を使うときは、原則として本足場を使うことが必要になりました(安衛則第561条の2)。

「幅が1メートル以上の箇所」とは

厚生労働省の資料は、足場を設ける床面において、その足場を使用する建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離が1メートル以上ある箇所と説明しています。なお、幅が1メートル未満の場合であっても、可能な限り本足場を使用するよう求められています。

本足場は柱(建地)を2本立てるタイプ、一側足場は1本のタイプです。2本立てるほうが作業床が広く安定します。その分、材料も手間も増えます。

例外もあります。厚生労働省の資料は、つり足場の場合や、撤去が困難な障害物があって建地を2本設置できないとき、建物の外面の形が複雑で1メートル未満ごとに隅の処理が必要なとき、屋根の上など足場を置く面に著しい傾斜や凹凸があるとき、本足場にすると建物と作業床の間隔が広がってかえって危険になるときを挙げています。

また、確保した幅が公道にかかる場合や、使用許可が得られない場合、その箇所が工事関係者の管理の範囲外である場合は「幅が1メートル以上の箇所」に含まれないとされています。隣地との距離が近い家では、面によって足場の種類が変わることがあるということです。

足場代は値切る対象ではない

もうひとつ押さえておきたい点があります。厚生労働省の同じ資料には、労働災害防止対策に要する経費について次の説明があります。

労働安全衛生法は元請負人および下請負人に労働災害防止対策を義務づけており、それに要する経費は建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるとされています。建設工事の請負契約は、この経費を含む金額で結ぶ必要があるという整理です。

なお、建設業法第19条の3が禁じているのは、注文者が取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額で契約させることです。見積書の1項目が安いというだけで違反になるわけではありません。

それでも、発注する側が知っておく意味はあります。足場は安全のための設備で、そこにかかる費用は本来削る前提のものではないということだからです。「足場代サービス」という表示を見かけたら、その分がどこに移されているのかを確認してください。

組んだあとの点検も決められている

足場は組んで終わりではありません。同じ改正で、令和5年10月1日から、事業者および注文者が足場の点検を行う際は、あらかじめ点検者を指名することが必要になりました(安衛則第567条、第568条、第655条)。

さらに、足場の組立て、一部解体、変更などの後の点検については、点検者の氏名を記録し、保存することが求められています。

厚生労働省の資料は、点検者として指名するのが適切な者の例に、足場の組立て等作業主任者で能力向上教育を受講している者、労働安全コンサルタント等の計画作成参画者に必要な資格を持つ者、仮設安全監理者資格取得講習を受けた者、建設業労働災害防止協会の足場点検実務研修を受けた者などを挙げています。

発注する側が条文を覚える必要はありません。ただ、「足場を組んだあと、誰が点検して記録に残すのか」を一度聞いておくと、その会社が段取りをどう組んでいるかが見えます。強風のあとに点検が入るかどうかも、あわせて確認できます。

出典:厚生労働省「足場からの墜落防止措置が強化されます」(改正労働安全衛生規則)

屋根と外壁は傷み方の速さが違う

北海道の住宅の金属屋根

「同じ家なのだから、同じくらい傷んでいるはず」と考えたくなりますが、条件が違います。

国土技術政策総合研究所の資料には、寒冷地に限らず冬期には夜間放射によって屋根の外表面温度が外気温より4〜5℃、外壁面で2〜3℃低くなるという記述があります。屋根のほうが冷えるということです。

加えて、多雪地域については「屋根と雪との接面では0℃、100%が長期間継続する」ため、屋根材からの浸水や透水のリスクが高まり、野地板などの腐朽につながるおそれがあると説明されています。

屋根 外壁
冬の表面温度 外気温より4〜5℃低い 外気温より2〜3℃低い
雪との接触 載ったまま数か月 寄せられた面のみ
紫外線 一日中当たる 面によって差が大きい
気づきやすさ 見えない 見える

この表からわかるのは、屋根のほうが条件は厳しく、しかも気づきにくいということです。外壁が気になった時点で屋根はもっと進んでいる、という可能性は十分にあります。

逆に、屋根を金属で葺き替えた直後に外壁が傷んできた、という家もあります。両者の時期がそろっているとは限らないという前提で、それぞれ見てもらうのが順当です。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章

同時にやると何が減るのか

足場材を運ぶ作業員

実際に減るものと、減らないものを分けます。

工事を分けた場合と同時にした場合の違い
工事を分けた場合と同時にした場合の違い
分けた場合 同時の場合
足場の組立て・解体 2回 1回
足場材の運搬 2回 1回
養生・近隣あいさつ 2回 1回
洗浄の段取り 2回 1回にまとめられる
塗料の量 変わらない 変わらない
塗る手間 変わらない 変わらない
下地の補修 変わらない 変わらない

まとめると、減るのは「準備と片づけ」の重複ぶんです。工事そのものの中身は減りません。

もうひとつ、金額に表れにくい効果があります。足場が架かっている期間、住まい手は同じ不便を1回だけ引き受ければ済みます。窓が開けにくい、洗濯物を外に干せない、人の出入りに気を使う。この負担が2回から1回になるのは、費用と同じくらい実感のある違いです。

北海道では「回数」の意味が重い

塗装ができる時期は限られます。気温が下がると施工条件を満たせなくなるためで、詳しくは北海道で外壁塗装ができる時期で扱っています。

つまり「来年やればいい」が、実質的に「1年後」ではなく「次のシーズンまで待つ」を意味します。本州のように秋や早春に融通を利かせる余地が小さいので、シーズン内に片づけられるかどうかが計画に影響します。

屋根に工事が要るかを先に見る

屋根を点検する職人

順番の話に戻ります。まず屋根です。

国土技術政策総合研究所の資料は、「外皮の劣化や損傷は居住者が普段目にする外壁面では気付きやすいが、屋根面や床下では気付かれずに放置され勝ちである」と指摘しています。外壁が気になって見積もりを取った段階では、屋根の状態を誰も見ていない、ということが起こりえます。

ですから最初にすべきは、屋根を見てもらうことです。そのうえで「工事が要る/まだ要らない」を分けます。点検をいつ、どういう考え方で行うかは外壁の劣化サインと点検の目安にまとめています。

屋根材によって選択肢が変わる

屋根に手を入れる必要があるとして、その方法は屋根材で変わります。

屋根材 主な選択肢 注意する点
金属(トタン・鋼板) 塗り替え、葺き替え、かぶせ さびの進み方で判断が変わる
化粧スレート 塗り替え、かぶせ、葺き替え 塗り替え時の水の抜け道
粘土瓦 基本は塗らない ずれ・割れの補修が中心
アスファルトシングル 製品により異なる メーカーの指示を確認

北海道の住宅では金属屋根が多く使われています。雪を滑らせたい、あるいは雪を載せたまま解かしたいという事情から、面がなめらかで軽い材料が選ばれてきたためです。金属屋根であれば塗り替えの対象になりますが、さびが進んで穴が開いている段階では、塗ってもふさぐことはできません。

塗り替えで水の抜け道をふさぐ失敗

化粧スレートの屋根には、注意しておきたい失敗例があります。国土技術政策総合研究所の資料は、不適切な改修の具体例として「化粧スレートの再塗装時に重ねの開口を塗料で塞ぎ、縦目地から入った雨水が排出されず雨漏りになった」ケースを挙げています。

屋根材は、水がまったく入らない前提ではなく、入った水が抜ける前提で組まれています。その抜け道を塗料でふさぐと、かえって雨漏りを招きます。屋根を塗る見積もりを見るときは、この処理をどうするのかを聞いてください。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章

同時にやらないほうがいい場合

提案されても分けたほうがよい状況があります。

  1. 屋根がまだ十分もつ … 数年先の工事を足場代のために前倒しする形になります
  2. 屋根は塗装ではなく葺き替えやかぶせが適している … 工事の種類が違い、時期も予算規模も変わります
  3. 屋根に雨漏りの疑いがある … 原因を確かめる調査が先で、塗ってふさぐ話ではありません
  4. 予算が足りず、どちらかを削ることになる … 下地の処理を削って両方やるくらいなら、片方を確実に仕上げるほうが長持ちします
  5. 屋根の上に太陽光パネルなどが載っている … 脱着の可否と費用を先に確認する必要があります

4番目は特に大事です。同時施工にして総額を抑えるために、洗浄や下地の処理を簡略化するのは本末転倒です。塗り替えの持ちを決めるのは、上に塗る材料より下の処理だからです。

「今しかない」と言われたら

足場を理由に急がせる言い方には気をつけてください。足場は必要になればまた架けられます。その分の費用はかかりますが、要らない工事をするよりは小さい負担です。

訪問してきた業者から屋根の不具合を指摘された場合の対応は訪問販売と点検商法の記事にまとめています。

同時にやるときの工程の組み方

屋根を塗装する作業

屋根と外壁をまとめる場合、進め方には順番があります。細かい判断は業者に任せる部分ですが、説明を聞いたときに筋が通っているかを確かめられる程度には知っておくと役に立ちます。

  1. 足場を組む … 全体を囲い、飛散防止のシートを張ります
  2. 洗浄 … 屋根と外壁をまとめて洗います。ここは一度で済ませられます
  3. 乾燥を待つ … 濡れた下地に塗ると密着しません
  4. 下地の補修 … 屋根の割れ、外壁のひび、目地の打ち替え
  5. 屋根を塗る … 上から先に仕上げるのが基本です
  6. 外壁を塗る … 屋根の作業で汚れる可能性を避けます
  7. 付帯部を塗る … とい、破風、軒天など
  8. 点検して足場を解体 … 解体前に一緒に確認します

ポイントは「上から下へ」です。屋根の作業で出た汚れやしぶきが外壁に落ちるため、仕上げの順番が逆になると手直しが増えます。

足場を外す前に一緒に見る

工程の最後で必ずやっておきたいのが、足場が架かっている状態での確認です。解体してしまうと、気になる箇所があっても手が届きません。

とはいえ、施主が足場に上がるのは避けてください。足場は工事関係者のための設備で、慣れていない人が上がる場所ではありません。代わりに、写真を撮ってきてもらって一緒に見る形にします。

北海道の屋根の形と足場の関係

無落雪屋根の北海道の住宅

足場のかけ方は屋根の形にも左右されます。北海道でよく見る形について、押さえておきたい点があります。

雪を落とさない屋根

雪を屋根の上にとどめる形式の住宅では、屋根の中央付近に排水の経路があります。この形の住宅で足場を組む場合、雪を処理する部分に手をかけるかどうかが論点になります。屋根の形式ごとの扱いは無落雪屋根の塗装で詳しく扱っています。

北方建築総合研究所などの資料では、この形式の屋根について冬を迎える前の掃除と点検、および何年かに一度の板金業者による点検の必要性が指摘されています。足場が架かる機会は、その点検をまとめて済ませる好機でもあります。

隣家との距離が近い面

市街地では、隣家との間が狭くて足場を組みにくい面が出てきます。先に触れたとおり、幅が1メートル未満の箇所や、管理の範囲外である箇所は「幅が1メートル以上の箇所」に含まれません。その面だけ足場の種類が変わることがあります。

この場合、隣地に足場をはみ出させる許可が要るのか、要るとして誰が話をするのかを、契約前に確認しておいてください。着工直前に判明すると日程が動きます。

出典:北海道立総合研究機構北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」

足場を架けるついでにできること

雨どいの点検と清掃

同時施工を考えるなら、屋根以外にも検討できるものがあります。高いところにあって、単独では足場代が見合わない工事が候補です。

  • とい … 掃除、金具の締め直し、部分的な交換
  • 破風・軒天 … 塗装、傷んだ部分の張り替え
  • 目地(コーキング) … 打ち替え。詳しくは打ち替えと増し打ちの記事
  • 換気フードや配管まわりの充填材 … 打ち直し
  • アンテナ … 撤去や位置の見直し

このうちといと目地は、外壁塗装と一緒に検討する価値が高いものです。といのつまりは壁を濡らす原因になり、目地の切れは水の入口になります。どちらも足場がないと手が届きません。

見積書では分けて書いてもらう

まとめて頼む場合ほど、内訳を分けてもらってください。

分けたい項目 理由
足場(架設・解体・運搬) 同時施工の効果を確かめられる
外壁の工事 片方だけにする判断ができる
屋根の工事 同上
付帯部(とい・破風・軒天など) 削るかどうかを選べる
目地の打ち替え 入っているかどうかが分かる

一式でまとめられていると、屋根をやめたときにいくら下がるのかが分かりません。比べるためにも分けてもらってください。見積書の読み方は見積書の記事で扱っています。

屋根と外壁で使う材料は同じではない

「まとめて塗るなら、同じ塗料で一気に」と考えたくなりますが、そうはなりません。屋根と外壁では、材料に求められる性質が違うからです。

先ほど見たとおり、屋根は一日中日射を受け、冬は雪を載せたまま数か月を過ごします。歩く場面もあります。外壁は面ごとに条件が分かれ、雨だれや雪の寄せ方の影響を受けます。

  • 屋根 … 日射と温度変化、水がたまらないこと、踏まれることに耐える必要があります
  • 外壁 … 汚れにくさ、目地や下地との相性、面ごとの条件差が問われます

そのため見積書では、屋根用と外壁用で別の製品名が書かれているのが普通です。同じ名前が並んでいたら、それでよいのかを確認してください。寒冷地で塗料を選ぶときの考え方は寒冷地の塗料の記事で扱っています。

見積もりの並べ方

複数社から取った見積もりを比べるときは、次の順で並べ直すと差が見えます。

並べる項目 見るところ
足場 面積の考え方、単価、解体・運搬が含まれるか
洗浄 屋根と外壁で分かれているか
下地の補修 数量が「一式」で片づけられていないか
屋根の塗装 製品名、回数、水の抜け道の処理
外壁の塗装 製品名、回数
目地・付帯部 含まれているか、別なのか

総額だけを見比べると、安い側が何を含んでいないのかが分かりません。項目をそろえてから比べてください。

足場が架かっているあいだの点検を頼む

同時施工のいちばん大きな価値は、金額よりも普段見られない場所を見てもらえることかもしれません。

足場が架かっている状態は、屋根、といの中、軒の裏、2階の窓まわり、換気フードの周辺に人の手が届く数少ない機会です。工事の対象外であっても、状態を写真に撮っておいてほしいと頼んでおくと、次の判断材料になります。

頼み方は簡単で、契約前に「足場があるあいだに、といの中と屋根まわりの写真を撮っておいてください」と伝えるだけです。対応できるかどうかを、契約前に確認しておいてください。

屋根を触らずに数年延ばす選択

住宅のとい金具の締め直し

屋根に不安はあるけれど、今年は予算が足りない。この場合、「やる」か「やらない」かの二択ではありません。間に置ける手当てがあります。

できること ねらい 足場の要否
といの掃除・締め直し あふれた水で壁を濡らさない 部分的に必要
浮いた屋根材の留め直し 風で飛ばさない 必要
すきまの充填材の打ち直し 水の入口をふさぐ 箇所による
写真での状態記録 翌年の判断材料にする あるとよい

ねらいは「水を入れない」と「飛ばさない」の2つです。仕上げをやり直すのは先に回しても、この2つを放置すると、待っているあいだに下地が傷みます。

外壁の工事で足場が架かる年に、この手当てだけまとめて頼んでおくのが現実的です。屋根の本工事は数年後、そのときにまた足場を架けるという組み方でもかまいません。要らない工事を前倒しするより、結果的に無駄が出ません。

その年に何を優先するか

予算が限られるときの優先順位を、水の入口という観点で並べると次のようになります。

  1. 水が入っているところをふさぐ … 目地の切れ、屋根材の割れ、といの不具合
  2. 水を集めてしまう状態を直す … といのつまり、勾配の狂い
  3. 下地を守る仕上げをやり直す … 外壁・屋根の塗装
  4. 見た目を整える … 色の変更、付帯部の塗り分け

この順で削っていけば、削った結果として家が傷むことは避けられます。逆に、色を変えたいという希望を先に置いて下地の処理を削ると、数年で同じ工事をやり直すことになります。

よくある質問

屋根も一緒にやると、どのくらい安くなりますか

減るのは足場と、その準備・片づけの重複ぶんです。塗料代や職人の手間は減りません。金額の幅は建物の形や面積で大きく変わるため、「何割引き」という言い方はできません。分けた見積もりと合わせた見積もりの両方を出してもらうのが確実です。

屋根だけ先にやって、外壁は数年後でもいいですか

かまいません。足場は2回になりますが、それだけの理由で不要な工事を前倒しする必要はありません。ただし北海道では施工できる時期が限られるので、どちらの年に何をやるかは早めに決めておくほうが動きやすくなります。

足場なしでできると言われました

面によっては、はしごや高所作業車で対応できる場合もあります。ただし幅1メートル以上の箇所では原則として本足場を使うことが求められているため、家全体を足場なしで仕上げる前提には無理があります。どの面をどう作業するのかを確認してください。

足場代が「無料」の会社があります

足場そのものにかかる費用が消えることはありません。ほかの項目に含まれているか、値引きの表現として使われているかのどちらかです。総額と内訳で比べてください。

瓦屋根も塗れますか

粘土瓦は基本的に塗る前提の材料ではありません。ずれや割れの補修、漆喰の詰め直しが中心になります。屋根材が何かを確認したうえで、必要な工事の種類から考えてください。

屋根が金属で、さびが出ています

さびの範囲と深さによります。表面のさびであれば下地処理をして塗り替える対象になりますが、穴が開いている、踏むとたわむ段階では、塗ってふさぐことはできません。かぶせや葺き替えの検討になります。

太陽光パネルが載っています

屋根の工事をする場合、パネルの脱着が必要になることがあります。脱着の費用と、その間の発電が止まることを先に確認してください。外壁だけであれば影響しないことが多くなります。

同時にやると工期はどのくらい延びますか

屋根の面積と工事の種類によります。塗り替え同士であれば、外壁単独より数日から1週間ほど長くなるのが一般的です。ただし雨や気温で中断が入るため、余裕を見た日程で考えてください。工事の進み方は工事の流れと工期の記事で扱っています。

近所への説明は1回で済みますか

済みます。足場が1回であれば、あいさつや騒音の説明もまとめられます。これは同時施工の実質的な利点のひとつです。

屋根と外壁で塗料の耐用年数が違うと、次もずれませんか

ずれます。ただしずれること自体は問題ではありません。次の工事のときに、また同じ判断をすればよいだけです。無理に寿命をそろえるために片方に合わない材料を選ぶほうが不利になります。

足場を組んだまま何日も作業がない日があります

雨や気温の条件で作業できない日は出ます。塗料が乾かない状態で次の工程に進むほうが問題です。ただし、連絡がないまま何日も空くのは別の話なので、進み具合を共有してもらってください。

途中で屋根をやめることはできますか

契約後の変更になるため、材料の手配状況によっては費用が発生します。迷っている段階であれば、契約前に「屋根あり」「屋根なし」の両方の見積もりをもらっておくのが確実です。

まとめ

屋根と外壁を同時にやると、足場と、その準備・片づけの重複ぶんが減ります。塗料代や手間が減るわけではありません。金額以上に効くのは、住まい手の不便が1回で済むことと、近隣への説明がまとまることです。

ただし判断の順番を間違えないでください。①屋根に工事が要るか、②それは塗装なのか、③時期を合わせられるか。足場の話はこの後に来ます。順番を逆にすると、足場代を理由に必要のない工事を前倒しすることになります。

足場そのものについては、幅1メートル以上の箇所では原則として本足場という規定が令和6年4月1日から適用されています。安全に必要な経費は「通常必要と認められる原価」に含まれるとされており、大きく削られた足場代は確認する価値があります。

屋根を塗る場合は、水の抜け道をふさがない処理をどうするのかを聞いてください。国の資料が実際の失敗例として挙げている内容です。

まずは屋根を見てもらい、工事が要るのか、要るとして塗装なのかを確かめるところから始めてください。そのうえで足場の話をすれば、判断を誤りません。

足場を共有してまとめられる付帯部については付帯部の塗装で扱っています。

屋根の側の判断材料は屋根は塗れる材質か、足場を共有する意味は足場代の中身で扱っています。

足場を架ける機会に冬前の点検までまとめる考え方は、屋根の雪処理にまとめています。

掲載している費用の増減は、工事の内訳の考え方を説明するための参考値であり、特定の金額を保証するものではありません。労働安全衛生規則の規定は事業者に課せられるもので、発注者に直接の義務を課すものではありません。実際の足場の仕様・工法の選定は、現地を確認した施工業者の判断によります。

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