カーポートの屋根に雪が積もるたびに、どこまで載せておいてよいのか迷います。柱のラベルに「20cm」「100cm」と書いてあっても、湿った重い雪にその数字をそのまま当てはめてよいのかは分かりません。
ここでは、耐積雪の表示の前提と、雪質・雨・地域で目安がどう変わるかを先に確かめます。そのうえで、今ある雪をいつどう下ろすか、新しく建てるなら何cmを選ぶかを整理しました。
もとにしたのはメーカー3社の公開情報と、気象庁・北海道庁・国土交通省などの資料です。数字は参考値で、自宅の判断は柱のラベルと施工店の説明を優先してください。当サイトは施工を行っていません。
この記事で扱わないこと
この記事は、カーポートに載る雪と、カーポートに落ちてくる雪への備えに絞っています。次の話題は、それぞれの記事で扱っています。
- 屋根に雪止めを付けるかどうかは、屋根の雪止めは北海道でも必要かで扱っています。
- 家の屋根に上がる雪下ろしと、業者に頼むときの考え方は、屋根の雪処理にまとめています。
- 火災保険の雪災で何が補償されうるかは、外壁塗装に火災保険は使えるかで説明しています。
- 固定資産税がかかる建物の3つの要件は、風除室(玄関フード)の後付けで扱っています。
- 雪による外壁の傷みと雪の置き場は、雪から外壁を守るにはにまとめています。
- 物置やカーポートを自分で塗るときの考え方は、外壁塗装のDIYはどこまで可能かで触れています。
- カーポートの耐積雪表示は雪何cmまでの意味か
- 耐積雪のcm表示は新雪が前提という落とし穴
- 雨・みぞれ・氷でカーポートの雪はさらに重くなる
- 北海道のカーポートに載る雪は地域で大きく違う
- 法令が定める垂直積雪量と耐積雪表示の関係
- カーポートが雪で倒壊した原因と前兆のサイン
- 落雪がカーポートに加わる場所と隣へ落ちる雪
- すでにあるカーポートの雪下ろしはいつ行うか
- 屋根に乗らないカーポート雪下ろしの安全な手順
- 新しく建てるカーポートは耐積雪何cmを選ぶか
- 冬が来る前に行うカーポート点検とサポート柱
- カーポートの確認申請と保険はどこに確かめるか
- カーポートの雪対策についてよくある質問と答え
- まとめ:カーポートの雪は区分・雪質・地域で備える
カーポートの耐積雪表示は雪何cmまでの意味か

カーポートの「耐積雪20cm」は、屋根1㎡あたりに載せられる新雪の重さを、雪の高さに置き換えて示した目安です。YKK APは、一般的なカーポートは20cmの積雪まで耐えられる設計だと説明しています。LIXILの区分では、耐積雪20cmは600N/㎡(約61.2kg/㎡)にあたり、積雪対応の製品は200cm相当まで段階があります。自宅のカーポートがどの区分かは、柱に貼られた「雪おろし注意シール」で確かめます。表示の性能は、メーカーが指定した基礎の大きさなどのとおりに施工した場合に限られる点も、覚えておきたいところです。
一般的なカーポートは耐積雪20cm相当が目安
YKK APは「一般的なカーポートで20cmの積雪まで耐えられる設計」だと書いています。同じページには、雪の多い地域向けに300cm相当まで耐える製品もあると説明があります。
LIXILは、耐積雪荷重を「1平方メートル当たりにかかる新雪での積雪荷重」で計算していると説明しています。20cmという高さは、この重さを新雪の深さに換算した値です。
また、この性能はメーカーが指定する「基礎の大きさ等の施工指示どおりに施工した場合に限ります」とも書かれています。表示の数字は、施工が正しいことを前提にした値です。
耐積雪の区分は600〜6000N/㎡の6段階
LIXILの公開表では、耐積雪荷重は次の6つの区分で示されています。数字が大きいほど、屋根に載せられる雪の重さが増えます。
- 600N/㎡(約61.2kg/㎡):新雪20cm相当
- 900N/㎡(約91.8kg/㎡):新雪30cm相当
- 1500N/㎡(約153.0kg/㎡):新雪50cm相当
- 3000N/㎡(約305.8kg/㎡):新雪100cm相当
- 4500N/㎡(約459.2kg/㎡):新雪150cm相当
- 6000N/㎡(約612.2kg/㎡):新雪200cm相当
区分はメーカーや製品で異なるので、この表は考え方をつかむための例です。自宅の製品の値は、次のラベルや取扱説明書で確かめます。
柱の「雪おろし注意シール」で自宅の区分を知る
LIXILは、雪おろしの目安は「柱に貼られている『雪おろし注意シール』でご確認ください」と案内しています。取扱説明書が見当たらなくても、柱のシールに目安が書かれている場合があります。
シールが剥がれている、文字が読めない、メーカーが分からないといった場合は、設置した施工店に問い合わせると、製品名から区分を確かめられる場合があります。冬が来る前に区分を知っておくと、積もった日に慌てずに済みます。
出典:LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」/LIXIL「カーポートやテラスにおける降雪時の注意事項」/YKK AP「カーポートに必要な耐風圧強度・耐積雪性能」
耐積雪のcm表示は新雪が前提という落とし穴
カタログやラベルの「cm」は、比重0.3の新雪で換算した値です。三協アルミは、しまった雪(締雪)を比重0.5、ざらめ状の雪(粗目雪)を比重0.7として示しており、同じ高さでも重さが変わります。LIXILの表では、耐積雪20cmの製品を安心して使える積雪の目安は、新雪20cm・締雪12cm・粗目雪8cmです。比重0.3と0.7を比べると、同じ高さで重さは約2.3倍になります。湿った雪の日は、ラベルの数字より低い高さで下ろす必要があるということです。雪の種類の名前は、日本雪氷学会の分類名称によると注記されています。

雪質で目安は20cm・12cm・8cmに下がる
三協アルミは、新雪を「雪比重 : 0.3」「1cm当たり3kgf/㎡」と示しています。締雪は1cmあたり5kgf/㎡、粗目雪は7kgf/㎡です。
同じ重さに耐える屋根でも、載っている雪が重ければ、耐えられる高さは下がります。LIXILの表を区分ごとに並べると次のとおりです。
| 耐積雪荷重 | 新雪 | 締雪 | 粗目雪 |
|---|---|---|---|
| 600N/㎡ | 20cm | 12cm | 8cm |
| 900N/㎡ | 30cm | 18cm | 12cm |
| 1500N/㎡ | 50cm | 30cm | 21cm |
| 3000N/㎡ | 100cm | 60cm | 42cm |
| 4500N/㎡ | 150cm | 90cm | 64cm |
| 6000N/㎡ | 200cm | 120cm | 85cm |
降ったばかりの軽い雪なのか、何日かたって締まった雪なのかで、読む列が変わります。見分けがつかない日は、重いほうの列で考えると目安を超えにくくなります。
30cmの雪で1.2〜2.8tという重さの試算
三協アルミは、奥行約5m・間口約2.7mのカーポートに30cmの雪が積もった場合の重さを試算しています。新雪なら約1.2t、締雪なら約2.0t、粗目雪なら約2.8tです。
見た目は同じ30cmでも、雪質によって屋根にかかる重さはこれだけ違います。三協アルミは「雪質を確認した上で目安の積雪量を超えないよう雪おろしを行ってください」と案内しています。
出典:三協アルミ「カーポート選びのポイント Point.3 積雪に備える」/LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」
雨・みぞれ・氷でカーポートの雪はさらに重くなる
新雪でも、雨が降ったり解け始めたりして水を含むと、屋根にかかる重さは増えます。LIXILは、水の比率が上がると積雪量の目安が変わると説明し、YKK APは雨やみぞれの後は目安より早く下ろすよう求めています。LIXILは、屋根に残した雪は氷状になって重くなると注意しています。北海道庁も、大雪の後の雨で積雪が一層重くなる場合を、気象台が注意を呼びかける条件に挙げています。雨の予報が出たら、目安に届く前に下ろす判断をしておくと安心です。
雨で水の比率が上がると目安より早く下ろす
LIXILは「新雪であっても溶け出したり雨が降ったりして水の比率が上がると、同様に大きな荷重となり、積雪量の値は変化します」と説明しています。
YKK APも、雨やみぞれで雪の比重が大きくなるため、同社が示す「雪おろしの目安」よりも早く下ろすよう書いています。雨の前に下ろしておくほうが、水を含んだ重い雪を下ろすより作業も楽です。
屋根に残った雪が氷になると一段と重くなる
雪を下ろすとき、少し残しておけば大丈夫だと考えがちです。LIXILは「雪をできるだけ残さないようにしてください。残った雪が氷状になりたいへん重くなります」と注意しています。
降り続く日については「複数回の雪おろしをお願いします」とも書かれています。一度下ろして終わりにせず、その後も積もり方を見て、目安に届く前にまた下ろします。
北海道庁が注意喚起する「大雪の後の雨」
北海道庁は、気象台が注意を呼びかける目安として、大雪警報相当の降雪が見込まれ、かつ「大雪後の降雨により積雪の重さが一層増す場合」などを挙げています。
そのときの呼びかけの例も載っています。「カーポートなどの簡易な建築物や老朽化している建築物などは倒壊のおそれがあるため、近寄らないよう注意してください」という文です。気象情報でこの呼びかけを見たら、無理に下ろしに行かず、近づかないことが先です。
出典:LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」/YKK AP「カーポートが積雪で倒壊し、下に停めていた車にキズがついた」/北海道「積雪による建築物の倒壊の防止等について」
北海道のカーポートに載る雪は地域で大きく違う

北海道といっても、積もる雪の深さは地点によって大きく違います。気象庁の平年値(1991〜2020年)で年の最深積雪を比べると、室蘭26cmから倶知安183cmまで幅があります。札幌は97cm、旭川は89cm、函館は45cmです。1日に降る雪の深さの最大も、平年値で多くの地点が20cmを超えています。耐積雪20cmの製品は、平年並みの冬でも1日の雪で目安に届きうるということです。ただし、これは地上で観測した値で、カーポートの屋根の上の雪とは同じではありません。数字は地域の傾向をつかむために使います。
最深積雪の平年値は26cmから183cmまで
気象庁の観測地点のうち10地点の平年値を並べました。最深積雪50cm以上・100cm以上の日数は、その深さの雪が地上に残っている日の平均です。
| 観測地点 | 最深積雪の平年値 | 50cm以上の日数 | 100cm以上の日数 | 1日の降雪の深さの最大 |
|---|---|---|---|---|
| 倶知安 | 183cm | 117.7日 | 81.6日 | 39cm |
| 岩見沢 | 120cm | 81.9日 | 26.5日 | 38cm |
| 札幌 | 97cm | 65.7日 | 5.7日 | 34cm |
| 旭川 | 89cm | 69.9日 | 4.9日 | 30cm |
| 稚内 | 72cm | 35.4日 | 0.6日 | 31cm |
| 帯広 | 71cm | 26.2日 | 0.1日 | 38cm |
| 網走 | 63cm | 20.8日 | 0.2日 | 26cm |
| 函館 | 45cm | 4.3日 | 0.0日 | 24cm |
| 釧路 | 34cm | 1.0日 | 0.0日 | 23cm |
| 室蘭 | 26cm | 0.0日 | 0.0日 | 17cm |
札幌では、地上の雪が50cm以上ある日が平年で年に65.7日あります。一方で、釧路や室蘭では50cm以上の日はほとんどありません。同じ道内でも、備える深さの桁が変わります。
平年値は地上の値でカーポートの屋根とは違う
表の数字は、地上の観測点で測った雪の深さを30年分平均した値です。その年の最大ではなく平均なので、平年より雪の多い年は、これを上回ることがあります。
カーポートの屋根の雪は、風で吹きだまったり、家の屋根から雪が落ちてきたりして、地上より深くなることがあります。雨で重さも変わります。表は「自分の地域ではどのくらい積もるのか」をつかむ目安として使い、区分を決める根拠には、次の章の垂直積雪量を合わせて見ます。
法令が定める垂直積雪量と耐積雪表示の関係
建築基準法施行令第86条は、建物の積雪荷重を「積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×垂直積雪量」で計算すると定めています。垂直積雪量は、国の基準にもとづいて特定行政庁が地域ごとに定める値で、北海道庁の一覧では道内の市町村で60cmから250cmまで4倍以上の幅があります。「北海道なら一律で何cm」とは言えず、設置する場所の値から考える必要があるということです。ただ、市販のカーポートの表示がこの計算と同じ物差しかどうかは、製品の構造で変わります。区分を決めるときは、メーカーや施工店に確かめます。
建築基準法施行令第86条の積雪荷重の決め方
施行令第86条は、積雪荷重を「積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算しなければならない」と定めています。
単位荷重は「積雪量一センチメートルごとに一平方メートルにつき二十ニュートン以上」が原則です。ただし、特定行政庁は多雪区域を指定して、別の値を定めることができます。
同じ条文の第5項は、屋根の上で雪が不均等に積もるおそれがある場合は、その影響を考えて計算するよう求めています。落雪や吹きだまりで一部だけ深く積もる状況は、法令でも考慮の対象です。
道内市町村の垂直積雪量は60〜250cm
北海道庁は、施行令第86条第3項にもとづく道内市町村の垂直積雪量を公表しています。いちばん大きい値といちばん小さい値の町と、主な市町の値は次のとおりです。
| 市町村 | 垂直積雪量 |
|---|---|
| 幌加内町 | 250cm |
| 倶知安町 | 230cm |
| 小樽市 | 150cm |
| 札幌市 | 140cm(南区の一部は190cm) |
| 江別市 | 140cm |
| 旭川市 | 130cm(江丹別の一部は230cm) |
| 帯広市・稚内市 | 130cm |
| 岩見沢市 | 130cm(旧栗沢町の区域)・160cm(それ以外) |
| 北見市・網走市 | 100cm |
| 函館市・釧路市・苫小牧市・室蘭市 | 70cm(釧路市の旧音別町の区域は90cm・旧阿寒町の区域は100cm) |
| 新ひだか町・浦河町・えりも町など日高地方の町 | 60cm |
同じ市町村のなかでも値が分かれる場合があります。北海道庁は「各市町村の詳細な地域(旧区域)については、各市町村窓口へお問い合わせください」としています。
多雪区域の単位荷重で試算するとどの区分か
札幌市の確認申請の手引きでは、多雪区域の単位荷重を「30N/㎡・㎝ 以上」、垂直積雪量を1.4m(南区の一部を除く)としています。この2つを掛けると、140cm×30N/㎡・cm=4200N/㎡です。
メーカーの区分に当てはめると、4200N/㎡は3000N/㎡(新雪100cm相当)を超え、4500N/㎡(新雪150cm相当)の区分に入ります。ただし、これは考え方を示す試算です。
実際の計算には、屋根の形による係数や、雪下ろしを前提に垂直積雪量を減らせる規定(第86条第6項)もかかわります。他の市町村の単位荷重は特定行政庁ごとに定められているため、施工店と設置先の建築指導課で確かめてください。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」/北海道「垂直積雪量」/札幌市「札幌市建築確認申請の手引き」積雪荷重
カーポートが雪で倒壊した原因と前兆のサイン

カーポートの倒壊は、載っていた雪の重さが製品の耐えられる重さを超えたときに起きています。国土交通省の報告書は、平成26年2月の大雪で被害の実態を調べたカーポート13件のうち6件で、法が定める積雪荷重に見合わない製品が使われていたとしています。2件は、隣の建物の屋根などからの落雪でした。メーカーの公開事例でも、雪が20cm以上積もってきしむ音がしていたのに下ろさず、夜の雪で倒壊しています。北海道でも、雪の重みが原因と考えられる建物の倒壊は毎年起きています。
国交省報告書が示す「荷重に見合わない製品」
国土交通省の建築物雪害対策ワーキンググループの報告書は、平成26年2月に関東甲信や東北を襲った大雪の被害を分析しています。カーポートについては、メーカーへの問い合わせが「軽重含めて2,700件以上寄せられており」と書かれています。
被害の原因は、第一に製品が許容する積雪荷重を大きく超える雪が載ったこととされています。そのうえで、実態を調べた13件のうち6件は「法が定める積雪荷重に見合わない製品が使用されていた」と分析されています。2件は「隣接する建築物の屋根等からの落雪により被害が発生した」ものでした。
報告書は、設置する場所の垂直積雪量・単位荷重に見合う商品が供給されるよう周知すべきだと提言しています。これは北海道の統計ではありませんが、区分の選び方と置き場所に気をつけるという教訓は、道内でもそのまま使えます。
きしむ音は前兆、道内でも毎年倒壊が起きている
YKK APは、実際にあった事故の例として、次のような事例を公開しています。「カーポートの屋根に雪が20cm以上積もっており、ミシミシときしむ音がしていたが、雪おろしをしなかった」。その夜にさらに雪が積もり、屋根が倒壊して下の車にキズがついたというものです。
北海道庁は「道内では、毎年、積雪期間において雪の重みが原因と考えられる建築物の倒壊事故が発生しています」としています。そのうえで、カーポートを名指しして、日頃からの点検・補修に努めるよう求めています。きしむ音やたわみに気づいたら、下に入らず、車の出し入れも控えて施工店に相談してください。
出典:国土交通省「建築物の雪害対策について 報告書」/YKK AP「カーポートが積雪で倒壊し、下に停めていた車にキズがついた」/北海道「積雪による建築物の倒壊の防止等について」
落雪がカーポートに加わる場所と隣へ落ちる雪

カーポートに載る雪は、空から降った分だけではありません。母屋や隣の家の屋根から落ちてくる雪が、一度に加わることがあります。国土交通省の報告書でも、調べた13件のうち2件は隣の建物からの落雪が原因でした。施行令第86条第5項も、屋根に雪が不均等に積もる場合の考慮を求めています。逆に、カーポートの屋根から隣の敷地の車や塀、通路へ雪が落ちる置き方は、所有者の責任が問われるおそれがあります。置き場所は、雪を受ける側と落とす側の両方から見ておきます。
母屋や隣家の屋根から落ちる雪が加わる
家の軒先の真下にカーポートがあると、屋根から滑り落ちた雪がまとめて載ります。降った雪がラベルの目安より少なくても、落雪の分で一気に重くなることがあります。
北方建築総合研究所ほかの資料「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」にも、この点に触れた記述があります。雪庇(せっぴ)ができる方位に駐車場や玄関アプローチがある場合、カーポートや小屋根を設けて落下による事故を防ぐという考え方です。この資料の内容は屋根の雪処理の記事で詳しく紹介しています。
裏を返せば、そこに置くカーポートは落ちてくる雪を受け止める前提で選ぶ必要があります。家の屋根側で落雪を分散させる方法は、屋根の雪止めの記事で確かめてください。
カーポートの屋根から隣地へ落ちる雪に注意
民法第218条は、雨水を直接隣の土地に注ぐ構造の屋根などを設けてはならないと定めています。条文が扱うのは雨水で、雪にそのまま当てはまるとは言い切れません。
一方で、民法第717条は、土地の工作物の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたときの、占有者や所有者の責任を定めています。カーポートから落ちた雪で隣の車や塀を傷めた場合、この枠組みで責任が問われることがあります。
設置するときは、屋根が傾いている向きと、敷地の境界までの距離を確かめます。雪が隣地側へ落ちる向きになっていないかは、見積もりの段階で施工店に聞いておくと安心です。
出典:国土交通省「建築物の雪害対策について 報告書」/e-Gov法令検索「建築基準法施行令」/北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」/e-Gov法令検索「民法」
すでにあるカーポートの雪下ろしはいつ行うか

今あるカーポートの雪下ろしは、「ラベルの区分×その日の雪質」で目安を決め、目安に届く前に行います。耐積雪20cmの製品なら、新雪で20cm、締雪で12cm、粗目雪で8cmが目安です。雪が降り続く日は1回で済ませようとせず、何回かに分けて下ろします。雨やみぞれの後は、ラベルの目安より早く動きます。反対に、屋根がきしむ・たわむといった様子がすでに出ているなら、下ろしに行くより近寄らないことを優先します。下ろした雪の置き場は、雪から外壁を守るにはの記事で扱っています。
ラベルの区分と雪質でその日の目安を決める
朝、カーポートの雪を見たら、まず柱のラベルで区分を確かめます。次に、その雪が降ったばかりの軽い雪か、何日かたって締まった雪か、解けかけてざらついた雪かを見ます。
区分と雪質が分かれば、「耐積雪のcm表示は新雪が前提」の章の表で、区分の行と雪質の列を読むだけで目安が出ます。たとえば耐積雪20cmの製品に、締まった雪が10cm積もっていれば、目安の12cmまでは余裕がほとんどありません。
目安に達する前に下ろし、降り続くなら複数回
LIXILは「設定されている積雪に達する前に、早めの雪下ろしを行ってください」としています。目安ちょうどまで待つのではなく、届く前に下ろすのが前提です。
夜のあいだも雪が続く予報なら、寝る前に一度下ろしておくと、朝までに目安を超えるのを防ぎやすくなります。YKK APの事故事例も、夜の雪で倒壊したものでした。
すでに屋根がきしむ音を立てている、屋根材がたわんで見えるといった場合は、下に入って作業しないでください。北海道庁が紹介する気象台の呼びかけと同じく、まず近寄らないことです。そのうえで、施工店かメーカーに連絡します。
出典:LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」/YKK AP「カーポートが積雪で倒壊し、下に停めていた車にキズがついた」
屋根に乗らないカーポート雪下ろしの安全な手順

カーポートの雪下ろしは、屋根に乗らず、地上や安定した脚立から届く範囲で行うのが前提です。メーカーの注意事項は、屋根に乗らない、はしごを掛けない、複数人で行う、の3点でほぼ共通しています。脚立は安定した場所に置き、プラスチック製の道具で静かに下ろし、雪をできるだけ残さないことも書かれています。北海道の雪の事故は、屋根からの転落とはしごからの転落が半分以上を占めています。カーポートは家の屋根より低いものの、足場の悪い冬の作業であることに変わりはありません。手順と、やってはいけないことを確かめておきます。

複数人で、安定した足場から届く範囲を下ろす
LIXILは「屋根の上には乗らないでください。落ちてけがをするおそれがあります」と書き、作業は「家族や近所の方など複数人で」行うよう求めています。
YKK APも、屋根にはしごを掛けたり、乗ったり、物を載せたりしないよう注意しています。脚立を使う場合は「安定した場所に設置してから」作業するよう書かれています。
北海道庁のまとめでは、令和6年11月から令和7年3月までの雪による死傷者は244人でした。原因は屋根からの転落が88人(36.1%)、はしごからの転落が50人(20.5%)です。カーポートに限った数字ではありませんが、高い所での作業の危険は同じです。屋根の雪下ろし全般の注意は、屋根の雪処理の記事にまとめています。
プラスチック製の道具で静かに、雪を残さない
LIXILは、金属製のスコップを使うと「屋根材が割れたり、キズ付いたりする原因になります」とし、プラスチック製のスコップなどで静かに下ろすよう案内しています。
地上から屋根まで届く、柄の長い「雪おろし棒」などの道具があると、屋根に上がらずに済みます。YKK APは、雪庇や巻き垂れができた場合は、早めに取り除くよう書いています。
下ろすときは、雪をできるだけ残しません。雨・みぞれ・氷の章で見たとおり、LIXILは残った雪が氷状になって重くなると注意しています。
水や金属スコップは使わず融雪剤は説明書で確かめる
LIXILが注意事項で避けるよう求めているのは、水をかけることと金属製スコップを使うことです。融雪剤を使ってよいかは、製品の取扱説明書で確かめます。
- 水をかける:LIXILは「絶対に水をかけないでください。雪が氷状になり、さらに重くなります」と注意している
- 金属製のスコップ:屋根材が割れたり傷ついたりする原因になる
- 屋根に乗る・はしごを掛ける:転落のおそれがある
- 一人での作業:LIXILは複数人での作業を求めている
- 融雪剤:使ってよいかは、製品の取扱説明書で確かめる
出典:LIXIL「カーポートやテラスにおける降雪時の注意事項」/LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」/YKK AP「カーポートが積雪で倒壊し、下に停めていた車にキズがついた」/北海道「雪による被害」
新しく建てるカーポートは耐積雪何cmを選ぶか
これから建てるカーポートの区分は、設置する市町村の垂直積雪量を起点に、施工店から「この場所の垂直積雪量と単位荷重に見合う製品か」の説明を受けて決めます。国土交通省の報告書も、設置する場所の値に見合う商品が供給されるよう提言しています。柱の形は、YKK APによると、4本以上の柱で屋根の両端を支える両側支持のほうが片側支持より強度が高くなります。家の屋根から雪が落ちる位置も、配置を決める材料です。表示の性能は指定どおりの基礎で施工した場合に限られるため、基礎の大きさも見積もりで確かめます。
設置先の市町村の垂直積雪量から区分を引く
区分の目安は、次の順で確かめると施工店の説明と照らし合わせやすくなります。
まず、北海道庁の一覧で、設置する市町村の垂直積雪量を引きます。値は「法令が定める垂直積雪量」の章の表のとおり、60cmの地域と250cmの地域があります。同じ市町村でも地区で値が分かれることがあるので、住所の地区まで確かめます。
次に、施工店に「この場所の垂直積雪量と単位荷重に見合う区分か」を聞きます。「北海道だから150cm」という説明だけで決めず、その地域の値と製品の区分がどう対応するのかを言葉で説明してもらいます。
両側支持は片側支持より強度が高いとされる
YKK APは「一般的に、両側支持(4本以上の柱で屋根の両端を支えるタイプ)の方が、片側支持タイプよりも強度が高くなります」と説明しています。雪や風に強いモデルは両側支持を標準にしていることが多いとも書かれています。
片側だけに柱があるタイプは、屋根の片方が支えのない状態になります。雪の多い地域で片側支持を選ぶなら、その製品の耐積雪の区分と、冬のあいだに使う補助の柱があるかを確かめます。母屋の屋根から雪が落ちてくる位置に置く場合は、その分の雪も見込んで考えます。
見積もりの前に施工店へ確かめる質問リスト
見積もりを頼むときは、次の点を聞いておくと、あとで困りにくくなります。
- 区分:この場所の垂直積雪量と単位荷重に見合う区分か
- 表示の前提:ラベルの「cm」は新雪の値か、雪質別の目安表はあるか
- 基礎:メーカーが指定する基礎の大きさどおりに施工するか
- 補助の柱:片流れの場合、サポート柱の扱いと冬の取り付け方
- 落雪:家の屋根からの落雪がかからない配置か、隣地へ雪が落ちないか
- 手続き:確認申請が必要か、手続きは誰が行うか
出典:北海道「垂直積雪量」/国土交通省「建築物の雪害対策について 報告書」/YKK AP「カーポートに必要な耐風圧強度・耐積雪性能」/LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」
冬が来る前に行うカーポート点検とサポート柱

冬の準備で最初に行うのは、片流れのカーポートにサポート柱が付属しているなら取り付けることです。LIXILは、補助柱を設置している場合は必ず取り付けるよう求めています。建築物の所有者には、建物を常に適法な状態に保つよう努める責務があると建築基準法第8条第1項は定めています。北海道庁もカーポートを名指しして、日頃からの点検・補修を求めています。YKK APは、カーポートにも耐用年数があり、部材が劣化すると本来の強度が保てなくなると説明しています。今あるカーポートは区分の確認と道具の用意から、これから建てるカーポートは設置先の垂直積雪量の確認から始めます。
片流れのサポート柱は冬前に必ず取り付ける
LIXILは「片流れタイプのカーポートで『補助柱(サポート柱)』を設置されている場合は、必ず取り付けてください」と案内しています。夏のあいだに外していたなら、雪が積もる前に戻しておきます。
付属品の取り付け方が分からない場合は、取扱説明書を見るか、設置した施工店に問い合わせます。柱のぐらつきや部材の変形がないかも、同じときに見ておくと、傷みに早く気づけます。
既設と新設で今シーズンにやることを表で整理
今あるカーポートと、これから建てるカーポートでは、冬までにやることが違います。
| 区分 | 冬までにやること |
|---|---|
| すでにある | 柱のラベルで区分を確かめ、雪質別の目安を家族で共有する |
| すでにある | 地上から届く雪下ろし用の道具と、安定した足場を用意する |
| すでにある | サポート柱が付属していれば取り付け、ぐらつきや変形を見る |
| すでにある | 家の屋根からの落雪がかかる位置か、隣地へ雪が落ちないかを見る |
| これから建てる | 北海道庁の一覧で設置先の垂直積雪量を引く |
| これから建てる | 施工店に区分・基礎・配置・確認申請を質問する |
| どちらも | 火災保険の雪災と、自動車保険の車両保険の範囲を確かめる |
出典:LIXIL「カーポートやテラスにおける降雪時の注意事項」/北海道「積雪による建築物の倒壊の防止等について」/YKK AP「カーポートに必要な耐風圧強度・耐積雪性能」
カーポートの確認申請と保険はどこに確かめるか

カーポートは屋根と柱を持つ建築基準法上の「建築物」で、確認申請が要るかどうかは設置先の建築指導課(特定行政庁)に確かめます。雪で壊れたときは、カーポート本体は火災保険の雪災、車は自動車保険の車両保険が窓口になりうるものの、補償されるかは契約内容で決まります。相談先は、施工店・メーカー・行政・保険会社の4つに分かれます。どこに何を聞けばよいかを先に整理しておくと、雪の多い時期に慌てずに済みます。固定資産税の考え方は、風除室の記事で詳しく扱っています。
カーポートは建築物、確認申請は建築指導課へ
建築基準法第2条第1号は、建築物を「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」と定めています。道内の苫小牧市の案内も「カーポートや物置も建築物に該当します」と書いています。
同じ案内は、小規模な増築などは確認申請が不要な場合があるとして、詳細は建築指導課に問い合わせるよう求めています。建築基準法第6条第2項の、床面積10㎡以内なら確認がいらないという例外は、防火地域・準防火地域の外での増築などに限られます。要否は自分で決めず、設置先の建築指導課と施工店に確かめます。
固定資産税の扱いは、風除室(玄関フード)の記事で紹介した苫小牧市の案内に「壁のないカーポート等は家屋の課税対象とはなりません」とあります。1つの自治体の案内なので、設置先の資産税の担当にも確かめてください。
カーポートの損害は火災保険、車は車両保険へ
日本損害保険協会は、住まいの保険(火災保険)には雪災による損害を補償する商品があり、一定額以上に達するものが補償の対象になると説明しています。車については、自動車保険に「車両保険」を付けていると、風水災等で損害を被った場合に保険金が支払われるとしています。
カーポートが補償の対象に含まれるか、雪の損害として認められるかは、契約によって違います。証券の内容を保険会社に確かめ、雪災の考え方は火災保険の記事も参考にしてください。
困ったときの確認先と、聞くことは次のとおりです。
- 施工店:区分・基礎の大きさ・サポート柱・配置・確認申請の手続き
- メーカー:ラベルの読み方・取扱説明書・雪質別の目安
- 建築指導課:垂直積雪量の地区・確認申請の要否
- 保険会社:雪災の補償の範囲・車両保険の有無
出典:e-Gov法令検索「建築基準法」/苫小牧市「確認申請手続きなど」/苫小牧市「車庫・物置・風除室等を設置される方へ」/日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」
カーポートの雪対策についてよくある質問と答え
カーポートの雪について検索でよく見かける疑問に、この記事で紹介したメーカーの公開情報と公的資料をもとに短く答えます。答えはどれも目安で、自宅のカーポートの判断は、柱のラベルと取扱説明書、施工店の説明を優先してください。
今ある雪をいつ下ろすか、新しく建てるなら何cmを選ぶか、壊れたらどこに確かめるかという、判断に直結する問いを選びました。答えの根拠になる表や引用は、それぞれ本文の章に出典つきで載せています。
カーポートの雪下ろしは何センチからですか
ラベルの区分と雪質で決まります。耐積雪20cmの製品なら、新雪で20cm、締雪で12cm、粗目雪で8cmが目安で、その高さに届く前に下ろします。
雨の後や氷になった雪は何cmで下ろしますか
メーカーの案内は「目安より早く」で、cmの数字は示していません。雨で水を含んだ雪は重くなるため、ラベルの目安より早く下ろします。
LIXILは、屋根に残った雪は氷状になって重くなるとして、できるだけ残さないよう求めています。
北海道では耐積雪何cmを選べばよいですか
一律には決まりません。設置する市町村の垂直積雪量は60cmから250cmまで違います。その値と単位荷重に見合う区分かを、施工店に説明してもらって決めます。
雪下ろしのときカーポートの屋根に乗れますか
乗らないでください。LIXILは屋根に乗らないよう、YKK APは屋根に乗ることやはしごを掛けることを避けるよう注意しています。地上から届く道具を使い、複数人で作業します。
雪でカーポートと車が壊れたら保険は使えますか
カーポート本体は火災保険の雪災、車は自動車保険の車両保険が窓口になりえます。補償されるかは契約で決まるので、保険会社に確かめてください。
出典:LIXIL「カーポートやテラスはどの程度までの積雪に耐えられますか?」/YKK AP「カーポートが積雪で倒壊し、下に停めていた車にキズがついた」/北海道「垂直積雪量」/日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」
まとめ:カーポートの雪は区分・雪質・地域で備える
カーポートの耐積雪の「cm」は新雪の値で、締雪では6割ほど、粗目雪では半分以下の高さが目安になり、雨を含めばさらに早く下ろす必要があります。今あるカーポートは、ラベルの区分と雪質で目安を決め、届く前に、屋根に乗らず複数人で下ろします。新しく建てるなら、設置先の垂直積雪量に見合う区分かを施工店に確かめます。冬の前にラベル・道具・サポート柱を確かめるところから始めてください。
記事へのご指摘や監修のご相談はお問い合わせから承ります。工事のご依頼や見積もりは受け付けておりません。
本記事はメーカー公開情報と公的資料をもとに一般的な考え方を整理したもので、個別のカーポートの耐積雪性能、雪下ろしの要否、確認申請や保険の適用を判断するものではありません。耐積雪の区分・雪質別の目安は各メーカーの公開値で、製品や施工によって異なります。自宅のカーポートは柱のラベル・取扱説明書・施工店の説明に従い、確認申請は設置先の建築指導課、補償の範囲は保険会社にご確認ください。

