最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月4日編集方針と検証の手順
外壁の見積書に「石綿事前調査」という行が入っていた。あるいは、契約前に「建てた年が分かる書類はありますか」と聞かれた。アスベストは解体するときの話だと思っていたので、塗り替えでなぜ出てくるのか分からない。
結論から言うと、外壁や屋根の改修工事も、法令上は事前調査の対象になりうる工事です。塗るだけの作業なら対象から外れる余地がありますが、実際の塗り替えには既存の塗膜を落とす工程が入るため、そう単純には切り分けられません。
この記事では、厚生労働省と環境省が公開している資料をもとに、何が義務で、どこから報告が要って、施主は何を見ておけばいいのかを整理します。
なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではなく、法令の解説を専門とするものでもありません。個別の工事が対象になるかどうかを判断するのは施工業者です。ここでは、施主として知っておくと話が通じる範囲を扱います。
結論:判断の分かれ目は「既存の材料を削るかどうか」
先に全体像を示します。
- 平成18年(2006年)9月1日より前に着工した建物は、石綿を含む建材が使われている可能性があります
- 解体だけでなく、リフォーム・修繕などの改修工事も規制の対象です
- ただし「現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業」は、調査が不要と判断できる場合として厚生労働省の資料に挙げられています
- 外壁塗装では高圧洗浄やケレンで既存の塗膜を落とす工程が入るため、この例外にそのまま当てはまるとは限りません
- 判断するのは施工業者です。施主が「うちは対象外」と決めるものではありません
つまり、聞くべきことは「対象ですか」ではなく、「この工事について、事前調査はどう扱われますか」です。
この記事で扱わないこと
- 業者そのものの調べ方 … 北海道での業者の選び方
- 既存の外壁の上に新しい材料をかぶせる工事 … カバー工法とは
- 見積書の項目の読み方 … 外壁塗装の見積書はどこを見る?
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
なぜ外壁と屋根で石綿の話が出るのか

石綿は断熱や補強の目的で、多くの建材に混ぜられてきました。厚生労働省の資料は、石綿が平成18年(2006年)9月から輸入・製造・使用などが禁止されていること、それより以前に着工した建築物は石綿が使用されている可能性が高いことを前提として説明しています。
外まわりで関係してくるのは、主に次のものです。
| 部位 | 関係しうる建材 | 工事での接点 |
|---|---|---|
| 外壁の表面 | 仕上塗材(吹き付けなど) | ケレン、剥離、下地の調整 |
| 外壁の板 | 成形板(スレート系のボードなど) | 切断、穴あけ、撤去 |
| 屋根 | スレート系の屋根材 | 撤去、葺き替え、穴あけ |
| 軒天 | けい酸カルシウム板など | 張り替え、切断 |
とくに仕上塗材は見落とされやすい部分です。塗料そのものではなく、下地に吹き付けられた厚みのある仕上げ材のことで、塗り替えのときに削る対象になります。
建てた年で大きく分かれる
判断の起点は着工日です。厚生労働省の資料は、石綿が使用されていないと判断する方法として、製品を特定したうえで「その製造年月日が平成18年9月1日以降であることを確認する方法」を挙げています。
また、着工日が平成18年9月1日以降であることの確認ができる場合は、目視等によらなくてよいとされています。
建築確認申請書の副本、工事請負契約書、工事の記録や工程表など、着工日が分かるものを探しておいてください。確認済証や検査済証は確認や検査の日付を示すもので着工日そのものではありませんが、時期を絞り込む材料にはなります。平成18年9月1日以降の着工であることが書面で確認できれば、調査はそこで切り分けられます。増築やリフォームを重ねている場合は、その部分ごとの時期も関係します。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
事前調査とは何をすることか

厚生労働省の資料は、事前調査についてこう説明しています。

工事対象となる全ての部材について、石綿が含まれているかを事前に設計図書などの文書と目視で調査し(事前調査)、調査結果の記録を3年間保存することが義務である、というものです。
「目視」は見た目で決めることではない
ここが誤解されやすいところです。同じ資料には、「目視」とは、単に目で見て判断することではなく、現地で部材の製品情報などを確認することをいうと書かれています。
つまり「見たかぎり大丈夫そうです」は調査ではありません。製品を特定して、メーカーの証明や成分情報と照合するか、製造年月日を確認するという手順が求められています。
目視ができない部分については、目視が可能となった時点で調査するとされています。足場を組んでから分かることがある、という工程上の事情もここに関わります。
調査できる人が決まっている
令和5年10月1日から、建築物の事前調査は資格を持つ人が行うことになりました。厚生労働省の資料が挙げているのは次の区分です。
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者
- 令和5年9月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者
3つ目だけ、調査できる対象に範囲があります。厚生労働省の講習テキストは、一戸建て等石綿含有建材調査者が調査できる対象を「一戸建ての専用住宅及び共用住宅(長屋を含む)の住戸の内部」とし、該当する例として「一戸建て住宅、共用住宅の住戸の内部ほか」を挙げています。
つまり戸建て住宅であればその住宅が対象になりますが、共同住宅では住戸の内部に限られ、ベランダや廊下などの共用部分は含まれません。マンションの外壁工事では、この区分では足りないということになります。
戸建ての塗り替えであれば、いずれの区分でも対応できます。それでも「誰が調査するのか」を聞いておく価値はあります。答えられない会社と、資格の区分まで説明できる会社では、扱いの慣れ方が違います。
分からなければ分析するか、あるものとして扱う
書面と目視で判断がつかない場合、分析による調査の実施が義務になります。ただし例外があり、石綿が使用されているものとみなして、ばく露防止措置を講ずれば、分析は不要とされています。
実務上は、この2つのどちらを選ぶかで費用と工期が変わります。分析するのか、あるものとして扱うのかを見積もりの前提として確認してください。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)/厚生労働省「建築物石綿含有建材調査者講習」/厚生労働省「建築物石綿含有建材調査者講習テキスト」
調査が要らないと判断できる作業もある

すべての工事に調査が要るわけではありません。厚生労働省の資料は、石綿の飛散リスクはないと判断できるので調査不要とされる場合を挙げています。
- 木材、金属、石、ガラス、畳、電球などの石綿が含まれていないことが明らかなものの工事で、切断等、除去または取り外し時に周囲の材料を損傷させるおそれのないもの
- 工事対象に極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業
- 現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業
- 石綿が使用されていないことが確認されている特定の工作物の解体・改修の作業
「塗るだけ」は3番目に当たるのか
3番目の記述を読むと、既存の塗装の上に新しく塗るだけであれば当てはまりそうに見えます。実際、そのように整理される場面もあります。
ただし、外壁塗装の実際の工程を思い出してください。工事の流れで整理したとおり、塗る前には高圧洗浄で汚れとはがれかけた塗膜を落とし、ケレンで表面を整え、ひび割れを削って補修します。
これらは「現存する材料等の除去」に当たりうる作業です。どこまでを「極めて軽微な損傷」と見るかで判断が分かれます。だからこそ、施主が独自に「うちは追加するだけだから対象外」と決めるのは危険です。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
報告が必要になるのはどこからか

事前調査そのものとは別に、調査結果を行政に報告する義務があります。令和4年4月1日からの制度で、一定規模以上の工事が対象です。報告先は石綿障害予防規則にもとづく所管の労働基準監督署と、大気汚染防止法にもとづく都道府県等の両方です。

| 工事の種類 | 報告が必要になる規模 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体部分の床面積の合計が80㎡以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負金額が100万円以上(税込) |
| 特定の工作物の解体・改修 | 請負金額が100万円以上 |
| 船舶(鋼製) | 総トン数20トン以上 |
厚生労働省の資料は、建築物の改修工事を「建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のもの」と定義しています。また請負金額については「材料費も含めた工事全体の請負金額をいう」と明記されています。環境省の資料はさらに、請負代金の合計額は事前調査の費用は含まないが消費税は含むこと、同じ者が二以上の契約に分割して請け負う場合は一の契約で請け負ったものとみなすことを示しています。石綿に関する部分だけの金額ではなく、工事全体の金額で判断するということです。
戸建ての外壁塗装は、工事全体で100万円を超えることが珍しくありません。つまり多くの塗り替え工事が、金額の面では報告の対象規模に入ります。
報告は石綿事前調査結果報告システムという電子システムで行います。工事開始前までに、元請事業者が行うことになっています。環境省の資料によれば、このシステムでは大気汚染防止法および石綿障害予防規則にもとづく報告を同時に行うことができます。
報告する内容
報告項目には、事業者の情報や現場の住所のほか、事前調査を実施した者の氏名、工事対象の建築物の着工日と構造の概要、請負金額、事前調査結果の概要(材料ごとの石綿使用の有無と判断根拠)などが含まれます。
ここでも着工日が出てきます。施主が着工日の分かる書類を用意しておくと、この手続きがスムーズになります。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)/環境省「建築物等の解体・補修時には石綿含有建材の調査が必要です」/厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」
もうひとつの法律がある
ここまでは働く人の安全を守る側の規制(石綿障害予防規則)を見てきました。石綿にはもうひとつ、周囲への飛散を防ぐ側の規制があります。大気汚染防止法です。
環境省の資料によれば、大気汚染防止法の一部を改正する法律が令和2年6月5日に公布され、一部の規定を除き令和3年(2021年)4月から施行されています。改正のねらいは、建築物等の解体等工事における石綿の飛散を防止することです。
改正の要点として、資料は次を挙げています。
- 全ての石綿含有建材へ規制を拡大(成形板等の不適切な除去で飛散した事例があったため)
- 石綿含有仕上塗材の除去作業には、独自の作業基準を設ける
- 事前調査の方法を法定化(書面調査、目視調査及び分析調査)
- 「必要な知識を有する者」による事前調査の実施を義務付け(施行:令和5年10月〜)
- 一定規模以上の建築物等について、石綿含有建材の有無にかかわらず、元請業者等が事前調査結果を都道府県等へ報告することを義務付け(施行:令和4年4月〜)
- 隔離等をせずに吹付け石綿等の除去等作業を行った場合は直接罰が適用される
施主に説明することが定められている
この記事を読んでいる立場にとって、いちばん関係が深いのは次の点です。環境省の資料は、工事の流れとして「石綿含有建材の使用の有無を調査」し、「調査結果を発注者に説明」することを示しています。さらに、作業結果の発注者への報告も義務付けられています。
調べたかどうか、何が分かったか、どう作業したかは、施主が問い合わせて初めて出てくる情報ではなく、説明されるべき情報として制度に組み込まれています。説明がないまま工事が進んでいる場合は、遠慮なく聞いてください。
報告は1回で両方に届く
労働基準監督署への報告と、都道府県等への報告は別の法律にもとづくものですが、手続きは分かれていません。環境省の資料は「環境省と厚生労働省が連携し電子システムによるコネクテッド・ワンストップ化。制度開始時より運用」と説明しています。
先に触れた石綿事前調査結果報告システムが、その窓口です。業者が二重に手続きする必要はないので、「手間がかかるから省く」という説明は成り立ちません。
出典:環境省「大気汚染防止法が改正されました」/環境省「建築物等の解体・補修時には石綿含有建材の調査が必要です」
石綿があると分かったら何が変わるか

調査の結果、石綿を含む建材があると分かった場合、作業の方法が変わります。外壁と屋根に関係するものを挙げます。
仕上塗材を電動工具で削る場合
厚生労働省の資料は、石綿含有仕上塗材をディスクグラインダーまたはディスクサンダーで除去するときは、ビニルシートなどにより作業場所を隔離し、湿潤な状態に保ちながら作業をする必要があるとしています。なお、この隔離は負圧に保つ必要はないとされています。
一方で、注目したい例外があります。同じ資料は「高圧水洗工法、超音波ケレン工法等は作業場所の隔離不要」と明記しています。
これは、削り方によって現場の様子がまったく変わるということです。どの工法で下地を処理するのかが、工期にも近隣への影響にも効いてきます。
スレートなどの成形板を撤去する場合
屋根や外壁のボード類を撤去する場合は、切断、破砕等によらない方法で行うことが原則義務とされています。資料は「切断・破砕等以外の方法」をボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すことと説明しています。
技術上困難な場合は例外が認められますが、その「困難な場合」も、材料が接着材で固定されている、大きくて手作業で外せないといった具体的な状況として説明されています。
屋根材を上から割って落とすような撤去は、原則に反します。葺き替えの見積もりを取るときは、撤去の方法を聞いてみてください。
そのほかに求められること
- 石綿作業主任者の選任
- 作業者への特別教育
- 作業時に建材を湿潤な状態にすること
- マスク・保護衣等の使用
- 関係者以外の立入禁止の表示
- 石綿作業場である旨の掲示
- 作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存すること
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
現場を見れば分かることがある

施主が確認できる手がかりがあります。厚生労働省の資料は、調査結果の写しを工事現場に備え付け、概要を見やすい箇所に掲示することも義務としています。
つまり、調査が行われていれば、その結果は現場に掲示されているはずです。足場のシートに掲示物が見当たらない場合、聞いてみる価値があります。
記録される項目には、事業者の名称・住所・電話番号、現場の住所、工事の名称・概要、事前調査の終了年月日、工事対象の建築物の着工日、構造、事前調査の実施部分、調査方法、調査結果(石綿の使用の有無とその判断根拠)が含まれます。
とくに「判断根拠」の欄を見てください。ここに何が書かれているかで、どこまで調べたのかが分かります。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
費用と工期はどうなるか

調査そのものにかかる費用と、石綿があった場合の追加費用は分けて考えます。
| 項目 | 発生する場面 | 見積書での扱い |
|---|---|---|
| 書面・目視による事前調査 | 対象工事すべて | 含まれているか確認 |
| 分析調査 | 書面と目視で判断がつかないとき | 別途になることが多い |
| 報告の手続き | 規模が該当するとき | 諸経費に含まれることが多い |
| 石綿があった場合の作業 | 含有が確認されたとき | 工法により大きく変わる |
金額の幅は工事の内容と地域で変わるため、この記事では具体的な数字を示しません。「調査の費用は見積もりに含まれているのか」「石綿が見つかった場合はどう精算するのか」を契約前に確認してください。
工期については、分析に出す場合は結果が出るまでの待ち時間が発生します。北海道は施工できる期間が限られるため、この待ち時間が計画に響くことがあります。早めに動き出すほうが有利です。
施主がやること、やらなくていいこと
| やること | やらなくていいこと |
|---|---|
| 着工日が分かる書類を探す | 自分で建材を採取する |
| 増改築の履歴を伝える | 対象かどうかを自分で判断する |
| 調査の実施者と方法を聞く | 調査機関を自分で手配する |
| 掲示と報告の有無を確認する | 報告システムに自分で入力する |
| 記録の写しをもらう | 法令の条文を暗記する |
建材を自分で削ったり、割ったり、採取したりしないでください。石綿が含まれている可能性がある材料を、装備なしで扱う行為です。気になっても触らず、業者に伝えてください。
よくある誤解
「塗装だから関係ない」
塗り替えでも、既存の塗膜や仕上塗材を削る工程があれば関係します。「塗る」という言葉から連想する作業だけで工事が構成されているわけではありません。
「うちは新しいから関係ない」
着工が平成18年9月1日以降であれば、書面での確認で切り分けられます。ただしその後に増築やリフォームをしている場合、その部分の時期は別に確認が要ります。「新しい」と思っていても、一部が古いことがあります。
「見つかったら工事できない」
そうではありません。定められた方法で作業するだけです。先に見たとおり、仕上塗材でも高圧水洗工法や超音波ケレン工法であれば作業場所の隔離は不要とされています。方法が変わるだけで、工事自体ができなくなるわけではありません。
「調査を省けば安くなる」
調査は事業者の義務です。省くことを前提にした見積もりは、法令上の手続きを飛ばしているということになります。安さの理由がそこにあるとすれば、比較の対象になりません。
見積書と契約書のどこに出てくるか
実際の書類では、次のような形で現れます。会社によって書き方は違いますが、探す場所は同じです。
| 書類 | 出てくる場所 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 見積書 | 諸経費、または独立した項目 | 調査費が含まれるか、別途か |
| 見積書の備考 | 「石綿が確認された場合は別途」などの但し書き | その場合の決め方 |
| 契約書 | 追加変更工事の条項 | 金額の決め方と、誰が決めるか |
| 工程表 | 着工前の期間 | 調査や分析の時間が見込まれているか |
気をつけたいのは「石綿が確認された場合は別途」とだけ書かれている見積もりです。それ自体は普通の書き方ですが、別途になったときにどう決めるのかまで詰めておかないと、着工後に交渉することになります。
聞いておきたいのは次の3つです。
- 調査の結果はいつ分かるのか
- 石綿があった場合、いくらくらい上がる見込みなのか(幅でよい)
- その金額に納得できないとき、工事を止められるのか
北海道の住宅と石綿

北海道特有の事情として、押さえておきたい点があります。
古い家ほど改修を重ねている
寒さへの対策として、断熱や外装の改修を重ねてきた住宅が少なくありません。新築時の図面だけでは、いま張られている材料が分からないことがあります。
この場合、判断の起点になる「着工日」は建物本体の話であって、後から張った外装材の時期は別に確認が必要です。過去の工事の記録が残っていれば、必ず出してください。調査の手間と費用が変わります。
外装をかぶせている家がある
既存の外壁の上から金属サイディングなどをかぶせている住宅では、古い外壁材がその下に残っています。表からは見えないため、工事の内容によっては下地に触れる場面で関係してきます。
厚生労働省の資料も、目視ができない部分については、目視が可能となった時点で調査するとしています。足場を組んだ後や、一部を外した後に調査が続くことがあるのは、このためです。
施工できる期間が短い
調査で判断がつかず分析に出す場合、結果が出るまでの時間がかかります。北海道は塗装ができる期間が限られるため、この待ち時間が年内に間に合うかどうかを分けることがあります。
春のうちに見積もりを取り始めると、この点で余裕が生まれます。時期の考え方は北海道で外壁塗装ができる時期にまとめています。
出典:厚生労働省「解体改修工事の受注者の皆さまへ」(改正石綿障害予防規則等の資料)
よくある質問
築30年ですが、外壁を塗るだけでも調査が必要ですか
工事の内容によります。既存の材料を削る工程が含まれるかどうかが分かれ目です。判断するのは施工業者なので、「この工事では事前調査をどう扱いますか」と聞いてください。
着工日が分かる書類が見当たりません
確認済証や検査済証が残っていないか、建てた会社に記録がないかを探してください。見つからない場合は、書面で確認できないという前提で調査が進みます。調査の範囲が広がる可能性があります。
調査は誰が費用を負担しますか
実務上は工事費に含めて請求されるのが一般的です。見積書に項目として出ているか、諸経費に含まれているかを確認してください。「含まれています」で終わらせず、どちらなのかを聞いておくと後の追加を避けられます。
報告されたかどうかを施主が確認できますか
直接の確認手段は限られます。ただし調査結果の写しは現場に備え付け、概要を掲示することが義務とされているので、それを見ることはできます。写しを1部もらっておくと記録に残ります。
アスベストが含まれていた場合、住んだままで大丈夫ですか
作業の方法によります。作業場所の隔離が必要な工法では、その範囲に立ち入れなくなります。洗濯物や窓の扱いも変わるため、着工前に生活面の影響を確認してください。
屋根がスレートです。塗るのと葺き替えるので違いますか
違います。撤去をともなう葺き替えのほうが、扱う場面が多くなります。成形板の撤去は原則として切断・破砕によらない方法で行うこととされているため、撤去の方法を確認してください。
カバー工法なら調査は要りませんか
既存の材料を残して上から新しい材料をかぶせる工法ですが、下地の固定や端部の処理で既存材に穴をあけたり切ったりする場面があります。「かぶせるだけだから不要」と断定はできません。工法の詳細はカバー工法の記事で扱っています。
訪問してきた業者に「アスベストがある」と言われました
その場で契約しないでください。石綿の有無は、資格を持つ人が製品を特定して判断するものです。外から見ただけで断定できるものではありません。対応の仕方は訪問販売と点検商法の記事にまとめています。
調査の記録はどのくらい保存されますか
事業者側で3年間の保存が義務とされています。施主としては、写しをもらって手元に置いておくのが確実です。次に工事するときの資料になります。
調査の説明を受けた記憶がありません
大気汚染防止法の枠組みでは、調査結果を発注者に説明することが工事の流れに組み込まれています。口頭で済まされていた可能性もあるので、書面での提示を求めてください。すでに工事が終わっている場合でも、記録は3年間保存されています。
石綿があると資産価値が下がりませんか
この記事では判断できません。ただし、調べていない状態と、調べて記録がある状態では、後者のほうが説明できる材料があります。売却を考える場面では、住宅の状況を調べた記録が求められることがあります。
DIYで外壁を削るのは問題ありますか
やめてください。法令上の義務は事業者に課せられるものですが、危険がなくなるわけではありません。平成18年9月より前に着工した建物で、外壁の表面を電動工具で削る作業は、装備なしで行うものではありません。
まとめ
外壁や屋根の改修工事も、石綿の事前調査の対象になりうる工事です。解体だけの話ではありません。
起点は平成18年(2006年)9月1日です。この日以降の着工であることが書面で確認できれば、そこで切り分けられます。まずは着工日が分かる書類を探してください。
調査は書面と目視で行い、令和5年10月1日からは資格を持つ人が実施することになっています。「一戸建て等石綿含有建材調査者」の範囲は住戸の内部に限定されている点は、外壁・屋根の工事では押さえておきたいところです。
報告が必要になるのは、改修工事なら請負金額100万円以上(材料費を含む工事全体の金額)から。戸建ての塗り替えは、この規模に入ることが少なくありません。
そして、石綿が見つかっても工事ができなくなるわけではありません。仕上塗材でも、高圧水洗工法や超音波ケレン工法であれば作業場所の隔離は不要とされています。方法が変わるだけです。
施主としてやることは多くありません。着工日の書類を用意し、誰がどう調査するのかを聞き、掲示と記録を確認する。この3つで足ります。自分で建材を削ったり採取したりはしないでください。
工事の保証と記録の残し方は外壁塗装の保証は何を守るのかで扱っています。
屋根材にも石綿を含むものがあります。塗装できるかどうかの判断は屋根は塗れる材質かで扱っています。
中古住宅の購入時に建物の状態をどう確かめるかは、中古住宅を買う前の外壁チェックにまとめています。
ドローンを使った点検の法令と限界は外壁のドローン点検にまとめています。
本記事は制度の概要を整理したもので、個別の工事が事前調査・報告の対象になるかどうかを判断するものではありません。判断は施工業者が行います。事前調査・報告の義務は主に元請事業者等に課せられるものですが、大気汚染防止法には発注者に関する規定もあります(工期や費用への配慮、特定の作業における届出など)。個別の取扱いは、所轄の労働基準監督署および都道府県等の窓口、ならびに施工業者にご確認ください。

