ALC外壁の塗装|吸水と凍害から考える塗料と目地の選び方

塗料と外壁材

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月9日編集方針と検証の手順

ALCの家に住んでいて塗り替えを調べ始めると、まず年数でつまずきます。6〜7年と書くサイトもあれば、15〜20年と書くサイトもある。

3倍近い開きがあるのに、確認した上位5記事では、いずれも一次資料が示されていませんでした。

先に結論を書くと、ALCの塗り替えは年数ではなく、材料の性質から考えると決まります。吸水しやすい板をどう守るか。

そこが仕様を決める軸になります。

使う材料は、ALC協会の技術資料と国土交通省の仕様書、そして公的研究機関の資料です。北海道で効いてくる凍害の話まで含めて整理します。

なお、当サイトは工事の依頼や見積もりを受け付けていません。掲載する数値は出典時点の参考値です。

結論:ALCは「塗って守る」外壁材

ALCパネルの外壁と目地が見える住宅

ALCの塗装は化粧ではなく、防水の一部です。押さえておきたいのは次の点になります。

  • ALCは吸水しやすい材料です。業界団体も「外壁面には防水性のある仕上げが必要」と明記しています
  • 透湿と透水は別の話です。水は通さず、水蒸気は逃がす仕上げが求められます
  • 北海道では凍害の経路が2つあります。外から入る水と、内部結露による水では対策が違います
  • 塗り替えの周期を年数で定めた一次資料は、確認した範囲では見当たりませんでした

この記事で扱わないこと

ALCとはどんな材料か

気泡が見える軽量コンクリート板の断面

ALCは軽量気泡コンクリートの略で、内部に無数の細かい気泡を持つ板です。石灰質原料とけい酸質原料を主原料に、オートクレーブと呼ばれる高温高圧の蒸気で養生して作られます。

規格はJIS A 5416で定められています。厚さで区分があり、厚形パネルは75mm以上200mm以下、薄形パネルは35mm以上75mm未満です。

品質として規定されているのは、圧縮強度3.0N/mm²以上、密度(kg/m³)は450を超え550未満、乾燥収縮率0.05%以下といった値です。

ここで押さえておきたいのは、JIS A 5416には吸水率や耐用年数の規定がないという点です。規定されているのは強度・密度・収縮といった値になります。

「JISで吸水率が決まっている」「寿命は50年」といった説明を見たら、出典を確かめてください。

出典:JIS A 5416:2016「軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)」規格本文

長所と、裏返しの弱点

ALCの長所と配慮点は、業界団体が同じ文の中で並べて説明しています。ALC協会の技術資料から引くと、次のとおりです。

「ALCパネルは軽量・断熱・不燃・耐火など、優れた特長をもった建築材料です。その反面、表面強度が小さい・欠けやすい・吸水性が大きいなど配慮が必要な部分も併せもっています

長所 裏返しの配慮点
軽量(気泡を多く含む) 表面強度が小さい・欠けやすい
断熱性(気泡が熱を伝えにくい) 吸水性が大きい
不燃・耐火(気泡コンクリートで燃えない) 表面強度が低いため、石張り・大型タイル・モルタル塗などの重い仕上げは避ける

気泡が多い性質が、軽さと断熱をもたらし、水の吸いやすさにもつながります。長所と弱点は表と裏です。

鉄骨造の住宅で外壁にALCが使われるのは、この軽さが効くからです。断熱性も北海道では歓迎される性質ですが、その気泡が水を抱えると凍害の舞台になります。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」

だから外壁面には仕上げが要る

外壁に塗料を塗る職人の手元

ALC協会は、外壁面の仕上げを設計上の注意として最初に挙げています。「ALCパネルは吸水しやすい材料であることから、耐久性を維持させるために、外壁面には防水性のある仕上げが必要です」。

仕上げや防水が不適切だとどうなるか。協会は「外壁では漏水およびALCパネルの耐久性低下の原因になります」とし、続けて「また、寒冷地では凍害の原因になります」と書いています。

塗装は見た目を整えるためだけの工程ではありません。板そのものを水から守る層として設計されています。

この前提を共有できていれば、見積もりで下地の工程を削る提案が出てきたとき、なぜ引っかかるのかが分かります。

協会は重い仕上げも避けるよう求めています。「ALCパネルは表面強度が低いため、石張り、大型タイル、モルタル塗などの重い仕上げは避けて下さい」。

塗装が選ばれるのには理由があります。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」

国の仕様書もALCを別扱いしている

下地にシーラーを塗る作業

「ALCは吸う」という前提は、国の仕様書の構造からも読み取れます。

公共建築工事標準仕様書では、コンクリート面とALCパネル面の素地ごしらえが同じ表にまとめられ、工程3に「吸込止め」があります。合成樹脂エマルションシーラーを全面に塗り付ける工程です。

そして表の注記にこう書かれています。「コンクリート面の場合は、工程3を省略する」。

つまりコンクリートでは省いてよい吸込止めを、ALCでは省かないという設計です。

改修工事の仕様書でも同じ構造です。注記でコンクリート面のみが吸込止めを省略でき、ALC面では下地調整塗材E(JISで定められた下地調整用の塗材)を使った場合に限って省略できるとされています。

改修の場合、既存塗膜の扱いにも種別があります。特記がなければRB種で、「劣化しぜい弱な部分を除去し、活膜は残す」という考え方です(活膜=密着が残っていて剥がす必要のない既存塗膜)。

見積書に「ケレン」(さび落としや目荒らし)「素地調整」(塗装前に下地を整える一連の工程)としか書かれていないときは、どの種別で考えているかを聞いてみてください。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18章同「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章

透湿と透水は別の話

「ALCは防水性がゼロ」という説明を見かけますが、協会の書き方は違います。設計上の注意として「放湿性を考慮」を挙げ、次のように続けます。

「ALCパネルは、放湿性、通気性があるのでALCパネル両面を密閉する仕上げは避けて下さい」。

水を通さないことと、水蒸気を通さないことは別です。板に入った水分が抜けられないと、かえって傷みます。

学術研究でも同じ方向が示されています。ALC外壁の凍害を扱った日本建築学会の論文は、英文の要旨で透湿性が高く、透水性が低い表面仕上げが推奨されると述べています。

原文の表現は「high moisture permeability and low water permeability」です。

解説記事は「透湿性の高い塗料を」で止まりがちですが、正確には透湿性は高く、透水性は低くという二条件です。

片方だけを追うと失敗します。透水性を下げることに寄せすぎると水蒸気がこもり、透湿性を上げることに寄せすぎると雨水が入りやすくなります。

寒冷地についても、協会が明言しています。薄形パネルの設計施工指針には「寒冷地では壁体内結露防止からも透湿性の高い塗材が適している」とあります。

北海道で透湿性を重く見る理由は、団体自身がこう書いているためです。塗料選び全般は寒冷地で選ぶ塗料へ。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」同「ALC薄形パネル設計施工指針・同解説」日本建築学会「ALC外壁仕上げの凍害劣化の評価方法に関する実験研究」(1989年)

仕上塗材の適否は団体が公表している

どの仕上塗材が向くかは、協会が表で公開しています。縦壁ロッキング構法と横壁アンカー構法のそれぞれについて、○と△で評価が付いています。

○が付いているのは複層塗材CE、複層塗材Si、複層塗材E、可とう形複層塗材CEです。いわゆる吹付けタイル系の複層仕上塗材が中心になります。

いっぽう防水形外装薄塗材E(単層弾性)や防水形複層塗材E(複層弾性)は△です。備考には「透湿性が比較的低いため、下地の調整、乾燥に注意が必要」とあります。

△は「禁止」ではなく「注意が必要」という位置づけです。下地の調整と乾燥に配慮したうえで選ぶ材料になります。

「弾性塗料は絶対に使ってはいけない」も「弾性のほうが防水になる」も、協会の書き方とはずれています。

リシン系(外装薄塗材E)も△で、備考は「防水性能を確保するため、特に十分な下地処理が必要」。△の理由は仕上材ごとに違います。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」表-1

数字で見る透水量と透湿度

数字で並べると、防水形は水を通さない代わりに水蒸気も逃がしにくいことが分かります。日本建築仕上材工業会がALC外壁向けにまとめた資料に、仕上塗材ごとの透水量と透湿度が載っています。

仕上塗材の透水量と透湿度(ALC外壁向け)
仕上塗材の透水量と透湿度(ALC外壁向け)
仕上塗材(通称) 透水量(ml/24h) 透湿度(g/㎡・24h)
防水形複層塗材E(複層弾性) 0〜0.2 10〜25
防水形外装薄塗材E(単層弾性) 0〜0.2 15〜45
複層塗材E(吹付けタイル) 0.1〜0.2 35〜70
外装薄塗材E(アクリルリシン) 30〜135 200〜500

協会の評価の意味も見えてきます。防水形は水をほとんど通さない代わりに、水蒸気を逃がす力も小さいのが分かります。

リシン系はその逆で、水蒸気はよく通しますが水も通します。

複層塗材Eは透水量0.1〜0.2で透湿度35〜70。両立の点で真ん中に位置します。

同じ資料は防水形について、「下地中の水分が多い場合や上塗材が一液形で色が濃い塗料の場合は、塗膜が膨れることもあります」とも注意しています。

出典:日本建築仕上材工業会「ALC外壁への雨水浸入に有効な仕上塗材」

下地調整は原則として必要

下地調整塗材の塗り付けは、協会も仕上材工業会も必要としている省略できない工程です。協会は「仕上げ塗材には下地調整が必要」と設計上の注意に挙げ、JISに基づく下地調整を求めています。

塗り替えのときにどこまで落とすかの区分は、ケレンとはで整理しています。

仕上材工業会も「ALCパネル外壁へ仕上げ塗りを行う場合は、下地調整塗材の塗付けが必要」と結論しています。

協会は「薄吹きは避ける」とも書いています。下地が見える薄い吹き付けでは、設計した膜厚が出ません。

下地の工程は仕上がりの見た目では確かめられません。だからこそ、契約前に項目として確認する意味があります。

国の仕様書でも、素地ごしらえは特記がなければB種と決められています。B種やRB種は、仕様書が定める工程セットの等級で、特記がなければこれが標準という位置づけです。

工程を数える基準が公開されていると知っておくだけで、話が具体的になります。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」日本建築仕上材工業会「ALC外壁への雨水浸入に有効な仕上塗材」

低吸水性パネルでも仕上げは要る

吸水性を抑えたALCパネルでも、協会は「低吸水性パネルも一般パネルに準じた仕上げが必要」としています。吸水を抑えた製品が存在しても、仕上げを省く設計にはなっていません。

製品として吸水を抑えていても、仕上げを省く設計にはなっていません。「低吸水性だから塗らなくていい」は成り立たないと考えてください。

低吸水性パネルは、ヘーベル・シポレックス・クリオンといったメーカーが製品として出しています。自宅のパネルがどれかは、引き渡しの書類やメーカーの記録で分かることがあります。

分からなくても、仕上げの考え方は変わりません。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」

目地のシーリングは条件が決まっている

外壁の目地にシーリング材を充填する手元

ALCの目地シーリングは、モジュラスの上限が団体と国の両方で数値で決められています。板を並べて張る外壁なので、目地の数も多くなります。

協会は「耐久性があり経年劣化が少なく50%引張応力の値が0.3N/㎜2以下のモジュラスの低いタイプを使用して下さい」としています。

国の仕様書はさらに厳しく、ALCが被着体の場合は50%引張応力が0.2N/㎜2以下の製品を使うよう定めています。

モジュラスが低いとは、伸びるときの力が小さいという意味です。硬いシーリングは動く目地でALCを傷めるため避けられます。

笠木・サッシ・水切り板・基礎部・設備配管との目地は、パネル間とは動きが違うため、個別に材料を選ぶよう求められています。

構法の話もあります。協会は、ロッキング構法や横壁アンカー構法の目地をワーキングジョイント(動く目地)としています。

そのうえで、目地底にボンドブレーカーやバックアップ材を使い、2面接着にするよう求めています。

2面接着とは、目地の両側の面だけで接着し、底には付けない納め方です。3面接着では動きを逃がせず、破断や剥離が起こりやすくなります。

ALCは目地が動く前提の外壁だと覚えておいてください。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」9章

費用はどこで動くか

ALCの塗装費用では、目地の延長と下地調整の量が効いてきます。板を並べて張る外壁なので、シーリングの本数が他の外壁材より多くなるためです。

工事は足場、高圧洗浄、目地シーリング、下地調整、仕上塗材という順に進みます。費用が動きやすいのは、このうち目地シーリングの打ち替えの延長、下地調整の範囲、既存塗膜の除去の範囲です。

同じ坪数でも、パネルの割り付けによって目地の延長が変わります。㎡単価だけの比較では足りない理由がここにあります。

目地の量が多いことと、吸い込みへの対応が要ることは、ALCで効いてくる条件です。安い見積もりは、どの工程をどこまでやる前提かを確かめてください。

工程の呼び方は公開されています。国の仕様書が素地ごしらえを種別で定めているので、どの種別を前提にした見積もりかを聞けます(実際の数量は建物ごとに変わります)。

相場の金額そのものには、一次資料の裏づけがありません。総額の考え方は費用相場の記事を参考に、参考値として扱ってください。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18章

北海道で起きる凍害は2種類

凍てついた外壁と軒下のつらら

協会は寒冷地対策の項で、凍害を水の入り方によって2つに分けています。ここが北海道の読者にいちばん効く部分です。

ALCの凍害は水の入り方で2つに分かれる
ALCの凍害は水の入り方で2つに分かれる

まず前提として「吸水したALCパネルが凍結融解を繰り返すような条件にさらされると、凍害を受けることがあります」。

そのうえで、協会は水の入り方によって経路を分けています。

経路 水の来かた 典型的な現象と地域
外部から浸入する水 降雨・融雪水が外壁面から入る 外装材の剥離。日本海側などで冬期0℃以下かつ積雪が多い地域
内部からの水 内部結露などで室内側や開口部まわりから入る 塗膜の膨れ・剥離、パネルのひび割れ。北海道などの冬期の気温が特に低下する地域

協会は外部型について「シーリング部分などに欠陥があると、その部分に大きな劣化が生じます」と補足しています。目地の傷みが凍害の入口です。

目地の手当ては塗装と同じくらい重要です。見積もりでシーリングの扱いが薄いなら、そこは詰めておいてください。

内部型の説明では、地域名として北海道が挙げられています。積雪より気温の低さが効く型です。

道内でも条件は分かれると考えられます。多雪地では外部から入る水、厳寒地では内部結露と、意識する経路が変わりそうです。

同じ建物で両方が重なることもあります。どちらか一方と決めつけないでください。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」寒冷地対策

内部からの凍害では塗膜の膨れが出る

内部型の凍害は、進み方まで書かれています。協会の説明はこうです。

塗膜表面に水分が集中すると塗膜の膨れ、剥離が起こり、ALCパネル内部に水分が集中して、それが凍結した場合にはALCパネルにひび割れが生じる場合があります」。

水分の集中は「氷点下でALCパネル内部の温度差が大きい条件で加速される」とも書かれています。北海道の冬はこの条件に近づきますが、実際にどうなるかは建物の断熱・防湿と室内の湿度によって変わります。

協会の説明では、塗膜側に出る膨れ・剥離と、板そのもののひび割れが、水分の集中する場所ごとに挙げられています。必ずこの順に進むと書かれているわけではありません。

膨れが出たら原因を診断してもらってください。内部結露が原因なら塗装だけでは解決しません。

膨れを見た目の問題として放置しないでください。結露が絡む場合は壁の中の結露の調べ方もあわせて確かめてください。

協会は防湿層と換気にも触れています。塗装だけでは止められない水がある前提で、建物側の対策と組み合わせてください。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」寒冷地対策

寒冷地の納まりで効く場所

窓下の水切り板と外壁の取り合い

協会は寒冷地対策として、水を入れない納まりを部位ごとに挙げています。塗装だけでなく、水の入口をふさぐ発想です。

  • 基礎まわり:布基礎の立ち上がりは積雪や落雪を考えて高く。ALCパネル面より基礎を外側に出さない。犬走りに水勾配を設ける
  • サッシまわり:水切り板の出寸法は「ALCパネル外面よりも20mm以上持ち出せるもの」で、両端に水返しのついたものを採用する
  • :二重窓や複層ガラス、断熱サッシを採用する
  • 隙間:サッシ枠とALCパネルの隙間に発泡ウレタンを充填する

水切りの出寸法は、足場があるときに確かめておきたい項目です。

協会はこの節を「融雪水や結露水などの水分をALCパネルに浸透させないことが重要となります」とまとめています。

塗料の性能を上げることと、水の入口を減らすこと。両方そろって凍害の対策になります

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」寒冷地対策

ALCで見るべき劣化サイン

外壁の目地と塗膜を点検する手元

年数ではなく状態で判断するなら、見るべき場所は決まっています。ALCで優先度が高いのは次の4つです。

  • 塗膜の膨れ・剥離:内部型の凍害の入口にもなる。放置しない
  • 目地シーリングの破断・肉やせ:外部から水が入る経路になる
  • チョーキング:手で触ると白い粉が付く現象。塗膜の表層が傷んだ合図
  • パネル際やコーナーのひび割れ・欠け:表面強度が小さい材料なので、ぶつけた跡も水の入口になる

膨れと目地は特に重く見てください。どちらも板へ水を通す道になります。

詳しい見方は膨れ・剥がれの記事凍害の記事へ。鉄筋の腐食まで進むと、塗装では収まりません。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」

塗り替え時期は年数で決まらない

協会の技術資料に「◯年ごとに塗り替える」という周期の記載は見当たりませんでした。ここで冒頭の疑問に戻ります。

代わりに書かれているのは、こういう表現です。「建物の機能と美観を永く保持するために、適切な外装仕上げ材の選定およびその耐久性能に見合った期間での診断とメンテナンスが必要です」。

つまり、使った仕上材の性能に応じて診断し、状態で判断するという設計思想です。年数の断定ではありません。

年数が3倍近くばらつくのは、一次資料に共通の根拠がないためだと考えられます。年数は目安、判断は状態です。

状態の見方は外壁の劣化サインの見分け方にまとめています。

出典:ALC協会「技術資料 ALCパネルの仕上げおよび防水(第9版)」

塗装のメンテナンスで本体の劣化は防げるとされる

公的な研究機関の資料は、塗装のメンテナンスでALCパネル自体の劣化は防げると考えられるとしています。ALC外壁の劣化について、こう整理されています。

「ALCパネルの外壁における劣化は、表面仕上材の劣化が主であり」。地震によるひびわれ等の要因を除けば、「塗装材等のメンテナンスによりALCパネル自体の劣化は防げると考えられる」。

仕上げを適切に保てば、板そのものは守れるという見通しです。

ALCの塗り替えにも費用はかかりますが、一般に板の交換より負担を抑えやすいと考えられます。

放置すれば表面だけでは済みません。協会も「ALCパネルの劣化にまで及び建物の耐用年数を大きく縮め不経済となります」と書いています。

出典:建築研究所「建築研究資料 No.145」第4章

業者に確認したい5点

提案を受けたら、次の5点を聞いてみてください。ALC固有の論点にしぼっています。

  • 下地調整塗材を使いますか(吸込止めを含めて何を塗るか)
  • 仕上塗材の種類は何ですか(複層か防水形か、透湿と透水をどう考えているか)
  • 目地のシーリング材のモジュラスと、2面接着にするかどうか
  • 既存塗膜をどこまで除去しますか(活膜は残すのか、全面除去か)
  • サッシまわりや基礎まわりの納まりで、気になる箇所はありますか

いずれも団体と国の資料に書かれている項目です。答えの中身は、施工経験や仕様の妥当性を確かめる材料になります。

この5点をメモして読み上げるだけでも、返ってくる説明の中身が変わります。

記事の内容についての質問や情報提供は、お問い合わせで受け付けています(工事の見積もりは扱っていません)。

見積もりの比べ方

下地調整と仕上塗材の種類が書かれていない見積書は、同じ条件で比べられません。項目を明示してもらってから相見積もりを取ってください(読み方は見積書の読み方と相見積もりへ)。

よくある質問

検索で多い疑問を6つ取り上げます。詳しい根拠は、本文の該当セクションで扱っています。

サイディングやモルタルと何が違いますか?

ALCで特に注意したい特徴が吸水性です。気泡が多く水を吸いやすいため、仕上げに防水の役割が求められます。

材料ごとの比較は外壁材の種類と選び方にまとめています。

ALC外壁は何年ごとに塗り替えますか?

年数を定めた一次資料は、確認した範囲では見当たりませんでした。協会は「耐久性能に見合った期間での診断とメンテナンス」を求めています。

使った仕上材の性能と、実際の状態で判断してください。

弾性塗料は使ってはいけませんか?

禁止ではありません。協会の表では防水形(弾性系)は△で、「透湿性が比較的低いため、下地の調整、乾燥に注意が必要」とされています。

条件つきで使える、という位置づけです。

シーリングは打ち替えと増し打ちのどちらですか?

ALCの目地は動くワーキングジョイントにあたるため、2面接着の設計が求められます。工法の選び方はコーキング打ち替えの記事で扱っています。

ALCの寿命は50年と聞きましたが本当ですか?

JISにも協会の技術資料にも耐用年数の記載は見当たりませんでした。数字を見たら出典を確かめてください。

確実に言えるのは、仕上げを保てば板の劣化は防げるという公的資料の記述までです。

塗装しないとどうなりますか?

協会は、仕上げが不適切な場合に漏水とパネルの耐久性低下が起こり、寒冷地では凍害の原因になるとしています。板そのものの劣化に及ぶと、補修の規模が大きくなります。

費用はどれくらいかかりますか?

目地の延長と下地調整の量が効いてきます。同じ坪数でもパネルの割り付けで目地の長さが変わるため、㎡単価だけの比較では足りません。

まとめ

ALCの塗装は、防水の設計です。確かめる点は下地調整・仕上塗材の透湿と透水・目地のシーリングの3つに集約できます。

北海道では、これに凍害の視点が加わります。膨れは見た目の問題ではなく、凍害や内部結露を疑うサインだと考えてください。

年数については、一次資料が求めているのは診断とメンテナンスであって、決まった周期ではありませんでした。

塗り替えの時期は、市町村ごとに向く季節が違います。市町村別の塗装カレンダーで、お住まいの適期を確かめてから計画を立ててください。

記事の内容に誤りの指摘や、専門家としての監修のご相談があれば、お問い合わせからお知らせください。

同じ塗って仕上げる壁でも、モルタル外壁は素地ごしらえの規定が別に定められています。モルタル外壁の塗装を参照してください。

窯業系サイディングとの見分けや塗り替えの進め方は、窯業系サイディングの塗り替えにあります。

本記事は公開されている技術資料・規格・公的資料の整理であり、個別の建物の診断ではありません。掲載した数値は各出典の時点のものです。実際の仕様や工法は、現地を確認した施工業者と相談のうえ判断してください。

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