モルタル外壁の塗装|ひび割れ・浮きの見分けと北海道の段取り

塗料と外壁材

最終更新:2026年9月9日公開:2026年8月13日編集方針と検証の手順

外壁にひび割れが増えてきた。手で触ると白い粉がつく。押すと、どうも一部が浮いている気がする。モルタルの家に長く住んでいると、こうした症状が重なって見えてきます。

困るのは、塗り替えれば収まるのか、それとも塗る前にやることがあるのかを自分では決められないところです。業者に聞くと「弾性塗料で」と言われる。ただ、その説明が自分の家に当てはまっているかまでは分かりません。手がかりになるのが、国が定めている改修の分け方でした。

  1. 結論:塗るかどうかは3つの症状で決まる
    1. この記事で扱わないこと
  2. モルタル外壁は現場で塗ってつくる壁
    1. 施工者が挙げる短所の1位は「ひび割れしやすい」
  3. 自分の家の仕上げを見分ける
    1. 通称とJISの呼び名は対応している
  4. 国はモルタル外壁の改修を3つに分けている
  5. 白い粉(チョーキング)は、下地の劣化とは別の話
    1. 既存の塗膜を落とす工法は4つある
  6. 浮きは叩いて確かめる
    1. 浮きを直す代表的な工法ではピンを使う
  7. ひび割れ部には3つの工法がある
    1. 漏水・浮き・錆汁があると話が変わる
    2. コーキングで埋めるだけは、3工法のどれでもない
  8. 欠損部は充填か、塗替えか
  9. 下地を直すと「待つ時間」が生まれる
    1. 14日という数字は、別々の工程に出てくる
  10. 北海道では、その待ち時間が季節とぶつかる
    1. 適期は市町村で2か月ちがう
  11. 改修の仕様書は原則として気温5℃以下では施工しない
  12. 塗り替えの工程は、下地を直す前と後で分かれる
  13. 素地ごしらえは特記がなければB種
    1. 外部に使ってはいけないパテがある
  14. 仕上塗材はJIS A 6909から選ぶ
    1. 塗料と仕上塗材は、厚みの桁が違う
  15. 「弾性塗料なら割れない」と決めない
    1. 仕様書が限定しているのは「下地の仕上げ」
  16. 壁の中に入った水は抜けているか
    1. 通気構法は全国で15.9%だった
    2. 軒の出には規定がある
  17. 塗装で足りない家をどう見きわめるか
    1. 見積書で増えるのはどの行か
  18. 業者に確認したい6つのこと
    1. 契約する前なら、無料で見てもらえる窓口がある
  19. よくある質問
    1. モルタル外壁にペンキを塗るとどうなりますか
    2. モルタル外壁の塗装はいくらかかりますか
    3. モルタル外壁は何年くらい持ちますか
    4. ひび割れを放置するとどうなりますか
    5. コケや汚れは自分で落としてよいですか
    6. モルタルの上からタイルや塗り壁にできますか
  20. まとめ

結論:塗るかどうかは3つの症状で決まる

モルタル外壁で先に決めるのは、塗料の種類ではありません。ひび割れ・欠損・浮きのどれが、どこまで出ているかです。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書は、モルタル塗り仕上げ外壁の改修をこの3つに分け、それぞれに工法を並べています。

なかでも扱いが重いのが浮きです。仕様書は、はく落のおそれがある浮き部について、補修範囲を先に確認して位置を明示するよう定めています。塗る前に処置する対象として扱われている、ということです。なお、この仕様書は公共建築物向けで、戸建て住宅に直接適用される基準ではありません。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

この記事で扱わないこと

重なるテーマは既存の記事に譲ります。割れの幅や場所の読み方は外壁のひび割れはどこまで大丈夫かに、外壁材そのものの見分けは外壁材の種類と選び方にまとめました。凍害の仕組み、塗料の樹脂グレード、カバー工法、塗る回数は深追いしません。色は変えられますが、選び方は外壁の色の選び方にあります。

モルタル外壁は現場で塗ってつくる壁

下地の上にモルタルを塗る左官職人

窯業系サイディングが工場で板をつくるのに対して、モルタルは現場でセメントと砂を練り、下地の上に塗って仕上げます。継ぎ目のない一枚の面になるので、外観は連続します。

そのかわり、板と板の間で動きを逃がす目地がありません。乾燥収縮や下地の動きで生じる変形の行き先が限られ、ひび割れという形で現れやすくなります。目地がないことは意匠上の強みですが、同時にひび割れと付き合う前提でもある。長所と短所が同じ性質から出ています。

施工者が挙げる短所の1位は「ひび割れしやすい」

国土技術政策総合研究所や東海大学、日本左官業組合連合会など13団体の共同研究が、2009年8月に同連合会の会員1,000名へ調査票を配り、305件(回収率30.5%)を集めています。2010年9月の日本建築学会大会で報告されたものです。

施工者が挙げた短所は、1位が「ひび割れしやすい」で81.7%。2位が「価格が高い」と「工期が長い」で各34.6%でした。長所では6位に「目地が無い」が26.8%。作っている側も、ひび割れやすさを織り込んでいます。

出典:日本建築学会大会学術講演梗概集2010年9月「ラスモルタル外壁の設計・施工状況に関する調査 その1」

自分の家の仕上げを見分ける

ざらついた砂壁状の外壁表面のクローズアップ

もうひとつ押さえておきたいのが、モルタルは下地であって、表面の模様をつくっているのは別の材料だということです。ざらついた砂壁のような面、細かい凹凸のある面、ぼこぼこと厚みのある面。これらは仕上塗材が作っています。

手がかりは、なでたときのざらつきと凹凸の高さです。指が引っかかる厚みがあれば厚付け、うっすら砂の感触なら薄付けに寄ります。新築時の図面が残っていれば、仕上表に呼び名がそのまま書かれています。

通称とJISの呼び名は対応している

日本建築仕上材工業会は、汎用的な仕上塗材としてリシン、吹付けタイル、スタッコ、じゅらくなどを挙げ、JIS A 6909(建築用仕上塗材)では薄付け・複層・厚付け・軽量骨材・可とう形改修用の5つに大別されると説明しています。

JISの分類 よく使われる通称 見た目と、塗り替えでの論点
薄付け仕上塗材 樹脂リシン、砂壁状じゅらく 砂を吹いたようなざらつき。粉化をどこまで落とすかが仕上がりに出る
複層仕上塗材 吹付けタイル、アクリルタイル 小さな凹凸模様。模様を残すか潰すかが論点
厚付け仕上塗材 スタッコ 厚みのある凹凸。既存塗膜の処理量が増えやすい

出典:日本建築仕上材工業会「【材料一般】に関するQ&A」

国はモルタル外壁の改修を3つに分けている

改修の仕様書と現場写真を机の上で確認する

ここでいう「国」は、国土交通省が公共建築向けに定めた仕様書です。その改修工事標準仕様書の第4章が、コンクリート打放し仕上げ外壁、モルタル塗り仕上げ外壁、タイル張り仕上げ外壁などの「ひび割れ部、欠損部及び浮き部」の補修と仕上げの改修を扱っています。

症状の3系統と、国の仕様書が挙げる改修工法
症状の3系統と、国の仕様書が挙げる改修工法

サイディングが板を下地に留めつけるのに対して、モルタルは下地に塗り付けます。だから、モルタルの層が下地から離れるという症状が起こりえます。これが浮きです。症状をこの言葉で言えれば、見積書の工事名と突き合わせられます。

症状 国の仕様書が挙げる工法 何を意味するか
ひび割れ部 樹脂注入工法/Uカットシール材充填工法/シール工法 割れの幅や動きで選び分ける前提
欠損部 充填工法/モルタル塗替え工法 埋めるか、塗り直すか
浮き部 アンカーピンニング6種/充填工法/モルタル塗替え工法(計8工法) 挙げられている工法が最も多く、状態で選び分ける幅が広い

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

白い粉(チョーキング)は、下地の劣化とは別の話

外壁をなでた指先に白い粉がついている

手で触ると白い粉がつく。多くは既存の塗膜が粉になったもので、チョーキングや白亜化と呼ばれます。国の仕様書でも、塗膜側の処置は「既存塗膜の劣化部の除去」という別の節にあり、下地の3系統とは分けて扱われています。

塗膜側の劣化と下地側の症状は並行して進むので、粉がついたから下地は無事だ、とは言えません。

訪問販売で「粉が出ているので早く塗らないと危ない」と言われることがあります。ただ、粉そのものは下地の状態を語りません。急ぐかどうかの材料になるのは、ひび割れの幅と数、欠けや破片の有無、漏水や錆汁の跡、叩いたときの音の違いのほうです。

既存の塗膜を落とす工法は4つある

仕様書は、既存塗膜の劣化部の除去と下地処理の工法として、サンダー工法、高圧水洗工法、塗膜はく離剤工法、水洗い工法を挙げ、どれを使うかは特記によるとしています。見積書に「ケレン」とだけあるときは、どの方法でどこまで落とすのかを聞いておくと、仕上がりの差の理由が分かります。洗浄の役割は高圧洗浄は何をしているのかで扱いました。粉が壁面全体に出ているのか、ひび割れの周りだけなのかも、伝えておくと話が早くなります。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

浮きは叩いて確かめる

テストハンマーで外壁を打診する調査員

浮きは、見ただけでは分かりません。仕様書は補修範囲について、テストハンマー等により、はく落のおそれがある浮き部を確認し、位置をチョーク等で明示する、と定めています。

叩いて音の違いを拾う工程が先にあり、そのうえで範囲が決まる。現地調査で壁を叩いていたかは、見積の前提が確かめられているかの目安になります。

目で見て回っただけで浮きの面積が出てきたら、その数字の出どころを聞いてみてください。調査までに自分でも見ておくと、話が具体的になります。

  • ひび割れの位置と本数(窓の四隅、開口部まわり、階の境目に集まりやすい)
  • 割れの幅の見当(髪の毛程度か、はっきり隙間が見えるか)
  • 欠けて落ちている場所、下に破片が落ちていないか
  • 雨のあとに濡れ跡が残る場所、室内側のシミ
  • 同じ位置を数か月おきに撮った写真

浮きを直す代表的な工法ではピンを使う

表に挙げた3系統のうち、代表がアンカーピンニングです。アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法では、本数は特記がなければ一般部分16本/㎡、見上げ面やひさしのはななどの指定部分は25本/㎡。注入量は1か所25mL、固定部の養生は夏期15時間、冬期24時間程度とされています。

ただし、この工法は穿孔を「構造体コンクリート中に30mm程度」行う前提です。コンクリート躯体に塗り付けたモルタルを前提にした規定と読めます。木造のラスモルタル外壁にそのまま当てはまりません。参考にできるのは、叩いて範囲を確かめてから処置するという考え方のほうです。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

ひび割れ部には3つの工法がある

モルタル外壁に走るひび割れ

ひび割れの手当てとして仕様書が挙げるのは、樹脂注入工法、Uカットシール材充填工法、シール工法の3つです。どれを使うかは特記による、つまり状態を見て決めるという建て付けです。

上から塗料を厚く塗って隠すという手当ては、この3つのどれでもありません。見積書に「ひび割れ補修一式」とだけあるなら、どの工法で何メートル分かを聞いておきたいところです。同じ壁でも、細い割れ(ヘアークラック)と動きのある割れでは手当てが分かれます。読み方は外壁のひび割れにまとめました。

漏水・浮き・錆汁があると話が変わる

仕様書には、ひび割れ部から漏水が見られる場合、周辺のモルタルに浮きが見られる場合、錆汁が出ている場合は、改修方法について事前に協議するという規定があります。表面だけの話で終わっていない合図として扱われている、ということです。実際にモルタルを撤去する場合は、ひび割れを中心に幅100mm程度を健全部分と縁を切ってはつり撤去するとされています。

コーキングで埋めるだけは、3工法のどれでもない

市販のシーリング材で割れを埋める作業は、手が届く高さならできます。ただ、自己判断で充填するだけでは、仕様書のシール工法と同じ処置になっているとは限りません。困るのは、漏水や錆汁の痕跡まで一緒に隠れることです。協議すべき状態かどうかを判断する材料が消えます。

自分でやるなら、幅と位置と本数を写真で記録するところまでに。壁面を全部塗るとなると、足場が要る高さ、放置期間の管理、下塗材から上塗材まで工程が分かれることが関わってきます。部分補修と全面塗装は、同じ延長線上にはありません。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

欠損部は充填か、塗替えか

欠けて落ちている部分に対して仕様書が挙げる工法は、充填工法とモルタル塗替え工法の2つです。前者は部分を埋める処置、後者はモルタルそのものを塗り直す処置になります。

このうちモルタル塗替え工法では、調合の標準がセメント1に対して砂2.5から3(容積比)、塗厚は25mm以下と示されています。欠損部の共通事項には、下地面はデッキブラシ等で水洗いを行い、接着を妨げるものを取り除く、とあります。埋める作業にも決められた手順がある。その点が、見積を読むときの支えになります。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

下地を直すと「待つ時間」が生まれる

補修したモルタルが乾くのを待つ外壁面

ここがモルタル外壁のいちばん大きな特徴かもしれません。補修したモルタルは、すぐに次の工程へ進めません。乾かして、収縮を落ち着かせる時間が要ります。

下地補修が入るときの工程と、放置期間の入る場所
下地補修が入るときの工程と、放置期間の入る場所

公共建築工事標準仕様書は、モルタル下地にひび割れがある場合、必要に応じてU字形にはつり、モルタル等で充填して14日程度放置するとしています。改修仕様書のモルタル塗替え工法にも、下塗り後に14日以上放置するという規定があります。工期を左右する要因のひとつが、この待ち時間です。

14日という数字は、別々の工程に出てくる

同じ14日でも、指しているものは違います。ひとつははつって充填したあとの放置。もうひとつはモルタル塗替えの下塗り後で、こちらは「ひび割れ等を十分発生させてから、次の塗付けを行う」ためとされています。先に割れさせてしまう、という発想です。

どちらにも、気象条件等により接着が確保できる場合は短縮できるというただし書きが付いています。2つは別々の工法に付いた規定で、両方が同じ現場で起きるとは限りません。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書 令和7年版」同「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

北海道では、その待ち時間が季節とぶつかる

晩秋の北海道の住宅街と足場のかかった家

14日の放置が工程に入ると、下地を直すだけで2週間単位の時間が動きます。塗る作業そのものは天気が続けば進みますが、放置期間は原則として見込んでおく前提の時間です。

北海道で塗装に向く月は限られます。補修の範囲によっては、動ける期間に工程が収まるかを先に確かめる必要が出てきます。秋に慌てて着工して、後半の塗り工程が寒い時期へ押し出されるのが避けたい形です。時期の考え方は北海道で外壁塗装ができる時期で扱いました。

適期は市町村で2か月ちがう

当サイトでは、気象庁の平年値をもとに市町村別の塗装カレンダーを自作しました。28市町村の月別の気温から、塗装に向く月・条件つきの月・向かない月を判定しています。

当サイトの判定条件では、適期の長さが町によって2か月ちがうという結果になりました。最も短いのが中標津町、名寄市、大空町、音更町の4か月。最も長いのが札幌市を含む16市町村の6か月です。自分の町の適期は市町村別 塗装カレンダーで確かめられます。

改修の仕様書は原則として気温5℃以下では施工しない

温度の制約は、塗る工程だけの話ではありません。改修工事の章には、気温が5℃以下の場合は施工を行わない、と書かれています。あわせて、施工中に降雨及び降雪にさらされないようにする、という規定もあります。原則を先に置いたうえで、例外の条件が続く形です。

やむを得ず施工する場合の条件も示されていて、板覆いやシート掛けを行うほか、ヒーター等で採暖するとされています。できないと決めつけるのではなく、条件を満たせば行うという書き方です。とはいえ、その手間は工事費と工程に返ってきます。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

塗り替えの工程は、下地を直す前と後で分かれる

一般的な工事の流れは、足場、洗浄、既存塗膜の処理、補修、放置期間、素地ごしらえ、仕上塗材、付帯部、足場解体という順です。このうち国の仕様書が順序を定めているのは既存塗膜の処理から仕上塗材までで、足場や付帯部は工事実務の話になります。

順番は書き手の解釈ではありません。仕上塗材塗りを扱う節に、モルタルの表面のひび割れ部、欠損部及び浮き部の処置は3節による、という一文があります。3節は、モルタルの改修を定めた節です。

出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

素地ごしらえは特記がなければB種

塗る直前の下ごしらえにも、決められた工程があります。公共建築工事標準仕様書のモルタル面の素地ごしらえは、乾燥、汚れ・付着物除去、吸込止め、穴埋め・パテかい、研磨紙ずりの順で、種別は特記がなければB種とされています。

ここで見ているのは新しく塗る面の表です。塗り替えのときに見る表(RA〜RC種)はケレンとはで扱っています。

目を引くのは吸込止めです。合成樹脂エマルションシーラーを全面に塗り付ける工程が入っています。モルタルは水を吸う材料なので、そのまま仕上げを塗ると吸い込みでむらが出る、という前提が読み取れます。

外部に使ってはいけないパテがある

穴埋めに使う材料も指定されています。JIS A 6916の建築用下地調整塗材か、合成樹脂エマルションパテ。ただし表の注記に、合成樹脂エマルションパテは、外部に用いないと書かれています。外壁で使えるのは前者です。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書 令和7年版」

仕上塗材はJIS A 6909から選ぶ

モルタル外壁に塗るのは、いわゆる塗料というより仕上塗材であることが多くなります。改修仕様書は、仕上塗材はJIS A 6909によるとしたうえで、下塗材、主材及び上塗材は同一製造所の製品とする、と定めています。理由までは書かれていませんが、規定として求められている点は見積書で確かめられます。

何を選べるかは、既存の仕上げの種類だけでは決まりません。厚付け(スタッコ)なら既存塗膜の処理量が増えやすく、下地の仕上げによっては防水形や可とう形が選べないこともある(後述)。下地の状態と既存塗膜の適合性まで見て決まります。

塗料と仕上塗材は、厚みの桁が違う

日本建築仕上材工業会は「塗料は塗り上がりの表面膜(1ミクロンは千分の1mm)程度の材料ですが、仕上塗材は数mm程度の比較的厚膜に施工される材料です」と説明しています。ミクロン単位の膜と、mm単位の層。あの凹凸模様を作っているのは仕上塗材のほうです。薄い塗料を上から塗れば色は変わりますが、模様に対して何ができるかは別の話になります。

出典:日本建築仕上材工業会「【材料一般】に関するQ&A」

「弾性塗料なら割れない」と決めない

ひび割れ対策として、弾性のある材料をすすめられることはよくあります。ただ、公共建築工事標準仕様書には、防水形複層塗材や可とう形の仕上塗材について、モルタル下地の仕上げを金ごてに限る、という表があります。はけ引きや木ごての面は対象外です。

読み違えやすいのは、ここで定められているのが製品の良し悪しではなく、その材料を使うときの下地の仕上げ方だという点です。既存の壁がどう仕上げられているかで、選べるものと選べないものが出てきます。

仕様書が限定しているのは「下地の仕上げ」

これは弾性系に限った話ではありませんが、同じ仕様書には、外部の仕上げ塗りは降雨や多湿等で結露のおそれがある場合と強風時には原則として行わない、という条文もあります。湿気を含んだ状態で膜を作らせない前提が、仕様の側にもあるわけです。

ただし仕様書は、弾性系がひび割れにどこまで追従するかについては述べていません。言えるのは「弾性ならどんな壁でも大丈夫」とは書かれていない、ということまでです。塗料の性能をどう比べるかは寒冷地に強い外壁塗料の選び方で整理しました。

なお、いま挙げた表は新築側の規定です。改修側でも、外壁用塗膜防水材を塗る場合について「モルタル下地の仕上げは、金ごてとする」とされています。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書 令和7年版」同「公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版」

壁の中に入った水は抜けているか

先ほどの共同研究には、もうひとつ重い指摘があります。乾燥収縮等によりモルタル層に幅0.2〜0.3mm以上のひび割れが発生した場合、雨水が浸入しやすくなり、この水が壁内に浸入すると下地材や躯体材が腐朽する危険性が高まる、というものです。

入った水が抜ける造りかどうかで、塗り替えの意味は変わります。とくに冬に凍結と融解を繰り返す地域では、壁の中に残った水がそのまま次の負荷になります。凍結融解は凍害とはにまとめました。

通気構法は全国で15.9%だった

同じ調査で構法の施工割合も集計されています。直張り構法が合計71.5%(うち平ラス35.9%)、通気構法は15.9%。報告は「乾式工法では、通気工法が一般化しているが、モルタル外壁では普及していない」と述べ、通気層は浸入した雨水を排出でき、結露対策にも有効だと指摘します。

ただし、この調査は住宅瑕疵担保履行法の完全施行の直前のもので、全国の集計です。この数字から自分の家がどちらかは分かりません。図面の仕上表や矩計図で確かめるしかない部分です。壁の中の水は壁の中の結露で扱いました。

軒の出には規定がある

同じ報告に、住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書からの抜粋が載っています。通気構法には軒・けらばの出の規定がなく、それ以外の構法では出30cm以上に加えて雨水の浸入を防止する有効な仕上げ、または出60cm以上。軒が短い家ほど壁に雨が当たるという発想が制度の側にもある、ということです。ただしこれは新築の仕様で、既存住宅の合否を決める基準ではありません。

出典:日本建築学会大会学術講演梗概集2010年9月「ラスモルタル外壁の設計・施工状況に関する調査 その2」国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」

塗装で足りない家をどう見きわめるか

判断は3段階で考えると整理しやすくなります。軽微な補修を足して塗る、本格的な下地補修を入れてから塗る、塗装以外の工事を検討する。主な分かれ目は、浮きの面積、ひび割れの幅と数、雨漏りの有無です。

同時に、悲観だけの材料ではありません。国の仕様書が並べている工法は、ひび割れに3つ、欠損に2つ、浮きに8つ。手当ての道筋が整理されている材料だ、という見方もできます。傷んだから終わり、という壁ではないわけです。

段階 目安になる状態 進め方
軽微な補修+塗装 白い粉が主で、叩いても音が変わらない 細い割れを補修し、洗浄と素地ごしらえのうえ塗り替える
下地補修+塗装 はっきりした割れ、欠け、叩くと音が変わる箇所 3系統の工法で直し、放置期間を置いてから塗る
塗装以外を検討 浮きが広い、雨漏りがある、下地の傷みが疑われる 原因と下地の健全性を調べたうえでカバー工法との選び分け

見積書で増えるのはどの行か

下地を直す工事が入ると、見積書は3か所で動くことがあります。補修の工法名と数量の行、放置期間しだいで変わる足場の設置期間、浮きの面積で変わるピンの本数です。読み方は見積書はどこを見るかに、総額の目安は費用相場費用シミュレーターにまとめました。

業者に確認したい6つのこと

現地調査で聞いておくと、あとの比較がしやすくなる質問があります。どれも専門用語を覚えなくても口に出せるものばかりです。答えが返ってこない、あるいは「一式で」としか言われない項目があれば、そこは見積条件の食い違いが生じやすい場所です。

その場で答えが出なくても、後日書面で返ってくれば、見積条件を突き合わせて比べられます。業者の探し方は外壁塗装はどこに頼むかに、市町村ごとの候補は外壁塗装業者一覧にまとめてあります。

  • 壁は叩いて確かめましたか。浮いている場所はどこで、面積はどのくらいですか
  • ひび割れは、どの工法で直しますか(樹脂注入/Uカットシール材充填/シール)
  • 補修のあと、乾かすためにどれくらい日数を見ていますか
  • 使う仕上塗材の製品名は何ですか。下塗材・主材・上塗材は同じメーカーですか
  • 既存の模様は、残しますか、変えますか
  • 壁の中に入った水は、どこから抜ける造りですか(通気層はありますか)

契約する前なら、無料で見てもらえる窓口がある

住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター)には、リフォームの見積書を建築士の相談員に見てもらえる無料のサービスがあります。ただし使えるのは契約前のみ。回答は電話のみで最長60分、予約は登録から最短14日後です。相見積もりを取ると決めた段階で登録しておくと、順番がかみ合います。

出典:住まいるダイヤル「リフォームの見積書に関する相談」

よくある質問

検索で多い疑問のうち、年数と費用については公的な裏づけを確認できませんでした。「モルタルの寿命は30年」「塗り替えは10年ごと」といった数字は業者の記事によく出てきますが、根拠にあたる公的な資料は見つかっていません。

ここでは答えられる範囲を先に示し、数字を出せないものについては、代わりに何を見ればよいかを書いています。判断の材料が手元に増えれば、業者から返ってきた説明のほうも比べやすくなるはずです。

モルタル外壁にペンキを塗るとどうなりますか

色は変わります。ただ、凹凸模様を作っているのは仕上塗材のほうです。ひび割れ・欠損・浮きを上から塗って隠すことは、国の仕様書が挙げる処置には入っていません。

モルタル外壁の塗装はいくらかかりますか

金額は下地補修の量で動くため、症状を見ないと出せません。下地に手を入れない前提の目安は費用シミュレーターで立てられます。

モルタル外壁は何年くらい持ちますか

年数の目安に公的な裏づけは見つかりませんでした。代わりに見るのは、ひび割れの幅と数、叩いたときの音の変化、欠けの有無です。考え方は編集方針と検証の手順に書いています。

ひび割れを放置するとどうなりますか

この記事の前半で引用した学会報告では、幅0.2〜0.3mm以上になると雨水が浸入しやすくなり、壁の中の下地材や躯体材が腐朽する危険性が高まるとされています。表面だけの問題では終わりません。

コケや汚れは自分で落としてよいですか

方法によります。外壁材ごとに向き不向きがあるので、外壁のコケ・藻・カビの手順を確かめてから始めてください。高い場所には手を出さないように。

モルタルの上からタイルや塗り壁にできますか

できるともできないとも言い切れません。浮きの有無と、材料が増えることによる重さの変化を先に確かめる必要があり、塗装とは別の工事です。

まとめ

モルタル外壁で先に決めるのは、塗料ではなく症状の仕分けでした。ひび割れ・欠損・浮きの3つで手当てが変わり、白い粉は塗膜側の別の話です。浮きは見ただけでは分からないので、叩いて範囲を確かめてもらうところが出発点になります。

下地を直すと、14日程度から14日以上の待ち時間が生まれます。北海道では適期が最短4か月の町もあり、この時間が季節とぶつかる。次にやることを挙げるなら、市町村別 塗装カレンダーで自分の町の適期を見ることです。

記事の内容に誤りの指摘や、専門家としての監修のご相談があれば、お問い合わせからお知らせください。当サイトは工事の依頼や見積もりは受け付けていません。

板を張る窯業系サイディングの場合は、窯業系サイディングの塗り替えで扱っています。

モルタルの上に張ったタイルの手当ては、外壁タイルのメンテナンスにまとめました。

掲載した数値は参考値であり、結果を保証するものではありません。引用した国の仕様書は公共建築物を対象としたもので、戸建ての契約仕様を定めるものではありません。実際の判断は、現地を見た専門家の診断にもとづいて行ってください。

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