最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月9日編集方針と検証の手順
塗り替えの見積もりに、標準の塗料より数十万円高い「断熱塗料」のプランが並んでいた。営業の説明は「夏は涼しく、冬は暖かく、光熱費も下がります」。
本当なら魅力的ですが、その根拠を確かめた人は多くありません。断熱塗料と遮熱塗料は、名前が似ているだけで仕組みも確かめ方も違います。
そして効果の一部は大学の実測で確認されている一方、確認されていない部分も、はっきりあります。
使う材料は、JIS規格の有無、大学の実測レポート、行政処分になった表示の例です。いずれも読者が自分で確かめられる資料だけで、断熱塗料・遮熱塗料の効果がどこまで期待できるかを整理します。
なお、当サイトは工事の依頼や見積もりを受け付けていません。掲載する金額や数値は出典時点の参考値です。
結論:夏の「遮熱」と冬の「断熱」を分けて考える

効果の話は、夏と冬に分けたとたんに見通しがよくなります。要点は次のとおりです。
- 夏の遮熱(日射の反射)には、JIS規格と大学の実測データがあります。屋根の表面温度が下がることは確かめられています
- 冬の暖房費の削減を裏づける実測結果は確認できませんでした。「冬暖かい」を理由に差額を払うのは勧めません
- 北海道の家計に占める光熱費は暖房が主役です。冷房向けの遮熱が効く余地は、本州より小さくなります
- この記事は「規格」「実測」「広告表示の読み方」の3点で検証します。製品の宣伝や紹介はしません
この記事で扱わないこと
迷っている段階で読んでも大丈夫です。順番に確かめれば、提案書を自分の目で評価できるようになります。
断熱塗料と遮熱塗料は仕組みが違う

遮熱と断熱は、働きかける熱の経路が違う別物です。熱の伝わり方は伝導・対流・放射の3つに分けられ、「遮熱」と「断熱」はこのうち別の経路の話になります。
遮熱塗料は、太陽光に含まれる近赤外線を反射して、塗った面の温度上昇を抑える塗料です。日本塗料工業会は「太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射することにより、塗膜ならびに被塗物の温度上昇を抑えることができる機能性塗料」と説明しています。
いっぽう断熱塗料と呼ばれる製品は、塗膜の中の中空ビーズやセラミック粒子で熱の伝わりを遅らせるとうたうものが中心です。魔法瓶のように熱を閉じ込める、という説明がよく使われます。
反射(入る熱を減らす)と断熱(伝わる熱を遅らせる)は別の働きで、確かめ方も別になります。実際の製品には両方をうたうものもありますが、その場合も検証の軸は同じです。
この区別がつくと、広告の文句を「どちらの働きの話か」で仕分けできます。読みながら、手元の提案書がどちらをうたっているか確かめてみてください。
出典:日本塗料工業会「高日射反射率塗料について」(2011年7月)
遮熱塗料にはJISの規格がある

遮熱には国の規格があります。JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」です。
適用範囲は「建築物の屋根及び屋上の塗装に用いる」塗料と定められています。
規格の中身は具体的です。色の明るさ(明度L*)ごとに、近赤外線の反射率の基準が次のように決まっています。
| 塗膜の明るさ(明度L*) | 近赤外線の反射率の基準 |
|---|---|
| 40以下(濃い色) | 40%以上 |
| 40超〜80未満(中間色) | 明度の値以上 |
| 80以上(明るい色) | 80%以上 |
種類は水系の1種と溶剤系の2種に分かれ、耐候性の等級も定められています。規格の定義には「日射反射率保持率その他の品質が一定の水準で保証される」とあり、塗りたての性能だけでなく、反射率がどれだけ保たれるかまで見ている規格です。
つまり遮熱塗料は、規格適合という共通の物差しで比べられます。カタログに「JIS K 5675適合」とあれば、反射性能は共通の試験基準を満たしていると読めます(第三者機関の認証制度とは別の話です)。
注意したいのは、この規格が対象にしているのは屋根・屋上だという点です。外壁への遮熱塗装は規格の適用範囲の外になります。
外壁用として売られる遮熱塗料は、メーカーが独自に反射率を示している製品が中心です。屋根用と同じ物差しでは測れないことを頭に置いて、数値の試験条件を確かめてください。
出典:JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」規格本文
断熱塗料には規格がない
断熱のほうには、共通の物差しがありません。塗料の断熱性能を定めたJIS規格は、確認できる範囲で存在しません。
JIS K 5675が規定するのはあくまで日射の反射率で、断熱性は対象外です。
「断熱塗料」という呼び名は、各メーカーが自社の基準で名乗っている状態です。性能の共通の物差しがないため、広告の数値だけでは製品どうしを横並びで比べにくく、第三者の基準で確かめることもできません。
規格がない=効果がない、ではありません。メーカーが独自の試験データを公開している場合は、その試験条件を読み解けば判断の材料になります。
ただ、規格のある遮熱と規格のない断熱では、買う側が確かめられる材料の量がまったく違います。数十万円の差額を判断する場面で、この差は小さくないはずです。
夏の効果は実測で確認されている

夏の遮熱効果には、大学によるまとまった実測レポートがあります。工学院大学の研究室が日本ペイントの依頼で行った調査(2009年公表)で、愛知県内の工場敷地にある事務所棟と実験棟を使った実測です。
対象は遮熱(高日射反射率)塗料です。断熱をうたう塗料の実測ではない点に気をつけて読んでください。
結果の骨子は表のとおりです。
| 測定対象 | 夏の結果 |
|---|---|
| 事務所棟の屋根表面 | 塗装前は60℃まで上昇。塗装後は約11℃低下 |
| 実験棟の屋根表面 | 遮熱塗装の棟が約4〜5℃低い |
| 実験棟の室内温度 | 冷房なしの日で約2〜3℃低い。冷房ありでは1〜2℃低く推移 |
屋根から天井裏へ入る熱の流れ(天井面の熱流量)も、実験棟の比較では日中で約半分に減ったと報告されています。この建物と条件の実測に限れば、夏の効果は数字で裏づけられています。
興味深いのは色の条件です。実験棟は一般塗料も遮熱塗料も同じベージュ系で、日中の反射率は遮熱側が約7ポイント高いだけでした。
それでも、表に示した差が出ています。
ここで気をつけたいのは、大きく下がるのは屋根の表面温度で、室温の低下はそれよりずっと小さいことです。「表面が11℃下がった」と「部屋が11℃涼しくなる」は、まったく別の話になります。
また、この実測の対象は屋根面です。外壁に塗った場合の効果は、この調査からは読み取れません。
出典:工学院大学「太陽熱高反射塗料の遮熱性能調査報告書」(日本ペイント受託研究・2009年3月)
「約7%の省エネ」の中身
よく引かれる「約7%の省エネ」は、実験棟での夏の冷房電力の削減率です。出どころは日本塗料工業会の資料です。
業界団体の研究会が長屋型の実験棟で検証した結果として「約7%の省エネ効果が確認され」たと記載されています。
ただしこの7%は、夏の空調(冷房)に使う電力の削減率です。家全体の年間光熱費が7%下がるという意味ではありません。
冷房をあまり使わない家なら、削減できる母数そのものが小さくなります。かりに夏の冷房の電気代が数千円なら、その7%は数百円の話です。
数字を見たら「何の7%か」を確かめる。これだけで宣伝の読み方が大きく変わります。
出典:日本塗料工業会「高日射反射率塗料について」(2011年7月)
冬の暖房への効果は確認できない

冬の暖房費の削減は、同じ実測では確認できませんでした。工学院大学の調査が冬も実測したのは、反射率の高い塗膜が冬の日射熱まで跳ね返し、暖房の負担が増える心配があったからです。
実験棟の冬の比較では、屋根表面温度にも室内温度にも大きな違いは見られませんでした。事務所棟では暖房の電力まで測っています。
結論はこうです。「年間を通じた効果としては、冬期の暖房負荷の増加はほとんど見られず、夏期の空調負荷削減効果がほぼそのまま現れる結果となった」。
月別では、塗装後の暖房電力が12月に6.0%増え、1月はほぼ増減なし、気温の高かった2月は20.7%減っています。月ごとの増減は気象条件に左右されるため、単月の数字より「冬はプラスにもマイナスにもほとんど働かなかった」という年間の結論で読むのが妥当です。
裏返すと、「冬暖かくなる」「暖房費が下がる」を裏づける結果は、この調査からは出てきません。しかも実測地は愛知県で、北海道の冬はこれより長く厳しい条件です。
北海道での結果はこの調査からは分かりません。ただ、愛知で確認できなかった暖房への効果を、より条件の厳しい北海道で期待する根拠も、ここからは得られません。
冬を売り文句にした提案ほど、根拠の提示を求めてください。
なお、この報告書は日本ペイントの受託研究です。それでも測定の条件と数値がそのまま公開されているため、条件ごと引用できる資料として扱っています。
出典:工学院大学「太陽熱高反射塗料の遮熱性能調査報告書」(日本ペイント受託研究・2009年3月)
塗膜の厚さと断熱材の厚さは桁が違う
冬の効果が出にくい理由は、厚さを比べると腑に落ちます。外壁塗装の塗膜は、乾いた状態で1ミリに満たない厚さになるのが一般的とされています。
いっぽう北海道の住宅で使う断熱材は、壁の中に数センチから十数センチの厚さで入ります。グラスウールや発泡プラスチック系の断熱材は、素材の中に動かない空気を大量に抱えることで熱の伝わりを遅らせます。
熱の伝わりにくさは、材料の熱の伝えにくさ(熱伝導率)と厚さの両方で決まります。コンマ数ミリの膜に、十センチ級の断熱材と同じ仕事は期待できません。
もうひとつ付け加えると、断熱の仕様にもよりますが、窓まわりの熱の出入りは大きくなりがちとされています。壁の表面を1枚の膜で覆う前に、点検すべき場所があるわけです。
塗料は断熱材の代わりにならない。この一点を押さえておくだけで、過大な期待を避けられます。
北海道の光熱費は暖房が主役

北海道の戸建ての光熱費は、暖房の燃料が主役です。遮熱塗料が減らせるのは、このうち夏の冷房分だけになります。
データで確かめます。北海道消費者協会の調査(令和2年度)では、道内の戸建て世帯が1年間に使う灯油は平均1,481リットルでした。
全世帯平均でも1,417リットルで、集合住宅の592リットルと比べると戸建ての多さが目立ちます。
札幌市の分析でも、全国平均に比べて札幌市や北海道は暖房・給湯によるCO2排出量が多いとまとめられています。暖房分は戸建てが集合住宅の2.5倍を超えるという比較も示されました。
北海道では冷房を使う期間が本州より短くなりがちで、遮熱で光熱費全体を動かせる余地がもともと小さいと見込めます。ここが、本州向けの解説記事をそのまま読めない理由です。
もちろん、近年は北海道でも夏の暑い日が増え、冷房を入れる家庭もあります。夏の快適さに価値を感じるなら、遮熱への出費は無駄ではありません。
分かれ目は「何にお金を払うか」をはっきりさせることです。
出典:北海道消費者協会「令和2年度 北海道家庭用エネルギー消費実態調査報告書」/札幌市「家庭部門のCO2排出実態統計調査の結果分析」
「室温が下がる」表示が処分された例がある
効果の数字は、行政処分の対象になったこともあります。平成27年12月、消費者庁は株式会社ダスキンに対し、景品表示法にもとづく措置命令を出しました。
対象は「遮熱・UVカットタイプ」とする窓用フィルムの施工サービスです。チラシなどに「室温の上昇を抑える!最大−5.4℃※空調効率アップ!」と表示していました。
景品表示法には、表示の裏づけとなる資料の提出を事業者に求める仕組みがあります。ダスキンは資料を出しましたが、「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった」と判断されました。
措置命令は再発防止などを命じる行政処分で、事業者名と表示の内容が公表されます。公表資料は誰でも読めるため、営業トークの数字を確かめる材料になります。
塗料そのものの処分例ではありません。それでも、合理的な根拠を示せないまま効果の数字を表示すると、景品表示法上の問題になりうることを示した例です。
大手企業でも根拠を示せなかった種類の数字を、見積もりの席の口頭説明で断言されたら。その時点で一歩引いて考えるのが安全です。
出典:公正取引委員会「株式会社ダスキンに対する景品表示法に基づく措置命令について」(平成27年12月11日)
広告の数字を読む3つの注意
ここまでの材料を使うと、宣伝の数字は次の3点で仕分けできます。

- 表面温度か、室温か。「−10℃」の多くは表面温度の話です。実測でも室温の低下は2〜3℃程度でした
- 試験の条件はどこか。夏か冬か、本州か寒冷地か、実際の家か小さな試験体か。条件が自宅と違えば、そのまま当てはまりません
- 何の削減率か。「7%削減」が冷房電力の話なら、暖房中心の家計への影響はわずかです
カタログの隅にある試験条件の注記まで読むと、この3点はたいてい書いてあります。逆に、条件の注記が見当たらない数字は、それだけで扱いを慎重にしてよいサインです。
たとえば「電気代が30%下がった」という体験談型の広告には、3つの注意を順に当てます。何の電気代か、どの季節か、どんな建物か。
答えが見つからなければ、その数字は判断材料にできません。
第三者の実証データを探す方法もあります。環境省の環境技術実証事業では、遮熱フィルムや高反射率の屋根材といった空調負荷を減らす技術が実証を受け、結果の報告書が公開されています。
3つの注意はどれも、業者に質問すれば答えられるはずの項目です。答えの根拠資料が出てくるかどうかで、提案の信頼度も測れます。
出典:環境省 環境技術実証事業「ヒートアイランド対策技術分野 実証済み技術一覧」
結露・防音など「その他の効果」の考え方
結露防止・防音・不燃といった「その他の効果」は、裏づけとなる試験データを本記事で確認した資料からは見つけられませんでした。解説記事に並びがちな項目ですが、根拠の提示はまれです。
不燃・防火をうたう製品では、何の認定を・どの製品が受けているのかまで確かめてください。認定の名前だけでは、効果の中身は分かりません。
音を減らす仕事には、材料の重さや隙間をふさぐ気密が要るとされています。コンマ数ミリの塗膜が担える範囲は、理屈のうえでも限られます。
前の章の3つの注意を当てはめると、条件も削減率も示されない「効果の名前だけ」が並んでいる状態です。期待するのは自由ですが、差額を払う理由には足りないと考えるのが安全です。
結露や音の悩みそのものは実在します。悩みが本物だからこそ、効き目を確かめられない対策にお金を使わないことが大切です。
なお北海道の結露は、壁の中の水分や換気が絡む建物側のテーマです。塗料の膜で解決する話ではないため、壁の中の結露の記事で分けて扱っています。
検討してよい場面・見送ってよい場面

ここまでを判断表にまとめます。まず、3つの手段の性格の違いを並べます。

| 遮熱塗料 | 断熱をうたう塗料 | 断熱材の工事 | |
|---|---|---|---|
| 仕組み | 近赤外線の反射 | 塗膜で熱の伝わりを遅らせるとされる | 厚い層で熱の伝わりを遅らせる |
| 規格・基準 | JIS K 5675(屋根用) | 共通規格なし | 断熱材のJISと補助制度の基準あり |
| 効く季節 | 夏(実測あり) | 冬の裏づけは確認できず | 通年(仕様による) |
| 北海道での妥当性 | 夏の暑さ対策として限定的に | 差額の根拠を確かめてから | 寒さ対策の中心 |
次に、目的から逆に引く表です。製品からではなく、目的から選んでください。
| 目的 | 手段の妥当性 |
|---|---|
| 夏の2階の暑さを和らげたい | 屋根への遮熱塗装は検討の余地あり(JIS適合品・実測データあり) |
| 冬の暖房費を下げたい | 塗料では根拠が確認できない。窓や断熱材の工事が検討の中心 |
| 結露・防音を改善したい | 塗料側の裏づけデータは確認できず。建物側の対策を先に |
| 塗り替え時期が来ただけ | 標準グレードも十分な選択肢。機能性の差額は目的があるときだけ |
たとえば「無落雪屋根の金属面が夏に熱く、2階が寝苦しい」なら、屋根の遮熱塗装を選択肢に入れる理由があります。JIS適合品を指定し、明るめの色を選べば、規格と実測に裏づけられた範囲の効果を見込めます。
屋根がもともと塗り替え時期なら、仕様変更の差額が小さく済む場合もあります。ただし塗料や下塗りの変更を伴うため、差額は見積もりで確かめてください。
ただし、その場合も効果の中心はあくまで夏です。冬の光熱費への期待は差し引いて考えてください。
反対に「灯油代を減らしたい」が動機なら、塗料では根拠を示せません。目的がはっきりしないなら、差額を払わない選択が基本線になります。
迷ったら、表の左の列だけを業者に伝えて提案を受け直す方法もあります。目的を先に固定すると、手段の比較が一気に楽になります。
費用差と耐用年数をどう考えるか
断熱・遮熱をうたう塗料は、標準的なシリコン塗料より材料費が高くなるのが一般的とされています。耐用年数はメーカー公称値で幅があり、公的な統一基準はありません。
比べ方はシンプルです。総額を耐用年数で割った「1年あたりの費用」を、標準グレードと並べてください。
このとき、耐用年数は業者の口頭説明ではなくカタログの公称値でそろえます。楽観的な年数で割ると、高い塗料ほど安く見えてしまうからです。
同じ会社に「標準グレード案」と「機能性塗料案」の2案を出してもらうと、差額がはっきりします。差額に見合う効果の根拠が示せないなら、この割り算が判断の軸になります。
もうひとつ、公称の耐用年数と保証は別物です。何年もつという説明ではなく、書面の保証年数と保証範囲を確かめてください。
保証の読み方は保証とアフター点検の記事にまとめています。
見積書の見方や相見積もりの進め方は見積書チェックの記事にまとめています。金額はいずれも参考値として扱ってください。
断熱が目的なら順番がある

冬の寒さと暖房費が本当の目的なら、建物側の対策を優先順位をつけて考えます。一般には窓、壁・天井の断熱材、設備の順で検討されることが多いとされています。
国の補助制度も、この順番を裏づけています。断熱改修を支援するみらいエコ住宅2026事業では、外壁・屋根・天井・床の改修についてJISに該当する断熱材を最低使用量以上使う工事を補助の対象と定めています。
対象はあくまで断熱材で、塗料はこの基準に当てはまりません。「断熱塗料で補助金が使える」という営業トークを聞いたら、対象製品の基準を見せてもらってください。
外側から断熱材を足す工事の中身は外張り断熱の記事で整理しています。窓の改修と組み合わせる考え方も、そちらで読めます。
塗り替え自体が不要という話ではありません。外壁を守る塗装は塗装として、断熱は断熱の工事として計画してください。
財布は同じでも、工事の性格は別物です。
塗り替えの時期に壁を触るなら、断熱改修と足場を共有できる場合もあります。
工事に向く季節は市町村で差があります。当サイトが気象庁の平年値から作った市町村別の塗装カレンダーで、お住まいの適期を確かめてください。
出典:みらいエコ住宅2026事業「躯体の断熱改修(リフォーム)」
業者に確認したい質問
断熱塗料・遮熱塗料の提案を受けたら、次の4点を聞いてみてください。
- 効果の根拠資料はありますか(カタログの数値の出典まで)
- その試験はどんな条件ですか(季節・地域・実物の家か試験体か)
- 効果が出なかった場合の保証はありますか(書面の有無)
- 標準グレードとの差額はいくらですか(耐用年数の差も書面で)
4つの質問は、業者を試すためのものではありません。誠実な会社なら資料を出して条件を説明できますし、その過程で提案の中身も具体的になります。
口頭の説明だけで済ませず、根拠と差額は書面でもらってください。あとで「言った・言わない」になったとき、手元に残るのは書面だけです。
根拠が出てこないときは、「効果を確かめられないので、標準の塗料で見積もり直してください」と伝えれば十分です。
答えをはぐらかす相手なら、その1社で決めないことが何よりの防御になります。業者選び全体の進め方は業者の選び方の記事が参考になります。
「今日契約すれば割引」とセットで断熱塗料を勧める訪問販売の型があります。その場で契約せず、複数社の見積もりを取ってから決めてください(困ったときは消費者ホットライン188へ)。
よくある質問
断熱塗料は本当に効果がありますか?
夏の遮熱(表面温度の低下)は大学の実測で確認されています。いっぽう冬の暖房費の削減は、実測でも裏づけが得られていません。
「夏の暑さ対策」と「冬の断熱」を分けて判断するのが答えになります。
規格の有無も判断材料になります。遮熱にはJIS規格があり、断熱をうたう性能には規格がありません。
遮熱塗料は冬に不利になりませんか?
工学院大学の実測では、冬の暖房電力は12月にわずかに増え、1月はほぼ増減なしでした。冬に大きく損をする結果は出ていません。
夏の削減効果がほぼそのまま年間の効果になる、と報告書は整理しています。ただし北海道の冬での実測ではないため、期待も心配も、この結果の範囲で読んでください。
断熱塗料の効果はどのくらい持続しますか?
持続年数を定めた公的基準はなく、メーカー公称値に幅があります。費用差と合わせて「1年あたりの費用」で標準グレードと比べる方法を、費用差と耐用年数の章にまとめています。
断熱塗料で補助金は使えますか?
国のみらいエコ住宅2026事業(断熱改修)では、JISに該当する断熱材を使う工事が対象で、塗料はこの基準に当てはまりません。市町村の制度は年度ごとに変わるため、補助金の記事の探し方でお住まいの制度を確認してください。
色で効果は変わりますか?
変わります。JIS K 5675の反射率基準は色の明るさ(明度)ごとに定められていて、明るい色ほど基準値が高くなります。
同じ製品でも、濃い色を選ぶと反射の効果は小さくなります。色選びの全般は色の選び方の記事も参考にしてください。
断熱塗料は内壁にも塗れますか?
室内用をうたう製品もありますが、この記事で確かめた規格と実測はどちらも屋根を対象にした話です。内装は建材や換気の影響が大きく、別枠での検討になります。
DIYで塗れますか?
2階建ての外壁や屋根は足場と安全対策が要るため、DIYは勧めません。手の届く範囲の考え方はDIYの記事で線引きしています。
まとめ
断熱塗料・遮熱塗料の効果で確かめられているのは、夏の遮熱までです。実測では屋根の表面温度が下がり、冷房の電力も減りました。
ここには規格も実測もあります。
冬の暖房費への効果は、本記事で確認した範囲の実測からは裏づけが得られません。暖房が主役の北海道で「冬暖かい」を理由に差額を払うのは、根拠の面で勧められません。
寒さが目的なら、窓と断熱材の工事を先に検討してください。塗り替えは塗り替えとして、外壁を守る本来の目的で計画すれば十分です。
提案を受けている最中の人は、業者に確認したい質問の4点をそのまま使ってください。根拠・条件・保証・差額の答えがそろえば、どちらに転んでも納得して決められます。
記事の内容に誤りの指摘や、専門家としての監修のご相談があれば、お問い合わせからお知らせください。
本記事の金額・数値は各出典の時点の参考値で、効果や費用を保証するものではありません。実測データは特定の建物・条件での結果であり、すべての住宅に同じ結果を約束するものではありません。工事の要否や仕様は、現地を確認した施工業者と相談のうえ判断してください。

