最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月24日編集方針と検証の手順
屋根の色があせてきた。端が少しめくれている。
赤い点が出はじめた家もあります。どれも「そろそろ屋根に手を入れませんか」と言われるきっかけになる症状ですが、打つ手はそれぞれ違います。
分かれ目は築年数ではありません。錆がどの段階まで来ているかと、その下の下地まで水が回っているかの2つで決まります。
材料の仕様はJISで規定されているので、まずそこから順に並べました。数値は規格と公的資料から引いています。
当サイトは記事を書くだけで、工事も見積もりも受けていません。
トタン屋根とは亜鉛めっきをした鋼板

トタンは屋根の形の名前ではなく、材料の名前です。日本産業規格ではJIS G 3302「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」として規定されていて、鋼の板に溶かした亜鉛でめっきをかけたものを指します。
覚えておきたいのは傷む順番です。先に亜鉛のめっきが減り、めっきが尽きたところから下の鋼が錆びます。
この順番が、色あせから穴あきまでの見え方も、塗って戻せるのか替えることになるのかも決めています。屋根の形や葺き方の話は、そのあとに来ます。
この記事で扱わないこと
重なるテーマは既存の記事に譲ります。屋根材ごとに塗装できるかどうかの判定と、金属屋根の下ごしらえの中身は屋根は塗れる材質かにまとめました。
無落雪屋根の3つの方式と、屋根材がほとんど金属である理由は無落雪屋根は塗装できる?が担当しています。雪下ろしの事故と業者に頼む判断は屋根の雪処理、外壁側の金属の話は金属サイディングの塗装にあります。
ここではトタンという材料の側から、錆の段階と、そこから決まるメンテナンスと工事の分かれ目だけを追います。工法ごとの進め方や塗料の選び方は既存の記事が担当です。
めっきが先に減り、鋼が後から錆びる
亜鉛は鋼より先に反応する金属です。傷がついて鋼が露出しても、周りの亜鉛が先に溶けることで鋼の錆が広がりにくくなります。
この働きがあるあいだは、多少の擦り傷では赤い錆になりません。亜鉛が減ってしまうと、その守りがなくなります。
住宅用のトタンには、めっきの上から塗装をしたものが多く使われています。塗膜、亜鉛めっき、鋼板の三層で守っている、と考えると傷みの順番が読みやすくなります。
塗り替えで戻せるのは、表面の塗膜の保護です。錆が出はじめた段階では、下地処理しだいで塗装が届くかどうかが変わります。
なお規格が定めているのは材料の仕様までで、この傷み方の順番は当サイトが材料の構成から整理したものです。
出典:日本規格協会「JIS G 3302:2022 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」
トタンとガルバリウムはめっきが違う

ガルバリウム鋼板も鋼の板にめっきをかけたものですが、めっきの中身が違います。規格はJIS G 3321「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」で、トタンとは別の番号がついた別の規格です。

制定年にも開きがあります。JIS G 3302の制定は1951年、JIS G 3321の制定は1998年で、47年の差があります。
築年数の古い家の屋根がトタンであることの背景のひとつですが、材料が広まった時期と規格の制定年は同じではありません。
規格の名前と制定年を並べる
2つを並べると、違いは名前ではなくめっきの成分にあると分かります。
| トタン | ガルバリウム鋼板 | |
|---|---|---|
| 規格番号 | JIS G 3302 | JIS G 3321 |
| 規格名 | 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯 | 溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯 |
| めっきの成分 | 亜鉛 | アルミニウムと亜鉛の合金 |
| 制定 | 1951年 | 1998年 |
| 直近の改正 | 2022年 | 2022年 |
どちらの規格も、板や鋼帯に加えて、別の規格(JIS G 3316)の形状・寸法に加工した波板までを対象にしています。売り場で「波トタン」と呼ばれるものも規格の対象です。
見た目では決めきれない
塗装された状態では、表面を見ただけでどちらのめっきかを言い当てるのは難しくなります。色や葺き方はどちらでも似た仕上がりになるためです。
手がかりになるのは書類です。新築時やリフォーム時の仕上表、図面、見積書に材料名や規格番号が書かれていることがあります。
書類が残っていない場合は、現地調査に来た業者に材料名を聞いて、答えを書面に残してもらってください。この一手間が、後の工事の選択肢を決めます。
出典:日本規格協会「JIS G 3302:2022 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」/日本規格協会「JIS G 3321:2022 溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」
トタン屋根の葺き方は主に3種類ある

同じ材料でも、屋根の上での納まりは1種類ではありません。屋根で見かけるのは瓦棒葺き、波板、折板の3つが中心で、ほかに立平ぶきや横葺きもあります。
葺き方が変わると、水の流れ方と板の留め方が変わります。傷みが最初に出る場所も、葺き方ごとに違います。
自分の屋根がどれに近いかの見当をつけておくと、業者の説明が追いやすくなります。ここでは、地面から見上げたときに何を手がかりにすればよいのかを先に押さえておきます。
縦に線が走るなら瓦棒か立平
屋根を下から見上げて、軒先から棟に向かって細い凸の線が等間隔で走っていれば、瓦棒葺きか立平ぶきです。瓦棒は線の中に心木が入っている納まりで、立平は心木を使わない納まりを指します。
線が横方向に何段も走っていれば横葺きで、トタンは横葺きにも使われます。うねった波が並んでいれば波板、折板は山と谷が大きく、住宅より車庫や倉庫で多く見かけます。
見分けがつかないときは、撮っておいた写真を見せれば現地調査のときに教えてもらえます。
留め方で雨の入口が変わる
金属の屋根は、板の重ねと留め具の部分が水の入口になりやすい場所です。釘やビスで板の表面を留める納まりでは、その穴のまわりが弱点になります。
北方建築総合研究所ほかがまとめた資料は、M形屋根の立ち上げ部について板金表面への釘打ちは極力避けて、吊り子留め等の方法を採用するとしています。板を貫かない留め方のほうが、穴からの浸入を避けやすいという考え方です。
雨漏りの入口と室内のしみの位置が一致しない理由は雨漏りの原因の調べ方にまとめました。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
北海道の屋根に金属が使われてきた背景

北方建築総合研究所ほかの資料には、M形屋根の断面図とあわせて屋根ふき材の仕様が示されています。挙げられているのは0.35mm以上の塗装溶融亜鉛めっき鋼板(立平ぶき)です。
その下に防水紙のアスファルトルーフィング940と、下張り合板12mmが重なります。
雪を落とさない屋根の例として公的資料が挙げている屋根ふき材が、この薄い鋼板だということになります。示せるのはこの対応関係までで、金属が広まった経緯そのものを書いた資料は見つかりませんでした。
公的資料が示す仕様
同じ資料には横樋の数値もあります。材料は0.4mm以上の塗装溶融亜鉛めっき鋼板で、資料の言葉では「といの勾配は2/100以上」とされています。
あわせて、立ち上げ部の防水紙を破れないように保護すること、板の端を折り返して継ぐハゼ倒しを適切に行いシーリングすることが並んでいます。
小屋裏換気についても、積層プラスチック換気部材等を使って適切に行うようにと書かれています。屋根は板1枚ではなく、下地と換気を含めた組み合わせで水と湿気を処理している、という前提が読み取れます。
これらはM形屋根の例として示された仕様です。すべての屋根の基準ではない点には注意してください。
M形屋根は30年以上前から普及
同資料は、無落雪屋根でいちばん普及しているものとして、屋根の中央部に横樋と縦樋を持つM形屋根を挙げ、30年以上前から普及しているとしています。
3つの方式の違いそのものは無落雪屋根は塗装できる?で扱っています。
薄い鋼板だから載る重さが小さい
0.35mmという数字が示すとおり、屋根に載っているのは薄い板です。瓦のように厚みと重さのある材料と比べると、軽量なぶん建物に載る重さは小さくなります。
ただしこれは載る重さの話であって、建物の耐震性能そのものの話ではありません。壁の量や接合部、基礎の状態で決まる部分が大きいためです。
「軽い屋根だから地震に強い」とは読まないほうが安全です。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
トタン屋根の錆は段階を追って進む

劣化は、色あせ、白い粉、点の錆、面の錆、めくれや浮き、穴と下地の腐りという順で進むのが基本です。ただし傷の原因や当たる条件で前後することもあります。

ここは症状を見分ける章で、どの工事を選ぶかは次の章に置きます。
段階で見るほうが、年数で見るより判断を誤りません。同じ築年数でも、雪の当たる面と当たらない面、樋が詰まっている家とそうでない家では、進み方がまるで違うためです。
見え方の名前を先にそろえておくと、業者の説明と自分が見ているものを突き合わせやすくなります。
色あせと白い粉は2つに分かれる
手でこすったときに白い粉がつく症状は、原因が2つに分かれます。ひとつは塗膜が痩せて出るチョーキングで、もうひとつは亜鉛めっきそのものが反応して出る白錆です。
見た目が似ていても意味は違います。前者は外側の塗膜の話ですが、後者であればその下の亜鉛が減りはじめている可能性があります。
同じ「白い粉」でひとくくりにせず、現地調査のときにどちらなのかを聞いてください。外壁側の金属で錆の段階をどう見分けるかは金属サイディングの塗装にまとめてあります。
段階ごとに打つ手が変わる
段階と、とりうる手当ての対応は次のとおりです。あくまで目安で、実際は現地の状態で決まります。
| 段階 | 見え方 | 塗る | 部分直し | 重ねる | 替える |
|---|---|---|---|---|---|
| 色あせ | つやが落ちる | ○ | − | − | − |
| 白い粉 | こすると粉がつく | ○ | − | − | − |
| 点の錆 | 赤い点が散る | ○(下地処理しだい) | ○ | − | − |
| 面の錆 | 錆が広がってつながる | △ | ○ | ○ | ○ |
| めくれ・浮き | 端や継ぎ目が持ち上がる | − | ○ | ○ | ○ |
| 穴・下地の腐り | 穴が開く、踏むとたわむ | − | − | △ | ○ |
上の3段階までは塗装で保護を戻せます。ここがこの材料のメリットです。
面の錆から下は、塗装だけで対応できるとは限りません。表の△は、現地を見て決まるという意味です。
穴と下地の腐りは屋根材だけの話ではない
穴が開いている状態は、水が屋根材の下へ入っている可能性が高いということです。防水紙が受け止めているうちは室内に出てきませんが、その防水紙も年数とともに傷みます。
野地板まで水が回ると、板が黒く変わったり、踏んだときにたわんだりします。ここまで来ると、屋根材を新しくするだけでは終わりません。
天井にしみが出ていなくても、下地まで進んでいることはあります。
北方建築総合研究所ほかの資料が屋根ふき材として挙げているのも0.35mm以上の板で、穴が開けば下の防水紙と合板が水を受けます。判定は現地調査に任せ、こちらは症状の写真をそろえておけば足ります。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
塗る・重ねる・替えるを分ける下地

工事を分けるいちばん大きい判断材料は、屋根材の錆の程度ではなく、その下の野地板と防水紙まで傷んでいるかどうかです。前の章で見た症状は、ここへつなぐための手がかりでした。
ただし決まり手はそれだけではありません。錆がどこまで広がっているか、屋根の形はどうか、端部の納まりはどうかも判断に入ります。
錆をどこまで落とすかの区分は、ケレンとはで整理しています。
1つの条件で機械的に決まる話ではない、と考えておいてください。ここでは3つの工事が屋根のどこまで触るのかを並べたうえで、下地が効いてくる理由と、部分直しの位置づけを整理します。
3つの工事は屋根のどこまで触るか
塗装は、表面の塗膜をつくり直す工事です。カバー工法(重ね葺き)は既存の屋根材を残したまま上に新しい屋根材を葺き、葺き替えは既存の屋根材を剥がして下地から作り直します。
3つの選択肢に加えて、傷んだ範囲だけを板ごと入れ替える部分直しという修理もあります。
1枚単位で替えられるかどうかは葺き方と留め方で決まり、周りの錆が面まで進んでいる屋根では、直したところだけが新しくなって終わります。
どれを選ぶかで足場の要否や工期、施工の手間が変わります。屋根と外壁をまとめて考えるときの足場の扱いは屋根と外壁は同時に塗るべき?にあります。
下地が傷んでいると重ねられない
カバー工法は既存の屋根材を交換せず上に新しい材料を載せるので、その下の野地板が新しい屋根材と留め具を支えられることが前提になります。野地板が水を吸って柔らかくなっていれば、上に載せても留まりません。
だからといって「下地が生きていれば重ねられる」と決まるわけでもありません。屋根の形が複雑で納まりが増える場合や、既存の屋根材の変形が大きい場合は、剥がして作り直すほうが結果的に確実なこともあります。
下地が屋根の一部であることは、資料の断面にも表れています。M形屋根の断面には、屋根ふき材の下にアスファルトルーフィング940と下張り合板12mmが重なる構成が示されています。
判断のためには下地を見る必要があります。見えない部分を見ずに工法だけ先に決めないというのが、この材料で最も効く原則です。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
穴とめくれをコーキングでふさがない
穴やめくれをコーキングや補修テープでふさいでも、ふさげるのは水の入口の見た目だけです。検索で多い手当てで、ホームセンターで材料が手に入るので真っ先に思いつきますが、結果は変わりません。
すでに下地に回った水は止まりませんし、次の工事のときにその補修を剥がす手間も増えます。北方建築総合研究所ほかの資料が守るように書いているのも立ち上げ部の防水紙で、板の表面をふさぐことではありません。
当サイトでは、この方法を恒久的な補修としてはお勧めしていません。一時的な養生と傷みを直すことの違い、そして屋根に上らないほうがよい理由を続けて書きます。
応急処置と補修は別のもの
台風や暴風雪のあとに板がめくれ、雨が入りそうな状態になることがあります。この場面で一時的に養生することと、傷みを直すことは別の工事です。
一時しのぎの養生は、あくまで業者が来るまでの時間を稼ぐためのものです。養生したことで安心して先延ばしにすると、そのあいだに下地が傷みます。
時期を逃したときにできることは北海道で塗装の時期を逃したらにまとめました。
屋根に上って確かめない
穴の位置を確かめようとして屋根に上るのは、この記事でいちばん避けてほしい行動です。金属の屋根は濡れていると滑りやすく、傾斜がゆるく見えても足元は安定しません。
雪が残る時期はなおさらで、屋根の上でできることと危険は釣り合いません。
どこまでを自分でやってよいかの線引きは外壁塗装のDIYはどこまで可能かで扱っています。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
M形屋根は樋の詰まりが実害になる

北方建築総合研究所ほかの資料は、M形屋根の注意事項として縦樋に落ち葉やゴミが詰まると漏水しやすいことを挙げています。そのうえで、毎年冬に入る前に屋根の上にのぼって掃除や点検をすることが重要だと書いています。
M形屋根で先に手当てしたいのはこの部分です。屋根材の錆より先に、詰まりが実害になることがあります。
M形屋根の冬前点検そのものは屋根の雪処理が担当なので、ここでは材料側の確認に絞ります。横樋の板厚と勾配をどう使うかも、同じ資料から読み取れます。
縦樋が詰まると水が行き場を失う
M形屋根は屋根の中央に横樋と縦樋を持ち、雪と水をそこに集めて流します。集めた水の出口が詰まれば、水は屋根の上にとどまり、継ぎ目やシーリングの弱いところから中へ入ります。
点検そのものは資料の言うとおり必要ですが、掃除は自分でやろうとしないでください。資料が示している作業は屋根の上での作業であり、雪の前後は特に危険です。
板金業者に依頼するか、点検とあわせて頼むのが現実的です。どこに頼むかの考え方は外壁塗装はどこに頼む?にまとめました。
横樋の数値は見積書で確かめる
資料が横樋の板厚と勾配まで数値で示しているのは、集めた水を流し切るためだと読めます。詰まりを防ぐ設計が、材料と勾配の両方で決まっているということです。
見積書や図面にこれらの数字が書かれていれば、どの水準で作られているのかを読み取れます。書かれていなければ、聞いて書き足してもらってください。
雪庇(屋根の端に張り出す雪のかたまり)のできやすい向きや雪下ろしの危険については屋根の雪処理にまとめてあります。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
トタン屋根を塗れる気温の線引き
国土交通省の公共建築工事標準仕様書は、塗装について気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わないとしています。
この仕様書が定めているのは公共建築工事で、戸建ての契約を縛るものではありません。ただし塗料が乾く条件そのものは建物の種類で変わらないため、北海道で工事の時期が限られる背景として読めます。
金属の屋根は外気に合わせて温度が下がりやすく、朝に結露が残ることもあります。ここでは5℃という線の意味と、雪解けから逆算した段取りを見ます。
5℃という線がどこから来るのか
塗料は塗ったあとに水分や溶剤が抜けて固まります。気温が低いとこの過程が進みにくく、湿度が高ければなおさら時間がかかります。
仕様書の条件に結露が並んでいるのは、朝夕に屋根の表面が濡れる状況を避けるためだと読めます。塗る面が濡れていれば、気温が5℃を上回っていてもその日は塗れません。
冬が難しい理由の全体像は北海道で外壁塗装ができる時期はいつ?にまとめました。
雪が解けてから逆算して段取りする
工事ができる期間には幅があります。当サイトが気象庁の平年値から作った市町村別 塗装カレンダーでは、月平均の日最低気温が5℃を上回る月を数えると、道内でも4か月から6か月まで開きがありました。
期間が限られるぶん、動き出しが早いほど依頼先と工期を選べます。雪が解けてから見積もりを取り始めると、着工が先送りになることもあります。
冬のあいだに写真とメモをそろえておき、雪が消えたら現地調査を頼む。この順にすると、限られた期間を使い切れます。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
屋根に上らずにできる確認の手順

確かめるのは、地面から見える錆の広がり、樋の詰まり、屋根の端のめくれの3つです。写真とメモにしておけば、複数の会社に同じ条件で見てもらえます。
写真が1枚あるだけで、電話の段階の話が具体的になります。同じ材料を渡せば、各社の見立ての違いもそのまま比べられます。
見立てが分かれたときに、その理由を聞く手がかりにもなります。屋根に上る必要はありませんし、脚立にも乗らず、地面から見上げて撮れる範囲で足ります。
地面から撮る3枚の写真
撮っておきたいのは次の3枚です。
- 家の全景。屋根の形と葺き方の向きが分かる位置から
- 錆が目立つ面の寄り。どのあたりに、どのくらい広がっているか
- 軒先と樋の口。落ち葉や土が詰まっていないか
撮るのは雪が積もる前がよく、資料も冬に入る前の点検を重要だとしています。
点検を頼むときの言い方
頼むときは、写真を見せたうえで「錆がどの段階か」「下地まで水が回っていそうか」を聞いてください。この2つが分かれば、塗る・重ねる・替えるのどれに向かうかが見えてきます。
その場で契約を求められても、返事は保留にして構いません。訪問してきた業者への断り方とクーリング・オフの扱いは外壁塗装の訪問販売にまとめてあります。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
見積書でトタン屋根を確かめる項目
見積書で見るのは、下地をどう扱うか、板をどう留めるか、板厚はいくつかの3つです。この3つが書かれていない見積書は、金額だけを比べても中身が比べられません。
北方建築総合研究所ほかの資料が板金表面への釘打ちを極力避けて吊り子留め等を採用するとしているように、留め方は書面で確かめられる項目です。
見積書のどこを見るかの総論は外壁塗装の見積書はどこを見る?にまとめました。ここではトタン屋根に限って、聞けば答えが返るはずの項目を挙げます。
下地をどうするかが書かれているか
同じ「カバー工法」でも、下地をどう扱うかで中身は変わります。既存の屋根材の上に直接葺くのか、下地を増し張りしてから葺くのかで、工事の量が違うためです。
葺き替えでも、野地板を張り替えるのか、既存を残して防水紙から新しくするのかで金額は動きます。この行が「一式」で済まされていると、工事の範囲と追加の条件を確かめにくくなります。
留め方と板厚を数字で見る
聞くのは2つです。
- 板をどう留めるか(板金表面への釘打ちを避ける納まりになっているか)
- 使う板厚は何mmか(横樋を含めて)
数字で答えが返ってくるか、書面に書き足してもらえるかが、そのまま比べる材料になります。答えが口頭だけで終わるなら、書面でもらえるかどうかを確かめてください。
当サイトは工事の依頼や見積もりを受け付けていません。記事の誤りのご指摘や、専門家としての監修のご相談はお問い合わせからお願いします。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
トタン屋根でよく聞かれる質問と答え
よく聞かれるのが「何年もつか」ですが、年数を示した公的資料は見つかりませんでした。ここでは年数の代わりに、錆がどの段階か、下地まで来ているかで答えます。
数字を出せない質問は、出せない理由まで書きます。規格が定めているのは材料の仕様であって、屋根としてもつ年数ではないためです。
取り替えを考えている方にも、まだ様子を見たい方にも判断の材料になる順に並べました。それぞれの答えの根拠は、本文の各章に置いてあります。
トタン屋根は何年もちますか
年数の目安を示した公的資料は見当たりませんでした。規格が定めているのは材料の仕様で、屋根としてもつ年数ではありません。
年数で決めず、この記事の6段階のどこにいるかで見てください。
錆びていても塗装できますか
点の錆が散っている段階までなら、下地処理しだいで塗装が届きます。面でつながって広がっている状態や、めくれ・穴が出ている状態では、塗装だけでは戻りません。
判定は現地調査で行うものです。屋根材ごとの塗装可否の考え方は屋根は塗れる材質かにあります。
穴は補修材でふさげますか
見た目はふさげますが、下地に回った水は止まりません。次の工事でその補修を剥がす手間も増えます。
一時的な養生と、傷みを直すことは別だと考えてください。
ガルバリウムに替えたほうがいいですか
めっきの成分が違う別の材料ですが、替えれば解決すると決まるわけではありません。屋根が傷む原因が下地や樋の詰まりにある場合、材料を替えても同じことが起きます。
まず錆の段階と下地の状態を確かめてから、選択肢として比べてください。
屋根を替えると家は暖かくなりますか
屋根材の種類そのものより、天井や屋根の断熱、気密、そして小屋裏の換気がそれぞれ効いてきます。北方建築総合研究所ほかの資料にも、換気部材を使った適切な小屋裏換気が挙げられています。
屋根の工事にあわせて断熱や換気を見直せるかを、業者に聞いてみてください。
雨音は塗り替えで静かになりますか
塗膜は薄いので、雨音が大きく変わるとは考えにくい部分です。音の伝わり方には屋根の下地や天井の作りも関わります。
自分で塗ってもよいですか
屋根の上での作業になるため、当サイトでは勧めていません。金属の屋根は濡れると滑りやすく、傾斜がゆるく見えても危険です。
地面から届く範囲の確認と写真までにしてください。
冬に見つけた傷みは春まで待てますか
塗装は、気温と湿度の条件を満たさなければ行えません。板がめくれて水が入っている状態であれば、待つ前に一時的な養生を業者へ相談してください。
出典:北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」
まとめ|錆の段階と下地で判断する
トタンはJIS G 3302に規定された、鋼の板に亜鉛のめっきをかけた材料でした。先にめっきが減り、尽きたところから鋼が錆びます。
判断は築年数ではなく、錆がどの段階かで見ます。塗る・重ねる・替えるを分けるいちばん大きい材料は、その下の野地板と防水紙が生きているかどうかでした。
次にやるとすれば、地面から3枚の写真を撮り、樋の詰まりをメモにして、複数の会社に現地調査を頼むことです。工事のできる期間は限られるので、冬のあいだにそろえておくと選ぶ時間が残ります。
棟に換気の部材を載せる話は、換気棟とは?北海道で必要かどうかは屋根の形と断熱の位置で決まるにまとめています。
掲載した内容は参考であり、結果を保証するものではありません。引用した国の仕様書は公共建築工事に適用されるもので、戸建ての契約仕様を定めるものではありません。
板厚や勾配の数値は、引用元がM形屋根の例として示した仕様です。
実際の判断は、現地を見た専門家の診断にもとづいて行ってください。

