最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月5日編集方針と検証の手順
「うちは3回塗りです」と言われた。他社も3回塗りだと言う。ではどこが違うのか。そもそも、本当に3回塗っているかどうかを、どうやって確かめればいいのか。
塗り回数は、外壁塗装でいちばん比べにくい部分です。塗ってしまえば、何回塗ったかは外から見えません。だから「3回塗り」という言葉だけが独り歩きします。
この記事では、国土交通省の公共建築工事標準仕様書に書かれている工程の種別と塗付け量をもとに、回数の意味と、量をどう確かめるかを整理します。
なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。掲載する内容は一般的な整理で、実際の判断は現地の確認によります。
結論:回数より「量」を見る
先に要点を示します。
- 「3回塗り」は下塗り1回+中塗り1回+上塗り1回を指すのが一般的です
- 国の仕様書には工程ごとの塗付け量が定められています
- 薄めて塗れば回数は同じでも膜の厚みは出ません
- 使った塗料の量は、缶の数で確かめられます
回数は約束しやすく、確認しにくい項目です。量に置き換えて話すと、確かめられるものになります。缶の数と面積は、どちらも数えられる数字だからです。
この記事で扱わないこと
- 見積書全体の読み方 … 見積書はどこを見る?
- 工事全体の流れと工期 … 工事の流れと工期
- 塗料の種類の選び方 … 寒冷地に向く塗料
- 洗浄と下ごしらえ … 高圧洗浄で何をしているか
「3回塗り」の中身

まず、3回が何を指しているのかを整理します。呼び方は業者によって多少ずれますが、構成は共通しています。
下塗り
下塗りは、下地と上の塗料をつなぐ層です。シーラーやプライマーと呼ばれます。
役目は接着だけではありません。下地が塗料を吸い込むのを抑える、下地の色を止めるといった働きもあります。仕上げの色とは違う色をしていることが多く、白や透明のことがあります。
中塗り
中塗りは、仕上げの塗料を1回目に塗る工程です。この層で、必要な厚みの半分を作ります。
下塗りの上に塗るため、下塗りが乾いていることが前提になります。乾ききらないうちに重ねると、下の層を引っ張って不具合が出ます。工程のあいだに時間があくのは、待つ必要があるからです。
上塗り
上塗りは、仕上げの塗料を2回目に塗る工程です。中塗りと同じ塗料を使うのが一般的です。
「中塗りと上塗りが同じ塗料なら、1回でいいのでは」と思われるかもしれません。1回で厚く塗ると、たれる、乾きむらが出る、均一にならないといった問題が起きます。2回に分けるのは、そのためです。
3つの層の役目
3回それぞれの役目を整理します。
| 工程 | 役目 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 下塗り | 下地との接着、吸い込み止め | 白や透明のことが多い |
| 中塗り | 厚みをつくる | 仕上げの色になる |
| 上塗り | 厚みを足し、表面を整える | 中塗りと同じ色 |
下塗りだけ色が違うのは、塗ったかどうかが分かるようにするためでもあります。工事中に外壁の色が一度変わったら、それが下塗りです。
逆に言えば、下塗りの色が仕上げと同じであれば、外から工程を追うのは難しくなります。だから写真という記録が意味を持ちます。
下塗りは下地に合わせて選ぶ
下塗り材は、どの下地にも同じものを使うわけではありません。モルタル、窯業系サイディング、金属、木部でそれぞれ違います。
また、下地が傷んで吸い込みが強い場合と、前回の塗膜が生きている場合でも選ぶものが変わります。見積書に下塗り材の製品名が書かれているかを見てください。「下塗り」とだけ書かれていれば、何を使うのかを聞く理由になります。
国の仕様書はどうなっているか

公共建築工事標準仕様書には、塗装の工程が種別ごとに定められています。

A種とB種がある
合成樹脂エマルションペイント塗りの工程は、次のように定められています。特記がなければB種とされています。
| 工程 | A種 | B種 | 塗付け量(kg/㎡) |
|---|---|---|---|
| 素地ごしらえ | ○ | ○ | ─ |
| 下塗り | ○ | ○ | 0.07 |
| 中塗り(1回目) | ○ | ○ | 0.10 |
| 研磨紙ずり | ○ | ─ | ─ |
| 中塗り(2回目) | ○ | ─ | 0.10 |
| 上塗り | ○ | ○ | 0.10 |
B種は下塗り1回+中塗り1回+上塗り1回=3回です。A種は中塗りが2回入るため、塗る回数は4回になります。
つや有合成樹脂エマルションペイント塗りも同じ構成で、塗付け量の数値も同じです。「3回塗り」という言い方は、仕様書のB種と同じ構成だと考えると分かりやすくなります。
数字の意味
表にある0.07や0.10という数値が、1平方メートルあたりに塗る塗料の量です。単位はキログラムです。
同仕様書は塗付け量について「平らな面に実際に付着させる塗料の標準量(一工程当たり)とする。ただし、塗料の標準量は、薄める前のものとする」と定めています。薄める前の量である、という点が重要です。
住宅にそのまま当てはまるわけではない
この仕様書は公共建築物を対象としたものです。戸建住宅の外壁塗装で使う塗料が、同じ規格の製品とはかぎりません。数値をそのまま自宅に当てはめることはできません。
それでも、工程ごとに量が決まっているという考え方は共通です。塗料メーカーも、製品ごとに標準の使用量を公表しているのが一般的です。
見積書に製品名が書かれていれば、その製品の資料を自分で調べられます。標準の使用量、塗り重ねの間隔、適用できる下地といった情報が公表されています。これが、面積と使用量を突き合わせるときの基準になります。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
回数が同じでも中身は変わる

ここからが本題です。
薄めれば量は減る
塗料は、そのままの状態で使うのが基本です。仕様書も「塗料は、調合された塗料をそのまま使用する」としたうえで、「素地面の粗密、吸収性の大小、気温の高低等に応じて、適切な粘度に調整することができる」と定めています。
つまり、状況に応じた調整は認められているが、無制限ではないということです。薄めすぎれば、塗った回数が同じでも、付着する量は減ります。
膜の厚みが性能を決める
塗膜は、厚みがあってはじめて水と紫外線を防ぎます。薄い膜は、早く切れます。
塗った直後は、薄くても厚くても同じように見えます。違いが出るのは数年後です。ここが、この工程が比べにくい理由です。
だから量で話す
「何回塗るか」だけを聞くと、答えはどこも同じになります。「何缶使うか」を聞けば、話が具体的になります。
塗料の缶には内容量が書かれています。使った缶の数が分かれば、面積で割って1平方メートルあたりの量が出ます。
もっとも、缶の数を数えたところで、施主が良し悪しを判定できるわけではありません。意味があるのは、確かめられる形で記録が残ることです。記録が残ると分かっていれば、工程の進み方は変わります。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
使った量を確かめる方法

仕様書には、量を確かめる考え方も書かれています。

使用量から推定する
同仕様書は、錆止め塗料塗りの品質確認について「工事現場塗装の場合は、使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定する」としています。
これは錆止め塗料についての規定ですが、使った量から塗付け量を確かめるという考え方そのものは、他の工程にも応用できます。
空き缶を残してもらう
もっとも簡単な方法は、使い終わった缶を工事の終わりまで残しておいてもらうことです。
缶には、製品名、内容量、製造所が書かれています。見積書に書かれた塗料と、実際に使われた塗料が同じかどうかも、これで確かめられます。
「缶を残しておいてください」と最初に伝えておけば、それだけで済みます。断られる理由が思いつかない依頼です。
面積で割ってみる
見積書に外壁の面積が書かれていれば、計算できます。
- 使った塗料の総量を出す(缶の数×内容量)
- 塗った面積で割る
- 工程数で割る
出てきた数字を、塗料メーカーが公表している標準使用量と比べます。大きく下回っていれば、確認する理由になります。
ただし、実際には塗り残しの補修や道具に付く分もあり、計算どおりにはなりません。桁が違うほどの差があるかどうかという見方をしてください。
また、下地の状態によって吸い込む量が変わります。傷んだ下地ほど、下塗りの量は増えます。だから「標準使用量を下回っている=手抜き」と即断はできません。数字は、話を始めるための材料と考えてください。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
色を変えると分かる

もうひとつ、仕様書に書かれている確認方法があります。
中塗りと上塗りの色を変える
同仕様書は「中塗り及び上塗りの各層の色を変えること等により、中塗り及び上塗りが全面に均一に塗られていることを確認する」と定めています。
同じ色を2回塗ると、2回目を塗ったかどうかが分かりません。色を変えれば、塗り残しが目で見えます。
この規定が仕様書に置かれていること自体が、塗り回数は見ただけでは分からないという前提を示しています。確認の方法が必要だからこそ、わざわざ定められているわけです。
住宅でも頼めるか
住宅の外壁塗装でも、この方法をとっている業者はあります。ただし仕上げの色に影響しないよう、わずかに色味を変えるといった配慮が要ります。
頼めるかどうかは業者によります。「中塗りと上塗りが分かるようにできますか」と聞いてみる価値はあります。できない場合でも、中塗り後の写真を残してもらう方法があります。
写真で残す
各工程が終わった時点で写真を撮ってもらうのが、いちばん現実的な方法です。
- 洗浄後 … 下地の状態
- 下地補修後 … 補修した箇所
- 下塗り後 … 色が違うので分かりやすい
- 中塗り後 … 仕上げの色になる
- 上塗り後 … 完成
撮る場所を決めておくと、比べやすくなります。同じ位置から撮った写真が並んでいれば、工程が追えます。
撮影を頼むのは、工事が始まってからでは遅いことがあります。契約のときに伝えておいてください。あとから頼むと、すでに終わった工程は撮れません。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
塗り重ねの間隔

回数だけでなく、間隔も工程の一部です。
間隔は材料と気象で決まる
同仕様書は「各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める」としています。
さらに「標準工程間隔時間を超えて、上に塗り重ねる場合は、適切な処理を行う」とも定めています。早すぎても遅すぎても、そのままでは塗り重ねられないということです。
1日で3回塗ると言われたら
下塗りから上塗りまでを1日で終える工程には、無理がある場合があります。それぞれの層が乾く時間が要るためです。
塗料と気象条件によっては、1日で複数の工程を進められることもあります。一律に否定するものではありませんが、根拠は聞いてよいところです。
間があきすぎた場合
雨で工事が中断し、下塗りから何日も空くことがあります。この場合も、そのまま塗り重ねられるとはかぎりません。
仕様書が「適切な処理を行う」としているのは、こうした場合を想定したものです。中断があったときに何をしたかを聞いておいてください。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
北海道で気をつけたいこと

寒冷地では、工程の進み方に制約が加わります。
気温と湿度の条件
同仕様書は「気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない。ただし、採暖、換気等を適切に行う場合は、この限りでない」と定めています。
条件を満たさない日は塗らない、というのが原則です。ただし、採暖や換気で条件を整えられる場合は例外とされています。住宅の外壁でそれが現実的かどうかは、場面によります。
雨と風
同仕様書は「外部の塗装は、降雨のおそれのある場合又は強風時は、原則として、行わない」ともしています。
北海道では、春と秋に天候が変わりやすい時期があります。工程が予定どおりに進まないことを前提に、工期を組む必要があります。時期の考え方は北海道で外壁塗装ができる時期にまとめています。
日が短い時期
秋が深まると、日が短くなります。作業できる時間が減れば、1日に進められる面積も減ります。
「急いで仕上げます」という話になった場合、何をどう急ぐのかを確認してください。工程を省いて日数を縮めるのであれば、それは急ぐこととは別の話です。
逆に、シーズンの終わりに近い時期の工事では、途中で条件を満たさなくなり、翌春に持ち越す判断もありえます。中途半端に塗って冬を越すより、そのほうが結果的に良い場合があります。判断は現場によりますが、選択肢として頭に入れておいてください。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
仕上塗材は考え方が違う
外壁の仕上げには、塗料ではなく仕上塗材を使う場合もあります。
所要量という書き方
公共建築工事標準仕様書は、建築用仕上塗材について種類ごとに所要量(kg/㎡)と塗り回数を定めています。
たとえば外装薄塗材Eを吹付けで施工する場合、下塗材は0.1kg/㎡以上で1回、主材は1.0kg/㎡以上で2回と定められています。工法によって数値が変わり、ローラー塗りやこて塗りでは別の値が示されています。
「以上」と書かれている
塗料の塗付け量が0.10という数値であるのに対し、仕上塗材の所要量は「1.0以上」のように下限として書かれています。
これは仕上げの模様によって必要な量が変わるためです。同じ材料でも、仕上げの形状で使う量が違うということです。
自宅がどちらか
外壁が塗料仕上げなのか仕上塗材仕上げなのかは、表面の模様で見当がつきます。平らならば塗料、砂壁のような粒感や凹凸があれば仕上塗材の可能性があります。
外壁材と仕上げの組み合わせは外壁材と塗料の組み合わせで扱っています。
仕上塗材の所要量の例
仕上塗材については、種類と工法ごとに数値が定められています。外装薄塗材Eを例にとります。
| 工法・仕上げ | 材料 | 所要量(kg/㎡) | 塗り回数 |
|---|---|---|---|
| 吹付け(砂壁状・ゆず肌状) | 下塗材 | 0.1以上 | 1 |
| 同上 | 主材 | 1.0以上 | 2 |
| こて塗り・ローラー塗り | 下塗材 | 0.1以上 | 1 |
| 同上 | 主材 | 0.6以上 | 1〜2 |
| 吹付け(着色骨材砂壁状) | 主材 | 1.5以上 | 2 |
同じ材料でも、工法と仕上げの形状で必要な量が2倍以上変わります。吹付けのほうが多く必要になるのは、仕上げの模様をつくるためです。
防水形はさらに層が増える
防水形外装薄塗材Eでは、下塗材と主材のあいだに増塗材という層が入ります。仕様書では、ローラー塗りの場合に下塗材0.1以上(1回)、増塗材0.5以上(1回)、主材基層0.7以上(1〜2回)、主材模様0.2以上(1回)と定められています。
つまり「何回塗るか」は材料の種類によって前提が違うということです。塗料の3回塗りと仕上塗材の工程を、同じものとして比べることはできません。
出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
見積書での見方
塗り回数と量は、見積書の書き方で確認できます。
- 工程が分かれているか … 下塗り・中塗り・上塗りが行として立っているか
- 塗料名 … 各工程で何を使うか
- 面積 … 平方メートルで書かれているか
- 単価 … 面積あたりいくらか
- 使用量 … 書かれていれば確認しやすい
- 付帯部 … 壁と別に計上されているか
1番目が基本です。「外壁塗装 3回塗り 一式」だけでは、確かめる手がかりがありません。
面積の数字を見る
外壁の面積は、見積書によって差が出ることがあります。窓の開口部を引いているか、引いていないかで数字が変わるためです。
複数の見積もりを比べるときは、面積の数字がそろっているかをまず見てください。面積が違えば、単価を比べても意味がありません。
塗料名は正確に書かれているか
「シリコン塗料」「フッ素塗料」といった書き方だけでは、どの製品か分かりません。製造所名と製品名が書かれているかを見てください。
製品名が分かれば、メーカーが公表している標準使用量や仕様が確認できます。比べる材料が手に入るということです。見積書の読み方は見積書はどこを見る?にまとめています。
面積の出し方
塗料の量を考えるとき、基準になるのが面積です。ここがずれると、あとの数字がすべてずれます。
延床面積からの概算は目安にすぎない
「延床面積に係数をかけて外壁面積を出す」という考え方があります。手早く見当をつけるには使えますが、家の形によって実際とは差が出ます。
凹凸が多い家、総二階の家、平屋では、同じ延床面積でも外壁の面積は変わります。概算で出した数字を、そのまま契約の根拠にはできません。
実測してもらう
正確な数字は、現地で測って出すものです。見積もりのときに実際に測っているかどうかを見てください。
数分見て回っただけで金額が出てくる場合、面積は概算の可能性があります。それが悪いとはかぎりませんが、根拠は聞いておくほうが確実です。
開口部の扱いをそろえる
窓やドアの部分は塗りません。この分を差し引くかどうかで、面積は変わります。差し引かない計算方法もあり、その場合は単価が調整されるのが一般的です。
複数社を比べるときは、どちらの方法で出した数字かを確認してください。面積が違う見積もりの単価だけを比べても、意味のある比較になりません。
付帯部は別に数える
雨どい、破風、軒天、水切りといった部分は、壁とは別に数えます。長さで数えるもの、面積で数えるものが混ざります。
付帯部が「一式」でまとめられている見積もりでは、どこまで含まれるかが分かりません。塗る部位の一覧を出してもらってください。付帯部の扱いは付帯部の塗装にまとめています。
工事中に見るところ

毎日立ち会う必要はありませんが、要所は見ておく価値があります。
- 缶が開けられているか … 現場に空き缶があるか
- 色が変わったか … 下塗りと仕上げは色が違います
- 工程の日付 … いつ何を塗ったか
- 塗り残し … 隅、下端、裏側
- 付帯部 … 雨どい、破風、軒天
これらは足場に上がらなくても、地上から見える範囲で確認できます。作業を止めて質問する必要はなく、通りかかったときに見るだけで十分です。
4番目は完成後にも確認できます。隅や下端は塗りにくい部分で、差が出やすいところです。地上から見上げるだけでも、上端の処理や軒天との取り合いは確認できます。
足場には上がらない
確認のために足場へ上がるのは避けてください。足場は作業者のために組まれたもので、施主が上がることを前提としていません。
気になる箇所があれば、その場所を撮ってもらうよう頼んでください。撮影を頼むこと自体は、無理な依頼ではありません。
約束のしかたを変える
「3回塗ります」という約束は、守られたかどうかを後から確かめられません。確かめられる形に変えておくのが、いちばん確実な対策です。
契約書と見積書に書いてもらう
次の項目が書面にあれば、話がずれたときに戻る場所ができます。
- 各工程で使う塗料の製造所名と製品名
- 塗る面積
- 工程の数と順序
- 希釈の扱い(製造所の仕様による、など)
- 工程ごとの写真を提出すること
- 使用した缶を工事完了まで保管すること
6項目すべてを求める必要はありません。1・2・5だけでも、確認の材料はそろいます。
言い方を工夫する
「疑っているわけではないが、記録として残したい」と伝えれば、角が立ちません。実際、記録は施主のためだけのものではありません。あとで不具合が出たときに、業者側の説明の材料にもなります。
記録を残すことに難色を示される場合は、その理由を聞いてください。理由が説明されるかどうかが、判断の材料になります。業者の選び方は外壁塗装業者の選び方にまとめています。
完成後に受け取るもの
工事が終わったら、工程写真、使用した材料の一覧、保証書を受け取ってください。次に塗り替えるときの出発点になります。
保証の読み方は塗装の保証とアフター点検で扱っています。
よくある質問
4回塗りのほうがよいのですか
回数が多いほどよい、とはかぎりません。下地の状態と塗料の仕様によって、必要な工程は変わります。回数を増やすより、決められた量が入っているかのほうが重要です。
下塗りを2回すると言われました
下地の吸い込みが強い場合、下塗りを重ねることがあります。なぜ必要なのかを聞いてください。理由が説明されるなら、妥当な提案でありえます。
塗料が余ったらどうなりますか
未開封の缶が残った場合の扱いは、契約によります。持ち帰るのが一般的です。ただし、余ったということは見積もりより使わなかったということでもあります。理由を聞いておいてください。
1回塗りで済む工事はありますか
部分的な補修や、特定の材料では工程が異なることがあります。外壁全体の塗り替えとしては、下塗りを含めて複数回が一般的です。
希釈はしてはいけないのですか
してはいけないわけではありません。仕様書も、素地や気温に応じた粘度の調整を認めています。問題になるのは、必要な量が付着しなくなるほど薄める場合です。製造所が定める希釈の範囲があるかを聞いてください。
下塗りの色が仕上げに影響しませんか
下塗りの上に中塗り・上塗りが乗るため、通常は影響しません。ただし薄い色に仕上げる場合、下の色が透けることがあります。色の決め方は外壁の色の選び方で扱っています。
缶を残してほしいと言うのは失礼ですか
失礼にはあたりません。記録を残すという意味で、業者にとっても不利にはならない依頼です。最初に伝えておけば、当日の手間も増えません。
塗った量が足りているか、あとから分かりますか
塗り終わったあとに膜の厚みを測るのは、住宅では現実的ではありません。だからこそ、工事中の記録が意味を持ちます。缶の数と工程写真を残してもらってください。
まとめ
「3回塗り」は、下塗り1回+中塗り1回+上塗り1回を指すのが一般的です。国の仕様書でも、これに相当する構成が標準として定められています。
ただし回数は、どの業者も同じことを言います。違いが出るのは、1回あたりにどれだけの量を塗るかです。仕様書が工程ごとに塗付け量を定めているのは、そこが性能を決めるからです。
薄めて塗れば、回数は同じでも膜は薄くなります。塗った直後は見分けがつきません。数年後に差が出ます。
だから、缶を残してもらい、工程ごとの写真を撮ってもらってください。どちらも工事の前に一言伝えておけば済むことで、断られる理由のない依頼です。
そして、見積書に塗料の製品名と面積が書かれているかを先に確かめてください。この2つがそろっていれば、あとから量を確かめる計算ができます。書かれていない見積もりは、他社と比べる土台がありません。まず内訳を出してもらうところから始めてください。
自分で塗る場合も使用量の管理が仕上がりを左右します。範囲の考え方は外壁塗装のDIYにまとめています。
塗装後に出た膨れや剥がれの原因の切り分けは膨れ・剥がれの原因と対処にまとめています。
モルタル外壁では、塗る前に下地の補修と放置期間が入ります。モルタル外壁の塗装にまとめてあります。
本記事は塗装の工程と塗付け量についての一般的な整理で、個別の住宅の施工内容や品質を判断するものではありません。引用した公共工事の仕様書は公共建築物を対象としたもので、戸建住宅にそのまま適用されるものではありません。実際に必要な工程・回数・使用量は、使用する塗料の製造所が定める仕様と下地の状態によります。足場への立ち入りや高所での確認は行わないでください。

