壁の中の結露|塗り替えでは止まらない水の話

劣化とトラブル

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月5日編集方針と検証の手順

外壁を塗り替えたのに、室内側の壁にしみが出る。押入れの奥が黒くなる。窓まわりの結露が年々増えている。こうした症状は、外壁の表面ではなく、壁の内側で起きていることが原因になっている場合があります。

塗装は壁の外側を守る工事です。壁の中で発生した水は、塗り替えても止まりません。それどころか、塗料の選び方によっては、水の抜け道をふさいで状態を悪くすることもあります。

この記事では、国の研究機関が公表している資料をもとに、壁の中で何が起きているのか、通気層がなぜ効くのか、塗り替えのときに何を確かめておくべきかを整理します。北海道の住宅で条件がどう変わるかにも触れます。

なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。原因の特定には現地での調査が必要です。

  1. 結論:塗り替えだけでは壁の中の水は止まらない
    1. この記事で扱わないこと
  2. 壁の中の水はどこから来るのか
  3. 表面結露と内部結露は別のもの
    1. 夏型の壁内結露という現象もある
  4. 通気層がなぜ効くのか
    1. だから出入口をふさいではいけない
  5. 結露に関わる要因は5つ挙げられている
    1. 外壁の塗料が関わってくるのはここ
  6. 防湿層は「入れない」ための層
  7. 小屋裏でも同じことが起きる
  8. 床下と基礎断熱
  9. 北海道の住宅で条件がどう変わるか
  10. 住まい方でも変わる
    1. 家具の裏の黒いしみ
  11. 換気フードの目詰まりという経路
  12. 窓の結露が増えたら建物側を疑う
    1. 窓の下からの伝い水は外壁にも影響する
  13. 自分で確認できること
  14. 雨水が入りやすい造りは決まっている
  15. 塗り替えの前に業者へ確認すること
  16. 症状が出る時期で当たりをつける
  17. 直す順番を間違えない
  18. 調査が必要な段階かどうか
  19. 断熱を足すなら結露の設計とセットで
  20. よくある質問
    1. 外壁を塗り替えたら結露は減りますか
    2. 透湿性の高い塗料にすれば安心ですか
    3. 通気層があるかどうかは自分で分かりますか
    4. モルタルの家は不利ですか
    5. 24時間換気は止めてもいいですか
    6. 断熱リフォームをすれば解決しますか
    7. 雨漏りと内部結露はどう見分けますか
    8. 壁を開けないと分からないのですか
    9. 築何年くらいから気にすればいいですか
    10. 加湿器は使わないほうがいいですか
    11. 外壁の内側に断熱材を足すのはどうですか
  21. まとめ

結論:塗り替えだけでは壁の中の水は止まらない

先に要点を示します。

  • 壁の中の水は、浸入した雨水、結露水、配管からの漏水が主な発生源とされています
  • 外壁材を躯体に密着させる直張り構法はリスクが大きく、間に通気層を設ける通気構法はリスクが軽減されると説明されています
  • 通気層は浸入雨水の排出経路であり、同時に室内側から移動する水蒸気の排出路にもなります
  • したがって、塗り替えのときに通気層の出入口をふさがないことが、見た目より重要です

「外壁を塗ったのに直らない」という相談の一部は、そもそも塗装で対応する範囲の話ではなかったということになります。

この記事で扱わないこと

壁の中の水はどこから来るのか

壁に広がるしみ

国の研究機関の資料では、外皮内の液状水分の発生源として主なものは浸入雨水、結露水、配管等からの漏水であるとされています。塗装で対応できるのは、このうち浸入雨水の一部だけです。

発生源 塗装で対応できるか
外装材の表面から入る雨水 一部は対応できる
取り合い部・開口部から入る雨水 納まりの問題。塗装だけでは足りない
室内から移動した水蒸気による結露 対応できない
配管からの漏水 対応できない

ここで押さえておきたいのは、雨水と結露が別々の話ではないという点です。資料には、外皮の結露発生リスク評価で通常考慮される水分は空気中の湿気と構成部材の含水分のみだが、雨水浸入を考慮すると結露発生リスクは著しく高まることが事例調査やシミュレーションで分かっている、と書かれています。

つまり、雨水が入りやすい造りは、結露も起きやすいという関係にあります。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

表面結露と内部結露は別のもの

窓ガラスの結露

同じ「結露」でも、起きる場所によって呼び分けられます。

種類 出る場所 気づき方
表面結露 窓面、内壁面、天井面、床面 目で見える。水滴、カビ
内部結露 小屋裏、壁の中 見えない。しみや傷みで気づく

資料では、表面結露の仕組みを気体(室内湿気)→低温表面で凝縮→液体→流下、浸透と整理しています。窓ガラスに水滴が付くのはこれです。

やっかいなのは内部結露のほうです。壁の中で起きるため、症状が出るころにはある程度進んでいます。

夏型の壁内結露という現象もある

冬だけの話ではありません。資料には壁内結露(夏型)として、次の連鎖が示されています。

液体(雨水)→材料の細孔に浸入→日射熱で気化→気体→壁内に拡散移動→低温表面で凝縮→液体→浸透、漏出。

外装材が吸った雨水が、日射で温められて内側へ移動するという経路です。冷房で室内側が冷えているほど起こりやすくなります。北海道でも夏の高温が続く年には、無視できない条件になります。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章

通気層がなぜ効くのか

外壁下地の通気層

資料のなかで、構法の違いによるリスクの差がはっきり書かれている箇所があります。

直張り構法と通気構法の違い
直張り構法と通気構法の違い
直張り構法と通気構法

外壁において、外装材を躯体に密着して取り付ける、いわゆる直張り構法は、雨水浸入に関して要因が多く当てはまり、リスクが大きい。これに対して外装材と躯体の間に通気層を設ける、いわゆる通気構法においては、通気層が浸入雨水の移動経路を分断し、排出経路として機能するためリスクは軽減される。通気構法において、通気層は室内側から移動する水蒸気の排出路となるため、壁内結露発生および躯体木部の長期湿潤化リスクの軽減にも役立つ。

ここが重要です。通気層は入ってきた雨水を外へ出す道であると同時に、室内側から来た水蒸気を外へ出す道でもあります。ひとつの隙間が、二方向の水に効いています。

だから出入口をふさいではいけない

通気層は、下から空気が入り、上から抜けることで機能します。したがって、次のような施工は本来の働きを損ないます。

  • 土台まわりの通気の入口を塗料や仕上材でふさぐ
  • 軒裏の排気側をふさぐ
  • 下屋根と外壁の取り合いで通気層の下部をふさぐ
  • 後付けの部材を張り、空気の通り道を分断する

屋根のかぶせ改修について、北海道立総合研究機構の研究では、かぶせ改修が下屋と外壁の取り合いで壁の通気層下部をふさぎ、耐久性を下げるという指摘があります。工事の内容によっては、直したつもりが別のリスクを増やすことがあるということです。

出典:北海道立総合研究機構「外壁の通気性能を阻害しない屋根かぶせ改修工法」研究概要

結露に関わる要因は5つ挙げられている

建築中の外壁の層

資料は、結露発生リスクと関連する層構成・構法・仕様の要因として、次の5つを挙げています。

要因 意味するところ
断熱層内外各層の透湿抵抗比 室内側が湿気を通しにくく、外側が通しやすいほうが有利
層内の温度勾配 どこで温度が急に下がるか
断熱層外気側の通気措置 通気層があるかどうか
熱橋の形成 金物などを通じて熱が逃げる箇所
構成材の吸放湿特性 材料が湿気を吸ったり放したりする性質

ひとつめの透湿抵抗比が、住まい手にとっていちばん実感しにくく、しかし重要です。ごく単純化すれば、室内側で湿気を止め、外側では逃がすという関係が保たれていることが求められます。

4つめの熱橋も、症状として現れやすい要因です。金物や柱を通じて熱が逃げる場所では、その部分だけ表面温度が下がります。壁の一部にだけ縦の線状のカビが出るといった見え方をすることがあります。

これらは、いずれも塗装の工程で調整できるものではありません。塗り替えの前に知っておく意味は、「塗ることで何が変わり、何が変わらないか」を切り分けられるようになる点にあります。

外壁の塗料が関わってくるのはここ

塗り替えで壁の外側の透湿性が下がると、外へ逃げるはずだった水蒸気の出口が狭くなります。どのくらい影響するかは、通気層の有無だけで決まるものではありません。壁がどの層でできているか、その塗料の透湿性がどうかによって変わります。とくにモルタルの直張りのように通気層がない造りでは、慎重に見たほうがよい条件です。塗料の透湿性能は製品ごとに違うので、壁の造りとあわせて業者に確認してください。

塗料を選ぶときは、自分の家の壁がどう作られているかを先に確認してください。外壁材の見分け方は外壁材の種類と選び方にまとめています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

防湿層は「入れない」ための層

防湿シートの施工

断熱材の室内側に張られているフィルムを防湿層と呼びます。役割は単純で、室内の水蒸気を壁の中へ入れないことです。

資料が挙げる要因のうち、断熱層内外各層の透湿抵抗比がこれに当たります。室内側で止め、外側で逃がす。この向きが保たれていれば、壁の中に水蒸気がたまりにくくなります。

逆に、防湿層に穴が開いていたり、重ね方が足りなかったりすると、そこから水蒸気が入ります。よく指摘されるのは次の場所です。

  • コンセントやスイッチのまわり
  • 配管や配線が壁を貫通する部分
  • 間仕切り壁と外壁が取り合う部分
  • 後から取り付けた棚やエアコンのビス穴

いずれも壁を開けないと確認できません。だからこそ、症状から推測して調べる順番が必要になります。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

小屋裏でも同じことが起きる

小屋裏の様子

資料は、内部結露が発生する場所として小屋裏と壁の中を挙げています。北海道の住宅では、屋根まわりの問題がすが漏りとして表面化することがあり、結露と混同されやすいところです。

すが漏り 小屋裏の結露
起きる時期 雪解けの進む時期 寒さが厳しい時期
水の出どころ 屋根の上の融雪水 室内から上がった水蒸気
出方 まとまった量で出る じわじわと湿る
対応 屋根の排水と断熱・気密 気密と小屋裏換気

どちらも断熱・気密・換気をセットで考える点は共通しています。すが漏りの詳しい仕組みはすが漏りの記事で扱っています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

床下と基礎断熱

床下の基礎まわり

資料には、基礎断熱構造において室内から床下へ十分に熱が供給されない場合が、想定しない室内温湿度環境の例として挙げられています。北海道では基礎断熱の住宅が多く、床下も室内側として扱われます。

また、べた基礎や防湿コンクリートの水抜き孔が設置されていないと、施工中の降雨水が排出されずコンクリートに吸収され、竣工後の初期の段階で床下の高湿潤環境をもたらし、カビの発生や木部の腐朽につながるリスクが高まるという指摘もあります。

床下点検口から覗いて、におい、結露の跡、断熱材のずれを確認しておくと、変化に気づきやすくなります。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

北海道の住宅で条件がどう変わるか

雪に囲まれた北海道の住宅

北海道の住宅は、本州の一般的な住宅より断熱と気密の性能が高いのが普通です。これは内部結露に対して有利にも不利にも働きます

  • 有利な面 … 防湿層がきちんと施工されていれば、室内の湿気が壁の中に入りにくい
  • 不利な面 … 室内と外気の温度差が大きいため、どこかで湿気が入れば凝縮しやすい
  • 不利な面 … 透湿抵抗の高い部材で構成され、部位のあいだで通気が行われない造りだと、いったん入った水分が長期間乾かずに残る

資料には、相対的に透湿抵抗の高い部材によって構成され、部位区画相互間の通気が行われなくなっている近年の住宅外皮構造においては、いったん躯体部分に浸入した水分は長期間乾燥せずに滞留するという指摘があります。そして、従前の比較的気密性が不十分であった住宅では耐久性上さほど問題にならなかった雨水浸入が、躯体木部の長期湿潤化をもたらし、早期劣化につながるとされています。

性能が上がったからこそ、入口をつくらないことが重要になったという関係です。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

住まい方でも変わる

建物の造りだけの問題ではありません。資料は、住宅室内の温湿度条件が設計で想定する条件と異なり、著しい高湿化や、床・壁・天井面の低温化が生じると結露発生やカビ発生のリスクとなるとしています。

具体例として挙げられているのは次のようなものです。

  • 入浴や調理、開放型暖房機や加湿器の使用、大量の植物や水槽の設置による多量の水蒸気の発生
  • 24時間換気装置の意図的な運転停止
  • 局所暖房
  • 基礎断熱構造で、室内から床下へ十分に熱が供給されない場合

北海道で気をつけたいのは開放型暖房機です。燃焼したガスを室内に出すタイプの暖房は、燃焼にともなって水蒸気も出します。換気を止めた状態で使うと、室内の湿度が上がります。

家具の裏の黒いしみ

資料には、家具後ろの外部に面する壁面や押入れの外部に面する壁面にカビ跡の黒いシミをよく見かけるという記述があります。これは日常生活に伴い発生した水蒸気が露点温度以下となった壁面で結露が発生し、カビが生じたものと説明されています。

外壁を塗り替えても、この症状は変わりません。家具を壁から離す、換気を止めない、局所的に冷える面をつくらないという対応が先になります。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

換気フードの目詰まりという経路

外壁材の団体の資料には、住まい手が確認できる具体的な経路が示されています。換気フードの網が目詰まりすると、フードパイプと壁体内の接続パイプとの隙間から、湿気を多く含む空気が壁体に放出されやすくなるというものです。

その結果、サイディング裏面で結露・吸水し、サイディング自体に凍害等の現象が現れることがあるとされています。浴室や台所の排気は湿気を多く含みます。フードのまわりだけ壁が傷んでいる家では、この経路を確かめる価値があります。

点検と手入れについては、住宅会社や工務店に相談するか、取扱説明書を確認するよう案内されています。

出典:日本窯業外装材協会「サイディングの維持管理はどうするの お施主様へ」

窓の結露が増えたら建物側を疑う

窓の結露は表面結露なので、壁の中の話とは別です。ただし変化の兆候としては役に立ちます

順番があります。窓の結露が増えたとき、まず疑うのは換気量、室内の湿度、暖房の使い方、その冬の外気温です。加湿器を使い始めた、換気扇を止めている、といったことで結露量は変わります。これらで説明がつくなら、建物の異常ではありません。説明がつかないときに、はじめて建物側を調べる段階になります。

  • 去年より明らかに水滴が増えた
  • これまで結露しなかった別の部屋の窓にも出るようになった
  • 窓枠の木部がふやけてきた
  • カーテンの裾にカビが出るようになった

住まい方が変わっていないのに増えたのであれば、換気が効かなくなっている、断熱材がずれている、どこかから水が入っているといった建物側の変化を疑う理由になります。

窓の下からの伝い水は外壁にも影響する

室内側で結露した水が、サッシの下枠から外側へ回ることがあります。外壁材の団体の資料には、寒冷地域等では冬期にその伝い水が凍結して、サイディングの劣化を早めて、塗装剥がれや基材損傷につながることもあると書かれています。とくに浴室サッシで起きやすいとされています。

外壁の黒い筋についてはコケ・藻・カビの記事でも扱っています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

自分で確認できること

専門的な調査は業者に依頼するとして、住まい手が確認できることを挙げます。

見る場所 確認すること
土台まわり 通気の入口が土や雪、仕上材でふさがれていないか
軒裏 換気部材が塗料でふさがれていないか
換気フード 網の目詰まり、まわりの壁の傷み
押入れ・家具の裏 黒いしみ、においの変化
小屋裏(点検口) 木部のしみ、断熱材のずれ
窓まわり 結露の量が例年と比べて増えていないか

小屋裏に入るときは足元が不安定です。天井板は人が乗ることを想定していないため、踏み抜きの危険があります。点検口から覗いて写真を撮る程度にとどめてください。

通気部材を塗料でふさがないよう伝える

塗装の打ち合わせのときに、軒裏の換気部材と土台まわりの通気の入口をふさがないでほしいと伝えておいてください。職人にとっては当然のことですが、施主から一言あるだけで確認の機会が増えます。工事後に自分で見て確かめられる項目でもあります。

雨水が入りやすい造りは決まっている

結露と雨水は切り離せないため、雨水が入りやすい造りの特徴も知っておく価値があります。資料は、雨水浸入リスクを増大させる共通の要因として次を挙げています。

要因 身近な言い方
部材緊結具の相互貫通による層間の浸入雨水移動経路の形成 ビスや釘が層を貫き、水の通り道になる
外装材支持部材、建具枠他の層間横断部材による浸入雨水の滞留と室内側への移動 横に渡る部材で水が止まり、内側へ回る
二次止水層の止水性能不十分 外装材の内側にある防水紙が頼りにならない
外装材の保水と放散水分の室内側への拡散経路 外装材が吸った水が内側へ移動する
浸入雨水の排出口の不備 入った水が出ていく道がない

最後の排出口の不備が、通気層の話とつながります。水が入らない壁をつくるのではなく、入った水が出ていける壁をつくるという考え方です。

外壁が「水を通さない壁」ではないという前提は、雨漏りの原因の記事でも扱っています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

塗り替えの前に業者へ確認すること

塗装の見積もりを取る段階で、次を聞いておくと判断がしやすくなります。

  • この家の外壁は通気構法か、直張りか
  • 土台や軒裏の通気部材はどこにあるか。工事でふさがない段取りになっているか
  • 室内側にしみが出ている場合、塗装で対応できる範囲かどうか
  • 換気フードまわりの傷みについて、原因の見立てはどうか
  • 使う塗料の透湿性について、どう考えているか

ここで「塗れば止まります」と即答された場合は、いったん立ち止まったほうがよいと考えます。壁の中の水は、外側を塗ることでは止まらないためです。業者選びの視点は業者の選び方にまとめています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

症状が出る時期で当たりをつける

原因の特定は調査によりますが、いつ症状が出るかで見当をつけることはできます。

症状の出る時期から原因の見当をつける
症状の出る時期から原因の見当をつける
症状の出る時期 疑わしいもの
降雨のあと 雨水の浸入
寒さが厳しい時期 内部結露、表面結露
積雪・凍結・融雪の時期 すが漏りを含む、屋根まわりからの漏水
夏の日射が強い時期 夏型の壁内結露
季節に関係なく続く 配管からの漏水

このため、症状が出た日と天気を記録しておくことに意味があります。「先週の雨のあと」「今年いちばん冷えた日の翌朝」といった記録が、調査のときの手がかりになります。

写真も同じです。しみの形と広がり方を、日付が分かる形で残しておいてください。

直す順番を間違えない

壁の中の問題が疑われるとき、工事の順番はおおむね次のようになります。

  • 1. 調査 … どこから水が来ているのかを確かめる
  • 2. 原因に応じて水を止める … 下の表のとおり、原因ごとにやることが違います
  • 3. 濡れた部分の乾燥と補修 … 木部の状態によっては交換
  • 4. 出口を確保する … 通気の入口・出口をふさがない
  • 5. 塗装 … 最後に表面を仕上げる

2番目を分けて書きます。国総研の資料は、外皮内の液状水分の発生源を浸入雨水・結露水・配管等からの漏水の3つに整理しています。どれなのかで、先にやることが変わります。

発生源 先にやること
浸入雨水 納まりの補修、目地、板金など入口をふさぐ
結露水 防湿・断熱・換気を見直す。壁をふさぐだけでは解決しない
配管等からの漏水 配管の修理。建物の外皮の問題ではない

塗装は最後です。先に塗ってしまうと、原因が残ったまま表面だけがきれいになり、数年後に同じ場所へ戻ってきます。工事全体の流れは工事の流れと工期にまとめています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

調査が必要な段階かどうか

次のような状態であれば、塗装の見積もりより先に調査を検討してください。

  • 室内側の壁や天井にしみが出ている
  • 雨のあとではなく、寒い時期に症状が出る
  • 特定の部屋・特定の面にだけ繰り返し出る
  • 床が沈む、木部にやわらかい部分がある
  • においが変わった

下から3つは、木部の腐朽が進んでいる可能性があります。資料によれば、木材腐朽菌は気乾状態の含水分では生育できず、繊維飽和点を超えて細胞内に自由水が存在するようにならないと生育できないとされています。裏を返せば、腐朽が始まった時点では、液状の水で濡れる条件があったということです。

ただし、いまも濡れ続けているとは限りません。同じ資料は、いったん腐朽が始まると水分が生成されるため、周辺の木部の含水率が30%以下でも腐朽は進行すると注意しています。水の供給が止まっても、傷みだけは進むことがあるということです。だから、原因を止めたあとも状態の確認が要ります。

調査の頼み方は雨漏りの原因の調べ方で扱っています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

断熱を足すなら結露の設計とセットで

「寒いから断熱を足したい」という相談は、外壁の工事と同時に出てくることがよくあります。足場が架かる機会だから、というのは合理的な理由です。

ただし、断熱材を足すと、壁の中の温度分布が変わります。資料が挙げる要因のうち層内の温度勾配が変わるということです。どこで温度が急に下がるかが変われば、結露する位置も変わります。

  • 外側に足す場合 … 壁の中の温度が上がり、結露しにくくなる方向に働くのが一般的
  • 内側に足す場合 … 既存の壁がより冷える側に回るため、防湿層の連続性が重要になる
  • どちらの場合も … 通気層を確保できているかを確かめる

断熱を足す工事は、塗装とは別の設計が要る工事です。塗装業者にそのまま頼めるとは限りません。外側から断熱を足す方法と、補助制度の対象になるかどうかは外張り断熱と外壁の更新で扱っています。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

よくある質問

外壁を塗り替えたら結露は減りますか

室内側の表面結露は、室内の温湿度と壁面の温度で決まります。外壁の塗り替えで直接減るものではありません。断熱の状態を変える工事であれば話は別です。

透湿性の高い塗料にすれば安心ですか

塗料の透湿性は要因のひとつですが、資料が挙げているのは透湿抵抗比、温度勾配、通気措置、熱橋、吸放湿特性の5つです。塗料だけで決まるものではありません。

通気層があるかどうかは自分で分かりますか

外から見て判断するのは難しいところです。土台まわりに通気部材があるか、軒裏に換気部材があるかが手がかりになります。新築時の図面が残っていれば確認できます。

モルタルの家は不利ですか

直張りであれば、通気構法に比べて浸入雨水の排出経路がないという違いがあります。ただし、造りは建てられた年代や施工者によって異なります。一律に不利と決めつけず、実際の造りを確かめてください。

24時間換気は止めてもいいですか

資料では、24時間換気装置の意図的な運転停止が室内の高湿化をもたらす例として挙げられています。寒い時期ほど止めたくなりますが、湿気の逃げ道でもあります。

断熱リフォームをすれば解決しますか

断熱の追加は有効な場合がありますが、防湿層と通気層の扱いを誤ると、かえって結露を起こすことがあります。外壁側から断熱を加える工事については外張り断熱と外壁の更新で扱っています。

雨漏りと内部結露はどう見分けますか

大まかな手がかりは症状の出る時期です。雨のあとに出るなら雨水、寒い時期に出るなら結露の可能性が高くなります。ただし両方が絡んでいることも多く、断定は調査によります。

壁を開けないと分からないのですか

非破壊の方法(赤外線、含水率の測定、散水試験など)である程度は絞り込めます。ただし、最終的な確認のために一部を開けることはあります。

築何年くらいから気にすればいいですか

年数より症状と造りで見てください。ただ、新築時の図面や仕様書が手元にあるかどうかで、調べやすさがまったく違います。図面が残っているなら、この機会に確認しておくことをおすすめします。

加湿器は使わないほうがいいですか

資料では、加湿器の使用が室内の高湿化をもたらす例として挙げられています。ただし、乾燥しすぎも快適とは言えません。換気を止めないことと合わせて考えてください。

外壁の内側に断熱材を足すのはどうですか

室内側から断熱を足す場合、防湿層の位置と連続性が重要になります。断熱材だけを入れると、かえって結露する面をつくることがあります。外側から足す方法については外張り断熱の記事で扱っています。

まとめ

壁の中で起きる水の問題は、外壁の塗り替えでは解決しません。国の研究機関の資料は、外皮内の水分の発生源を浸入雨水、結露水、配管からの漏水とし、雨水浸入を考慮すると結露発生リスクは著しく高まるとしています。

造りの違いも明記されています。外装材を躯体に密着させる直張り構法はリスクが大きく、間に通気層を設ける通気構法ではリスクが軽減される。しかも通気層は、浸入雨水の排出経路であると同時に、室内側から移動する水蒸気の排出路としても働きます。

だから、塗り替えのときに大事なのは通気層の出入口をふさがないことです。土台まわりの入口、軒裏の排気、下屋根と外壁の取り合い。ここを止めてしまうと、外側だけきれいになって内側の条件は悪くなります。

北海道の住宅は断熱と気密の性能が高く、入った水分が抜けにくいという性質があります。だからこそ、水の入口をつくらないことと、出口を残しておくことの両方が要ります。

室内側にしみが出ている、寒い時期に繰り返す、といった段階であれば、塗装の見積もりより先に調査を検討してください。順番を逆にすると、費用をかけたのに症状が残ります。

住まい方の影響も小さくありません。資料は、開放型暖房機や加湿器の使用、24時間換気装置の意図的な運転停止、局所暖房を、想定しない室内温湿度環境をつくる例として挙げています。寒い時期に換気を止めたくなるのは自然な気持ちですが、湿気の逃げ道でもあるという点は覚えておいてください。

最後に、点検の順番として現実的なのはこうです。まず症状が出た日と天気を記録し、写真を残す。次に土台まわりと軒裏の通気、換気フードの目詰まりを見る。そのうえで業者に相談する。ここまでやっておくと、相談したときの話がまるで違ってきます。

ALCパネルの外壁に固有の塗装の考え方はALC外壁の塗装にまとめています。

断熱塗料や遮熱塗料の効果をどこまで期待できるかは断熱塗料の効果にまとめています。

モルタル外壁は通気構法が普及していないという調査があります。モルタル外壁の塗装で扱いました。

小屋裏側の換気を部材から考えるときは、換気棟とは?北海道で必要かどうかは屋根の形と断熱の位置で決まるを合わせて読んでください。

本記事は公表資料をもとに一般的な仕組みを整理したもので、個別の住宅における原因の特定や、工事の要否を判断するものではありません。引用した資料は木造住宅の劣化対策に関する技術的な検討をまとめたもので、すべての住宅にそのまま当てはまるものではありません。実際の調査と対策は、現地を確認した建築士または施工業者にご相談ください。

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