最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月26日編集方針と検証の手順
見積書に「ケレン一式」とだけ書かれていて、何の作業なのか分からない。3社から見積もりを取ったら、書き方も金額もそろっていない。ケレンを調べ始めるきっかけは、たいていこのあたりです。
ケレンは塗る前に表面を整える工程で、削る量が多いほど良いわけではありません。どこまで落とすかには分野ごとの区分があります。
用語の意味、1種から4種という言い方の出どころ、建物の塗り替えで物差しになる区分、見積書での確かめ方を、公的資料の原文から順に整理します。当サイトは工事も見積もりも受けません。ケレンの単価はここでは扱わず、工事全体の費用は別の記事にまとめています。
ケレンは「どこまで落とすか」で決まる

ケレンは、塗る前に表面を整える工程の、現場での呼び名です。要点は、全部を削り落とすことではなく、傷んだ部分を落として密着している塗膜は残す「程度の選択」だという点にあります。
落とす程度には分野ごとの区分があり、鋼道路橋の分野では1種から4種、建物の塗り替えを扱う国の仕様書ではRA種・RB種・RC種と呼び分けられています。住宅の塗り替えで全面除去まで行くとは限らず、仕様書が既定にしているのは「劣化部分は除去し、活膜部分は残す」ほうです。
ここを知っておくと、見積書のケレンの行が読めるようになります。
塗料のグレードより先に効くと言われる理由
下地処理と塗料のグレード、どちらに予算を回すか。判断材料になる数字が、鋼橋の防食を扱う公表資料にあります。
「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」は、塗膜の耐久に及ぼす影響を要因別に示しています。ケレン程度の差が49.5%、塗り回数の差が19.1%、塗料種類の差が4.9%。
ただしこれは鋼道路橋の分野の数字で、住宅の外壁を測ったものではありません。それでも、塗料の等級を1つ上げる前に下地の話を詰めたほうがよい、という順序の根拠にはなります。
ケレンが足りないと何が起きるか
国の改修仕様書は、塗り替えの下地調整について「特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す」と書いています。裏返せば、劣化した部分を残したまま塗ると、新しい塗膜は浮いた層の上に乗ることになるわけです。
上から塗っても、下が動けば一緒に動きます。膨れや剥がれの原因を切り分ける話は、外壁塗装の膨れ・剥がれで扱っています。
何年後に出るかは家ごとに違うため、年数では言えません。ただ、目に見えない工程で差が付くという言い方は、この構図から来ています。
出典:沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
この記事で扱わないこと
下地に関わる話は範囲が広く、それぞれ別の記事が要ります。ここで扱うのは、工程としてのケレンと見積書での確かめ方だけです。
次の内容は別の記事に置いています。
- 外壁材ごとの選び方と特徴 … 外壁材の種類
- 高圧洗浄そのものの中身 … 高圧洗浄
- 傷みのサインの見つけ方 … 外壁の劣化サイン
- 工事全体の費用の内訳 … 北海道の外壁塗装の費用
- 自分で塗るときの注意 … 外壁塗装のDIY
どこまで落とすかは外壁材の状態でも変わるので、自分の家の外壁材が分からないときは、先に外壁材の記事から読むほうが近道です。
ケレンとは何をする作業か

仕様書の塗装の章に「ケレン」という語は出てきません。現場での通称だからです。国土交通省の公共建築工事標準仕様書と公共建築改修工事標準仕様書では、同じ工程が「素地ごしらえ」「下地調整」という名前で書かれています。
落とす対象は、錆、粉になった古い塗膜、浮いた塗膜、油や汚れなどの付着物です。工程の位置は、洗って乾かしたあと、錆止めや下塗りに入る前。
使う道具も仕様書の表に書かれていて、特別な機械が並んでいるわけではありません。
仕様書では素地ごしらえ・下地調整と書かれる
2つの仕様書は、呼び分けをはっきりさせています。新しく塗る面を整えるのが「素地ごしらえ」で、公共建築工事標準仕様書の18章2節です。
すでに塗ってある面を塗り替えるときに整えるのが「下地調整」で、公共建築改修工事標準仕様書の7章2節です。改修仕様書は7章3節を「新規に塗装を行う場合」に限っており、塗り替えでは別の表を見ることになります。
見積書に「素地調整」とあってもケレンと別の工事ではなく、書き方の違いです。
洗浄と錆止めのあいだに入る工程
工程の並びは、仕様書の表がそのまま示しています。改修仕様書の表7.4.3は、鉄鋼面の錆止め塗料塗りを「下地調整 → 錆止め塗料塗り(1回目)→ 研磨紙ずり → 錆止め塗料塗り(2回目)」の順に並べています。
塗り替えの場合は、特記がなければC種です。そのC種では、1回目の錆止めを「素地露出部分のみ塗り付ける」とされています。
どこを削って素地が出たかが分かっていないと塗れない書き方です。1回目と2回目のあいだにも研磨紙ずりが入ります。表面を整える手当ては、削って終わりではありません。
ケレンに使われる道具
道具の名前も表に出てきます。改修仕様書の表7.2.2は、鉄鋼面の既存塗膜の除去を「ディスクサンダー、スクレーパー等により」と書いています。
汚れと付着物の除去は「ワイヤブラシ等により」です。電動工具と手工具、それに番手の決まった研磨紙。この3つが基本で、道具の高級さより、どの面にどれを当てるかが中身になります。
作業の並びは、錆や粉になった塗膜を落とし、削りかすを片づけ、残す塗膜の表面をざらつかせる順です。研磨紙ずりも「全面を平らに研磨し、研磨かす等を除去する」とされ、清掃までが工程に入ります。
自分で削る手順はここでは扱いません。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
1種〜4種ケレンの区分はどこから来た言い方か

1種、2種、3種、4種という数字は、住宅の塗装のために作られた区分ではありません。出どころは鋼道路橋の分野です。
沖縄地区鋼橋防食マニュアルは、塗替えの素地調整種別の表に「一部、鋼道路橋塗装・防食便覧 社団法人 日本道路協会 平成17年12月より転載」と明記しています。数字は小さいほど落とす範囲が広く、1種が全面除去、4種がいちばん軽い処理です。
そして同じ資料は、実際の塗替えではほとんどが3種を適用していると書いています。
4つの区分と3種A・B・Cの分かれ方
同じ表から、住宅の塗り替えに必要な列だけ並べます。
| 区分 | 落とす範囲 | 主な作業方法 | 目安になる状態 |
|---|---|---|---|
| 1種 | さび、旧塗膜を完全に除去し鋼材面を露出させる | ブラスト法 | なし |
| 2種 | 旧塗膜、さびを除去し、鋼材面を露出させる | 電動手工具と手工具の併用、ブラスト法 | 発さび面積30%以上 |
| 3種A・B・C | 活膜は残すが、それ以外の不良部(さび、われ、ふくれ)は除去する | 同上 | 発さび面積15〜30%/5〜15%/5%以下 |
| 4種 | 粉化物・汚れなどを除去する(錆落としは不要) | 電動手工具と手工具の併用 | さびは無く、われ・ふくれ・はがれが少し/白亜化(チョーキング)・変退色が著しい |
3種のA・B・Cは作業内容が同じで、傷んだ面積で分かれます。仕上がりの程度は標準見本で示され、一般に使われているのはISO 8501だと同じ資料が書いています。
除錆率や塗膜寿命の年数を挙げる解説も見かけますが、この資料には出てこないため書きません。
住宅で1種が必要になる場面は限られる
1種はブラスト法で、資料は「素地調整の効果は最も優れている」としつつ「処理コストも高い」とも書いています。
もう1つ押さえておきたいのが、公共建築工事標準仕様書の鉄鋼面の素地ごしらえの表です。ブラスト法にあたるB種には注が付いていて、「A種及びB種は、製作工場等で行うものとする」とされています。
工場で行う前提の処理という位置づけです。これは新しく塗る面の規定で、塗り替え側の表(RA〜RC種)にブラスト法の区分はありません。
住宅の現場で「1種ケレンでやります」と言われたら、何のために必要なのかを聞いてみる価値があります。
出典:沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」/国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
住宅の塗り替えで物差しになるRA・RB・RC種

塗り替えのほうを扱う国の仕様書では、区分の呼び名が変わります。公共建築改修工事標準仕様書の7章2節「下地調整」は、RA種・RB種・RC種の3つを置いています。

鉄鋼面も亜鉛めっき鋼面もモルタル面もコンクリート面もボード面も、すべて「特記がなければRB種」です。RB種は、劣化した部分と錆を落として活膜は残す程度になります。コンクリート面の素地ごしらえについては、基礎の塗装でも扱っています。
ただしこの仕様書は公共建築の工事に適用されるもので、戸建ての民間工事に義務として及ぶわけではありません。物差しとして使う位置づけです。
3つの区分と研磨紙の番手の違い
鉄鋼面の表7.2.2を並べると、違いがはっきりします。
| 区分 | 既存塗膜の除去 | 油類除去 | 研磨紙 |
|---|---|---|---|
| RA種 | ディスクサンダー、スクレーパー等により、塗膜、錆等を全面除去する | 既存塗膜を除去した範囲を溶剤ぶき | P120〜220 |
| RB種 | 同じ道具で、劣化しぜい弱な部分、錆等を除去し、活膜は残す | 同上 | P120〜220 |
| RC種 | 既存塗膜を除去する工程がない | なし | P240〜320 |
RC種には既存塗膜を落とす工程そのものがありません。汚れと付着物を落とし、細かい研磨紙で表面をならすだけです。
番手が上がるほど紙は細かいので、RC種は削るのではなく整える処理だと分かります。
「特記がなければRB種」が意味すること
「特記がなければ」は、指定がなければこう扱う、という既定値の宣言です。公共工事ではここが決まっているので、発注側と施工側の認識がずれません。
住宅の工事に同じ仕組みはないので、見積書に何も書かれていなければ、どこまで落とすかは現場任せになります。だからこそ聞き方が決まります。
「活膜は残す前提ですか、全面除去ですか」。この1問で、相手がどの程度を想定しているかを確かめられます。
1種から4種と、RA・RB・RC種は別系統の区分で、一対一に対応するものではありません。原典に対応表も置かれていません。
共通しているのは、活膜を残すという考え方のほうです。手元の見積書に「3種ケレン」とあれば、道路橋の分野の言い方を借りたもので、原典では活膜を残す側の区分にあたります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
活膜を残すのが標準になっている理由

改修仕様書の7.2.1は、RB種について「特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す」と書いています。密着している塗膜まで削り落とすと、素地を傷めるうえ、手間と費用が増えます。
全面除去が要るのは、旧塗膜と新しい塗料が合わないときなど、理由があるときだけです。「全部剥がしたほうが丁寧」という感覚は、必ずしも仕様書の考え方と一致しません。
落とす量ではなく、落とす場所の選び分けが中身です。削る範囲を広げるほど丁寧だ、という理解は仕様書の側からは出てきません。
死膜と活膜の分け方
言葉の定義は、鋼橋の資料が細かく書いています。われ、はがれ、ふくれ、さびなどで塗膜の防せい効果が失われた部分が死膜部で、ここは塗膜やさびを除去して鋼材面を露出させます。
それ以外の活膜部については、塗膜表面の粉化物や付着物を除去し、硬化した塗膜の面あらしをするとされています。面あらしは、次に塗る材料が食いつくように表面をざらつかせることです。
同じ壁のなかで、削る場所と整えるだけの場所が混在します。ケレンが面積で数えにくいのは、この混在が理由です。
「全部剥がします」が常に良いとは限らない
全面除去は、費用も時間もかかる選択です。鋼橋の資料も、1種は処理コストが高い、2種は作業に要する時間が長く費用も高いと書いています。
同じ資料にはこうもあります。「動力工具や手工具では、くぼみ部、狭隘部のボルト、リベット部などの除せいや塗膜除去を完全に行うことはできない」。
除せいは錆落としのことです。手作業と電動工具の範囲では、言葉どおりの全面除去は簡単ではありません。改修仕様書も研磨紙ずりについて「下層の塗膜を研ぎ去らないように注意して研ぐ」と書いています。
削ることより、削りすぎないことを求めている書き方です。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」
部位と素材でケレンの中身が変わる
仕様書は面ごとに別の表を持っています。木部、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面、モルタル面、コンクリート面とALCパネル面、ボード面。
この区切りで工程が変わります。同じ「ケレン」でも、鉄部で錆を落とすのと、モルタル面でひび割れを埋めるのとでは中身が別物です。
注意したいのが、窯業系サイディングの区分がこの仕様書にないことです。改修仕様書の全編を検索しても「サイディング」の語は出てこないので、そこは材料メーカーの手引きに従う領域です。
鉄部と亜鉛めっき鋼面は別扱い
鉄鋼面の表7.2.2と、亜鉛めっき鋼面の表7.2.3は別の表です。同じ金属でも、めっきの層があるかどうかで扱いが変わります。
分かりやすい違いが研磨紙で、鉄鋼面はRA・RBがP120〜220なのに対し、亜鉛めっき鋼面は3区分ともP240〜320です。強く削るとめっきの層まで削ってしまうためだと読めます。
金属サイディングの塗装では、白錆と赤錆で段階が違うこと、錆が出やすい場所が決まっていることを扱っています。金属の面は、鉄部と同じ感覚で削らないほうが安全です。
モルタル・コンクリートの面で増える工程
モルタル面の表7.2.4を見ると、金属の面にはない工程が並びます。既存塗膜の除去のあとに、ひび割れ部の補修、吸込止め、穴埋めとパテかい、研磨紙ずりと続きます。
吸込止めには「既存塗膜を除去した範囲に塗り付ける」という条件付きです。削った場所は素地が出ているので、そこだけ塗料を吸い込むからです。
ケレンという言葉から想像する「削る」だけでは足りない面です。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
洗浄とケレンはどちらが先か
洗ってからケレンに入る、が原則の順序です。よく検索されている問いでもあり、鋼橋の資料はこの点をはっきり書いています。

「素地調整程度3種4種は、素地調整に先立って水洗を行うことを原則とする」。軽い処理で済ませる場合ほど、先に洗うわけです。
ただしこの資料は沖縄地区の鋼橋を対象にしたもので、水洗には飛来した塩分を落とす目的も併記されています。住宅の外壁にそのまま当てはまる基準ではありません。
それでも、汚れを載せたまま削らないという考え方は、順序を確かめる材料になります。
1種・2種だけ順序が変わる理由
同じ資料で、1種と2種は水洗の対象から外されています。理由は「旧塗膜(塩分や汚れが付着している塗膜)を全て除去するので水洗の対象外とした」と書かれています。
汚れの付いた塗膜ごと落とすので、先に洗う意味が薄れるわけです。逆に活膜を残す3種・4種では、健全な塗膜の上を整えることになります。
そこに粉化物や汚れが残ると、削りかすと混ざってどこまで落ちたかが見えにくくなります。手元の工程表で洗浄がケレンの前に来ているかは、確かめておいて損はありません。
乾かす時間は工程表のどこに出るか
洗ったあとに要るのは、乾かす時間です。改修仕様書は塗装改修工事の共通事項として、「各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める」としています。
施工管理の項には「気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない」という条件もあります。採暖や換気を適切に行う場合は除く、というただし書き付きです。
工事の流れと工期でも並びを整理していますが、洗浄の翌日が空いて見えても、それは待ちの時間です。
出典:沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」/国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
北海道で条件が変わるところ

落としてから塗るまでを空けない段取りと、秋口に工程が詰まったときの判断が、ほかの地域より効いてきます。道内の住宅では、屋根も外壁も金属という家が少なくないとされます。塗り替えのときに錆と向き合う面が、それだけ多くなります。
金属の面は、錆が出る場所が偏ります。雪が当たる高さ、水が回る継ぎ目、切り口。ここに傷みが集中しやすく、ケレンの手間も同じ場所に集まります。
もう1つの制約が時間です。洗って乾かす時間と、塗れる期間そのものが限られます。
錆が出る場所は偏る
地上から見るだけでも、当たりは付きます。トタン屋根の塗装では、錆が段階を追って進むこと、塗る・重ねる・替えるの判断が下地の状態で分かれることを扱っています。
表面に浮いた点の錆と、めくれて素地が出ている錆では、必要なケレンの程度が別です。見るのは、雪が当たる高さの外壁、樋の受け金物、水切り、庇の裏。
屋根には上がらず、写真を撮って残しておくのが安全です。
落としてから塗るまでを空けない
鋼橋の資料には「素地調整から下塗り第一層までの時間は4時間以内とする」という注があります。これは鋼道路橋の塗装の話で、住宅の塗り替えに適用される基準ではありません。
ただ、素地を出したまま置くと、そこから錆びるという理屈は同じです。夕方に削って、翌朝に塗る。雨が降れば、さらに延びる。
北海道の秋は、この延びが工程全体を押し出します。同じ日のうちに錆止めまで進める段取りになっているかを、工程表で確かめておくと安心です。
出典:沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」
古い塗膜のケレンで注意すること

古い建物の錆止め塗料には、鉛やクロムを含むものがあります。厚生労働省は平成26年の通達で、鉛等有害物を含む塗料の剥離やかき落とし作業について、湿式の作業や保護具の着用を求めています。
ただしこの通達の対象は「橋梁等建設物」で、戸建て住宅を名指ししたものではありません。とはいえ鉛中毒予防規則などの適用は作業の中身で決まるため、住宅なら関係がないとも言えません。
それでも、削れば粉が飛ぶという事実は変わらず、近隣への配慮の話につながります。
鉛を含む塗膜についての通達
通達の書き出しは具体的です。「一般に錆止め等の目的で鉛を数十%から十数%程度含有したり、クロムを含有する塗料が塗布された橋梁等建設物があり」「現在でも多くの建設物に塗布されている」。
鉛等が確認された場合には、鉛中毒予防規則等に従って、湿式による作業の実施、作業主任者の選任、有効な保護具の着用などを求めています。
公共建築工事標準仕様書の表18.3.1では、屋外・屋内に使うAs種にJIS K 5674の鉛・クロムフリーさび止めペイントが指定されています。新しく塗る材料の側では、鉛を使わない前提に切り替わっています。
改修仕様書にも「改修部に石綿、鉛等の有害物質を含む材料が使用されていることが発見された場合は、監督職員と協議する」という定めがあります。
石綿と近隣への飛散
削る作業でもう1つ確かめたいのが石綿です。外壁の塗り替えでも事前調査の対象になる場面があり、石綿の事前調査で扱っています。
飛散の対策として、鋼橋の資料は「ケレンダスト及びスプレーミストの飛散対策として、飛散防護シート」を挙げています。効果を確認したうえで、十分な養生と換気に注意して使う、という書き方です。
住宅では、隣家の車や洗濯物との距離が近くなります。養生の範囲と、削る日の連絡は、着工前に決めておく話です。
出典:厚生労働省「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」/国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」/沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」
見積書でケレンをどう読むか

見積書のケレンは、3つの書き方に分かれます。「ケレン一式」で金額だけ、「3種ケレン ○㎡ 単価○円」のように種別と数量が入っているもの、そして行そのものがないもの。
そろえて比べやすいのは2つ目の形です。1つ目と3つ目は、どこまで落とすつもりなのかが読み取れません。
安いほうを選んだあとで工程が変わっても、それには気づけません。見積書のチェックでも見方を扱っていますが、ケレンに絞れば、確かめる点は決まります。
3つの書き方をどう読み分けるか
3つの型を並べます。
| 見積書の書き方 | 読み取れること | 読み取れないこと | 次にすること |
|---|---|---|---|
| ケレン一式 | 費用に含まれてはいる | 部位・程度・数量 | 部位と程度を書面で出してもらう |
| 3種ケレン ○㎡ 単価○円 | 程度と数量、他社との比較 | 活膜を残すかの判断根拠 | 数量の根拠になった図面や写真を見る |
| 記載なし | なし | 実施の有無そのもの | 下地処理の項目があるか聞く |
数量が社によって違うのは、拾った部位か程度の想定が違うからです。金額の高低より先に、数え方をそろえてもらうほうが早いです。
そのまま使える聞き方
電話でもメールでも使える形にします。
- どの部位に、どの程度のケレンをしますか
- 活膜は残す前提ですか、全面除去ですか。全面除去ならその理由を教えてください
- 錆止めは何回塗りますか
3つ目は、改修仕様書の表7.4.3が塗り替えを特記がなければC種とし、その工程が下塗り2回(1回目は素地露出部分、2回目は全面)である点が物差しです。回数だけ聞くと「しっかり塗ります」で終わりがちなので、見積書に回数を書いてもらうところまで頼みます。
工事中に撮ってもらう写真3枚
終わると確かめられない工程なので、写真を約束します。
- 洗浄が終わって乾いた状態
- ケレンが終わって錆止めを塗る直前
- 錆止めを塗り終えた状態
この3枚が、どこを削ったかをあとから確かめる材料になります。撮ってもらう約束は、着工前にしておくほうが揉めません。
屋根には上がらず、地上から見える範囲と写真で確かめます。気になったことを聞ける相手かどうかは、業者の選び方の段階で決まる部分もあります。
出典:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
よくある質問
ケレンについて実際に検索されている問いのうち、本文で正面から扱わなかったものをまとめます。数字の大小、道具、洗浄との順序、自分でやってよいかが中心です。
工事の中身は家ごとに違うので、答えられる範囲と答えられない範囲があります。ケレンの金額は本文で扱わないため、費用の記事へ送ります。
8つの問いは、見積書を前にした判断か、工事中の判断に直結するものを選びました。根拠は本文の各節の末尾に置いた出典と同じです。
3種ケレンのA・B・Cは何が違うのですか
作業の内容は同じで、傷んだ面積で分かれます。鋼橋の資料では、発さび面積が15〜30%なら3種A、5〜15%なら3種B、5%以下なら3種Cとされています。
3種Cの行は、発さび面積5%以下・塗膜異常面積5〜15%です。A・B・Cに分かれているのは、同じ作業内容でも手間と費用が変わるからです。
ケレンは自分でやってもいいですか
高い場所は勧められません。足場のない状態での作業と、古い塗膜の粉じんという2つの問題が同時に来ます。
手が届く範囲の鉄部については、外壁塗装のDIYで注意点を整理しています。削ったあと錆止めまで進めるかも、先に考える点です。
ケレンをした当日に塗ってもらえませんでした
鋼道路橋の資料には素地調整から下塗りまで4時間以内という注がありますが、住宅の塗り替えに適用される基準ではありません。雨や気温で延びることもあります。
日をまたぐなら、削った面をどう保護したかを聞いて記録します。
電動工具を使えば手作業より確実ですか
範囲が広い面では速く進みます。ただ鋼橋の資料は、動力工具や手工具では、くぼみ部や狭隘部の除せい(錆落とし)や塗膜除去を完全に行うことはできないと書いています。
入り組んだ部位は、道具を変えるか手で当てる判断が要ります。
見積書の「素地調整」はケレンとは違うのですか
同じ工程の別の呼び方です。国の仕様書は、新しく塗る面を素地ごしらえ、塗り替える面を下地調整と呼び分けます。
ケレンという語は、仕様書の塗装の章には出てきません。ただし作業の範囲は社によって違うので、どこにどの程度なのかは別に確かめてください。
ケレンをすると外壁に傷が付きませんか
改修仕様書は、汚れと付着物の除去を「素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により、除去する」としています。削る場所と、整えるだけの場所を分けるのが前提です。
心配な面は、どの道具を当てるかを先に聞きます。
サイディングにもケレンはしますか
改修仕様書に「サイディング」の語は出てこないため、この仕様書からは答えが出ません。窯業系の面では、メーカーの手引きが判断のもとになります。
窯業系サイディングの塗り替えで扱っています。
ケレンの費用はどれくらいですか
ケレンの単価はここに載せていません。工事全体の費用の考え方は北海道の外壁塗装の費用、足場については足場費用で扱っています。
ケレンの金額は部位の数と傷み方で動くので、単価だけ比べても答えが出にくい項目です。
まとめ|落とす量ではなく落とす場所で決まる
ケレンは、どこまで落とすかを選ぶ工程です。建物の塗り替えを扱う国の仕様書は、劣化部分は除去し、活膜部分は残すほうを既定にしています。
1種から4種という言い方は鋼道路橋の分野のもので、住宅で全面除去が常に必要になるわけではありません。見積書で確かめるのは、①ケレンの行があるか、②種別か作業内容が書かれているか、③数量が入っているか、の3つ。
工事が始まったら、洗浄後・ケレン後・錆止め後の写真3枚を残してもらいます。ご指摘や取材・監修のご相談はお問い合わせへどうぞ(工事の依頼と見積もりは受け付けていません)。
この記事は編集部が公的資料をもとにまとめたものです。引用した仕様書は公共建築の工事に、鋼道路橋の資料は道路橋に適用されるもので、戸建ての民間工事の基準ではありません。当サイトは施工を請け負っていません。

