外壁の劣化サインはどこを見る?点検の目安と北海道の注意点

劣化とトラブル

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月4日編集方針と検証の手順

外壁を見上げて、なんとなく色があせている気がする。壁の下のほうに細い線が入っている。でも雨漏りはしていないし、急ぐ話なのかどうかが分からない。

調べると「このサインが出たら塗り替えどき」という一覧が並びます。ただ、そこに書かれている症状は放っておくと家が傷むものと、見た目の問題にとどまるものが混ざっています。同じ扱いで慌てる必要はありません。

この記事は、住宅の維持保全について国が定めている基準と、木造住宅の劣化について国の研究機関がまとめた資料をもとに、どこを、いつ、どの順番で見るのかを整理したものです。凍害そのものの仕組みや、目地の打ち替えをどう判断するかは別の記事で扱っています。ここでは「気づく」ところまでを扱います。

なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。診断の代わりになるものでもなく、実際の判断は現地を見た業者の説明によります。

  1. 結論:見る順番は「高いところ」ではなく「水の通り道」
    1. この記事で扱わないこと
  2. 点検の目安は何年か
    1. 10年は「工事の時期」ではなく「見る時期」
  3. 外壁の面で見るサイン
    1. 粉が付くのは「終わり」ではなく「途中」
    2. ひび割れは「幅」より「どこにあるか」
    3. ふくれ・はがれは下地からの信号のことがある
    4. 汚れの筋は水の通り道を教えてくれる
  4. 外壁材によってサインの出方が違う
  5. 外壁以外で見るところ
    1. 屋根は「登らずに見る」
  6. 北海道で見落とされやすいところ
    1. 外壁の温度は気温より低い
    2. 雪が当たる高さに傷みが集中する
    3. つららとその跡
  7. いつ見るか
  8. 自分でどこまで見るか
    1. 室内側のサインも合わせて見る
  9. 点検の記録をどう残すか
    1. 業者の点検報告書で確認したいこと
  10. 業者に見てもらうときの準備
    1. その場で契約しない
  11. 工事と切り離して調べてもらう方法もある
    1. 塗装の点検とは目的が違う
  12. 「無料で点検します」と言われたら
  13. サインが出てからどれくらい待てるか
  14. よくある質問
    1. 築何年から気にすればいいですか
    2. 壁を触ると白い粉が付きます。すぐ工事が必要ですか
    3. 細いひびが1本だけあります
    4. 北側の壁だけ緑色になっています
    5. 点検は無料でしてもらえますか
    6. 雪が積もっている時期でも見てもらえますか
    7. 地震のあと、どこを見ればいいですか
    8. 自分で写真を撮るコツはありますか
    9. 点検を頼んだら、そのまま工事の話になりませんか
    10. 塗り替えたばかりですが、点検は必要ですか
    11. 賃貸や親の家でも同じように見ればいいですか
    12. 外壁材の種類が分かりません
  15. まとめ

結論:見る順番は「高いところ」ではなく「水の通り道」

先に全体像を示します。外壁の点検というと壁の面をながめる場面を思い浮かべますが、傷みが早く進むのは水が集まる場所と、水が抜けない場所です。

  • 水が集まる場所 … 窓の下、屋根と壁がぶつかるところ、といの下、バルコニーの付け根
  • 水が抜けない場所 … 北面、隣家との隙間、物置や植栽で日が当たらない面
  • 水が入る入口 … 目地の切れ、ひび割れ、外壁を貫通している配管やフードのまわり
  • 気づかれにくい場所 … 屋根の面、床下

国土技術政策総合研究所の資料は、この最後の点をはっきり書いています。「外皮の劣化や損傷は居住者が普段目にする外壁面では気付きやすいが、屋根面や床下では気付かれずに放置され勝ちである」という指摘です。玄関側の壁ばかり見ていても、傷みは反対側で進んでいることがあります。

この記事で扱わないこと

重なる話は既存の記事に譲ります。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章

点検の目安は何年か

「築10年で塗り替え」という言い方をよく見かけます。この10年という数字には、住宅の維持保全について国が定めた基準が下敷きになっています。

長期優良住宅の認定を受けるための基準を定めた告示(平成21年国土交通省告示第209号)は、維持保全の方法についてこう定めています。

告示が定めている点検の間隔

点検の時期が、それぞれ認定対象建築物の建築の完了又は直近の点検、修繕若しくは改良から10年を超えないものであること。あわせて、点検の結果を踏まえ必要に応じて調査・修繕・改良を行うこと、地震時及び台風時に臨時点検を実施することが求められています。

ここで注意が必要なのは、これは長期優良住宅の認定を受けた住宅に求められる基準だという点です。すべての住宅に法律で点検が義務づけられているわけではなく、認定を受けていない住宅について10年が適切だと国が示したものでもありません。それでも、公的に定められた数少ない間隔の基準なので、判断の出発点としては使えます。実際の間隔は、外壁材や仕様、その家の劣化の進み方で変わります。

10年は「工事の時期」ではなく「見る時期」

混同されやすいところです。告示が求めているのは点検であって、塗り替えではありません。10年たったら見る。見た結果しだいで直す。この順番です。

10年で必ず塗り替えが必要になるわけでもなければ、10年たっていないから見なくていいわけでもありません。次の表のように分けて考えると整理しやすくなります。

タイミング やること 根拠
直近の点検・修繕から10年以内 点検 告示209号の維持保全の基準
地震のあと 臨時点検 同上
台風・暴風のあと 臨時点検 同上
点検で異常が見つかったとき 調査・修繕・改良 同上

北海道は台風の直撃こそ多くありませんが、低気圧による暴風や暴風雪は毎年のように起きます。告示が想定しているのは強い風で建物が傷むことなので、雪をともなう暴風のあとに見ておくという読み替えは、無理のない範囲だと考えられます。

出典:国土交通省告示第209号「長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準」

外壁の面で見るサイン

外壁表面のひび割れ

まず壁そのものです。よく挙がる症状を、放置したときに何が起きるかで並べ替えました。

サイン 見え方 放置したとき 急ぎ具合
色あせ 全体が白っぽい 見た目の変化にとどまることが多い
粉が付く 触ると手に白い粉 塗膜の機能が落ちていく
細いひび 髪の毛ほどの線 広がると水の入口になる
幅の広いひび 線に厚みがある 水が入る。下地側の問題のことも
塗膜のふくれ・はがれ 浮いている、めくれている 下地が濡れている可能性
表面の欠け・層状のはがれ ぼろぼろ落ちる 外壁材そのものが傷んでいる
目地の切れ すきま、ちぎれ 水の入口になる

粉が付くのは「終わり」ではなく「途中」

手でこすると白い粉が付く状態は、塗膜の表面が分解して顔料が出てきているものです。これ自体は雨漏りに直結する現象ではありません。ただし塗膜の役目である「水をはじく」「紫外線から下地を守る」がだんだん効かなくなっている合図ではあります。

粉が付いたからといって、その年のうちに工事しなければならないわけではありません。気づいたら見積もりの検討を始める、くらいの位置づけで足ります。

ひび割れは「幅」より「どこにあるか」

ひび割れの幅で緊急度を語る説明をよく見かけますが、家全体の話としては場所のほうが重要です。窓の角から斜めに出ているひび、外壁を貫通している配管のまわりのひび、下屋の屋根と壁がぶつかるあたりのひびは、幅が細くても水の入口になりやすい位置です。

逆に、壁の真ん中にぽつんとある細い線は、同じ幅でも水が集まりにくい分だけ条件が違います。写真を撮っておいて、次に見たときに伸びていないかを比べるほうが役に立ちます。

ふくれ・はがれは下地からの信号のことがある

塗膜が浮いている、めくれている場合、原因が塗料の側にあるとは限りません。下地が湿っているために内側から押されていることがあります。この場合、上から塗り重ねても同じことが起こります。

国土技術政策総合研究所の資料は、モルタル外壁について、表層の塗膜の劣化やひび割れ、窓まわりの隙間から入った雨水でモルタルの含水率が高まり、その後の日射で水分が水蒸気になって裏側へ放散するという現象を説明しています。表に出ている症状の裏側で、壁の中の水が動いていることがあるという話です。

汚れの筋は水の通り道を教えてくれる

窓の下やといの継ぎ目の下に、黒い筋が伸びていることがあります。見た目の問題として片づけられがちですが、その筋は水が繰り返し同じ場所を流れている証拠です。

日本窯業外装材協会の資料は、サッシまわりから伝った水による汚れについて触れたうえで、寒冷地ではその水が凍って外壁材の劣化を早めることがあると指摘しています。汚れが出ている位置は、凍結の影響を受けやすい位置でもあるということです。

筋が出ている高さの壁を、あらためて近くで見てください。同じ面のほかの場所と比べて、表面がざらついていないか、目地が縮んでいないかを確認します。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章日本窯業外装材協会「サイディングの維持管理はどうするの お施主様へ」

外壁材によってサインの出方が違う

種類の違う外壁材の継ぎ目

同じ「ひび割れ」でも、外壁材が違えば意味が変わります。自分の家が何でできているかを知っておくと、見るポイントが絞れます。

外壁材 見た目の特徴 出やすいサイン
窯業系サイディング 板を張り継いだ目地がある 目地の切れ、板の端の欠け、反り
金属サイディング 継ぎ目が薄く、たたくと軽い音 傷からのさび、へこみ、継ぎ目のゆるみ
モルタル 継ぎ目がなく面が連続する ひび割れ、塗膜のふくれ、浮き
ALCパネル 目地が格子状に入る 目地の切れ、表面の吸水による傷み

窯業系サイディングは板の端(小口)から水を吸いやすく、そこから傷みが始まることがあります。金属サイディングは面のひび割れがない代わりに、傷やビス穴からのさびが問題になります。モルタルは面全体にひびが出るのが特徴で、1本1本を追うより全体の広がり方を見ます。

それぞれの材料の性格と、北海道での相性については外壁材の種類と選び方で扱っています。

外壁以外で見るところ

住宅の軒先と雨どい

壁だけ見ても片手落ちになります。北海道の住宅で、水の通り道として先に確認したいところを挙げます。

  1. とい … 落ち葉や土でつまっていないか。あふれた水は必ず壁を伝います
  2. 屋根と壁がぶつかるところ … 下屋のある家は、その付け根が要注意です
  3. バルコニーの床と手すりの付け根 … 防水層の立ち上がりが切れていないか
  4. 換気フード・配管の貫通部 … まわりの充填材が切れていないか
  5. 基礎の立ち上がり … 表面がはがれていないか、ひびが入っていないか
  6. 窓の下 … 汚れの筋が伸びていないか

とくに「といのつまり」は軽く見られがちです。北方建築総合研究所などがまとめた屋根の雪処理に関する資料でも、冬を迎える前の掃除と点検の重要性が指摘されています。無落雪屋根の場合は、この点がさらに重くなります(無落雪屋根の塗装で詳しく扱っています)。

屋根は「登らずに見る」

屋根の状態は気になるところですが、自分で登るのはやめてください。警視庁は点検商法への注意として、来訪した業者を屋根に登らせないよう呼びかけていますが、これは所有者自身についても同じことが言えます。屋根の上は、慣れていない人が安全に作業できる場所ではありません。

代わりにできることを挙げます。

  • 離れた場所から双眼鏡で見る
  • 2階の窓から見える範囲を写真に撮る
  • 道路や隣地から見える面を、同じ位置・同じ時期に毎年撮っておく

同じ構図で撮り続けると、変化に気づきやすくなります。業者に見せる材料としても使えます。

出典:北海道立総合研究機構北方建築総合研究所ほか「戸建て住宅の屋根の雪処理計画」警視庁「点検商法」

北海道で見落とされやすいところ

雪が寄せられた住宅の外壁の足元

全国向けの解説では触れられない条件があります。

外壁の温度は気温より低い

国土技術政策総合研究所の資料には、寒冷地に限らず冬期には夜間放射によって屋根の外表面温度が外気温より4〜5℃、外壁面で2〜3℃低くなり、凍害発生リスクが高まるという記述があります。

これは点検の考え方に関わります。天気予報の最低気温が0℃を少し上回っていても、壁の表面はすでに氷点下ということが起こりうるからです。壁が濡れたまま夜を迎える条件が、暦の上での冬より長く続いている可能性があります。

雪が当たる高さに傷みが集中する

雪が寄せられる面、屋根から落ちた雪が積み上がる面では、壁の下のほうだけ状態が違うことがあります。腰から下だけ塗膜がやせている、その高さだけ表面が欠けている、といった見え方です。

この場合、原因は塗料の寿命ではなくその場所の条件です。同じ材料で塗り替えても、また同じ場所から傷みます。雪の寄せ方を変える、その面だけ仕様を変えるといった話につながります。

つららとその跡

軒先に大きなつららができる家は、屋根の断熱や換気に課題があることがあります。すが漏りは、屋根にたまった雪の下で解けた水が凍り、行き場を失って室内側に回る現象です。つららは、その手前の状態を外から見える形で教えてくれるサインと考えられます。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章

いつ見るか

雪解け直後の北海道の住宅

点検の時期は、北海道では自然に絞られます。

1年のうちに見ておきたい4つのタイミング
1年のうちに見ておきたい4つのタイミング
時期 見えるもの 次の動き
雪が解けた直後 冬のあいだに進んだ傷み 気になる箇所を写真に残す
初夏 全体の状態 必要なら複数社に見てもらう
秋・雪が来る前 といのつまり、外れ 掃除、部分的な補修
暴風・地震のあと ずれ、外れ、割れ 臨時点検

いちばん情報量が多いのは雪が解けた直後です。冬のあいだに何が起きたかが、まだ生の状態で残っています。ここで写真を撮っておくと、その年に工事をするかどうかの判断がしやすくなります。

ただし、雪解け直後は工事の適期ではありません。塗装ができる時期については北海道で外壁塗装ができる時期で整理しています。見る時期と、工事する時期は別と考えてください。

自分でどこまで見るか

住宅の外壁を見上げる人

やっていいことと、やらないほうがいいことを分けます。

やってよいこと やらないほうがよいこと
地面から見上げて写真を撮る 屋根に登る
手の届く高さの壁を触る はしごで高所に上がる
といの下に水が落ちた跡を探す ひび割れを自分で埋める
室内側の天井・壁のしみを確認する 洗剤や高圧洗浄機で壁を洗う
点検口から床下・小屋裏をのぞく 塗膜をはがして下地を確かめる

自分で埋める、自分で洗うのは避けてください。ひび割れを充填材で埋めると、後の補修で正しい処理をするときに邪魔になります。高圧洗浄機も、扱いを誤ると塗膜や目地を痛めます。

室内側のサインも合わせて見る

外壁の話ですが、室内側で気づくこともあります。窓の上や天井の隅にしみがある、押し入れの奥だけかび臭い、壁紙が波打っている。こうした症状は、外皮のどこかから水が入っている可能性を示します。

外と中の両方を見ておくと、業者に説明するときに話が早くなります。

点検の記録をどう残すか

点検は一度きりで終わるものではありません。前と比べて変わったかどうかが判断の中心になるので、記録の残し方で次の点検の価値が変わります。

手間をかけずに続けられる範囲で、次の項目だけ残しておけば足ります。

  1. 撮影日 … 写真の日付が残る設定にしておく
  2. 撮影位置 … 「玄関前の道路から」「東側の物置の横から」程度のメモ
  3. 気になった箇所 … 場所と、そのとき思ったことを一行
  4. そのとき何をしたか … 掃除した、業者に見てもらった、様子を見た

紙のノートでもスマートフォンのメモでもかまいません。大事なのは形式より、同じ場所を毎年撮ることです。

業者の点検報告書で確認したいこと

業者に見てもらった場合は、報告の内容も残ります。受け取った資料に次の要素が入っているかを見てください。

項目 入っていると助かる理由
撮影日と撮影箇所が分かる写真 次回と比べられる
どこを見て、どこを見ていないか 未確認の部分が分かる
症状と、そう判断した理由 説明の中身を比べられる
急ぐもの・待てるものの区別 予算の組み立てに使える

とくに「どこを見ていないか」が書かれている報告は信頼できます。屋根の裏側や、隣家との隙間など、実際には確認できない部分は必ずあるからです。すべてを見たかのような報告のほうが、かえって注意が必要です。

業者に見てもらうときの準備

点検を依頼する前に手元にそろえておくと、話がかみ合いやすくなります。

  1. 建てた年(着工日が分かる書類) … 外壁材の種類や、後述する石綿の扱いにも関わります
  2. 過去の工事の記録 … 前回いつ、どこを、どんな材料で直したか
  3. 自分で撮った写真 … 気になっている箇所を先に共有できます
  4. 室内側で気づいていること … しみ、におい、結露の出方

とくに着工日は重要です。石綿が含まれる建材が使われている可能性は着工日で切り分けられ、改修工事の前に調べることが法律で決まっています。詳しくは外壁の改修とアスベストの事前調査で扱っています。

その場で契約しない

点検の結果を聞いた流れで契約するのは避けてください。見てもらうことと、頼むことは分けます。複数社に見てもらうと、同じ壁について違う説明が出てくることがあり、それ自体が判断の材料になります。

見積もりの中身をどう比べるかは外壁塗装の見積書はどこを見る?で整理しています。業者そのものの調べ方は北海道での業者の選び方を参照してください。

工事と切り離して調べてもらう方法もある

住宅を点検する建築士

工事を請け負う会社に点検を頼むと、どうしても提案とセットになります。状態を知ることだけが目的なら、調査を専門にする仕組みがあります。

国土交通省は「既存住宅状況調査技術者講習制度」を設けています。この講習を修了した建築士が行う調査が既存住宅状況調査(インスペクション)で、主に住宅の売買のときに使われるものです。

既存住宅状況調査で見る部分

対象は「構造耐力上主要な部分」(基礎、壁、柱、小屋組、土台、床版、屋根版、はり・けたなど)と、「雨水の浸入を防止する部分」(屋根、外壁、これらの開口部の建具、屋根や外壁の内部・屋内にある雨水の排水管)です。この基準にもとづく既存住宅状況調査として実施できるのは、国土交通大臣の登録を受けた講習の修了証明書を持つ建築士(既存住宅状況調査技術者)で、建築士の資格区分に応じて調査できる建物の範囲が決まっています。住宅の点検そのものを、ほかの人が行ってはいけないという意味ではありません。

制度の背景には、平成30年4月1日に施行された宅地建物取引業法の改正があります。住宅を売買するときに、この調査のあっせんについて説明することが求められるようになりました。売買が前提の制度なので、塗り替えの相談とは目的が違います。

塗装の点検とは目的が違う

混同しないよう整理しておきます。

既存住宅状況調査 塗装業者の点検
行う人 講習を修了した建築士 その会社の担当者
目的 劣化事象があるかを判定する 工事の要否と内容を見積もる
見る範囲 構造と雨水の浸入に関わる部分 塗装に関わる範囲が中心
費用 有料が前提 無料の会社もある

塗り替えの検討だけであれば、複数の塗装業者に見てもらうので足りることがほとんどです。雨漏りの疑いがある、下地まで傷んでいそう、売却も視野に入れているといった場合には、工事と切り離した調査を検討する価値があります。

出典:国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度について」国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」

「無料で点検します」と言われたら

訪ねてきた業者に点検を勧められる場面があります。国民生活センターには、点検をきっかけとした住宅リフォームの相談が継続的に寄せられています。

この記事の立場としては、訪問してくる業者がすべて問題があるという意味ではありません。住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)も、訪問販売がすべて悪質というわけではないと明記しています。

ただし、次の進み方には注意してください。

  • 屋根に登らせて、撮ってきた写真だけを根拠に契約を急がせる
  • 今日中に決めれば安いという条件を出す
  • 会社の名前や所在地がその場で確認できない

断り方やクーリング・オフの扱いは訪問販売と点検商法の記事にまとめています。

出典:国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」住まいるダイヤル「悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!」

サインが出てからどれくらい待てるか

冬の北海道の住宅の外壁

「見つけたけれど、今年は都合が悪い」という場合の考え方です。3段階に分けます。

見つけたサインの急ぎ具合を3段階に分ける
見つけたサインの急ぎ具合を3段階に分ける
段階 状態 考え方
様子を見てよい 色あせ、粉が付く、壁の中央の細い線 写真を残し、翌年に比べる
その年のうちに相談 目地の切れ、窓まわりのひび、といの不具合 水の入口をふさぐ話が先
先延ばししない 塗膜のふくれ、外壁材の欠け、室内のしみ 下地まで進んでいる可能性

判断の分かれ目は「水が入っているかどうか」です。見た目だけの話であれば時間をかけられますが、水が入りはじめていると、次の冬を越すあいだに範囲が広がることがあります。

北海道では、この「次の冬」が重い意味を持ちます。入った水は凍って体積が増え、材料を内側から押します。凍害の記事で扱っているとおりです。

よくある質問

築何年から気にすればいいですか

目安として、建ててから、あるいは前回の修繕から10年を区切りに見てください。国の告示が維持保全の点検間隔として示している数字です。ただし、これは点検の間隔であって工事の時期ではありません。

壁を触ると白い粉が付きます。すぐ工事が必要ですか

必要とは限りません。塗膜の表面が分解している状態で、これだけで雨漏りにつながるものではありません。ほかのサインが出ていないかを合わせて確認し、出ていなければ検討を始める合図として扱ってください。

細いひびが1本だけあります

場所によります。窓の角、配管のまわり、屋根と壁の取り合いにあるものは、細くても水の入口になりやすい位置です。壁の中央にある1本であれば、写真を撮って翌年と比べるところから始めても遅くはありません。

北側の壁だけ緑色になっています

日が当たらず乾きにくい面では、藻やかびが出やすくなります。それ自体は外壁材を壊す現象ではありませんが、その面が長く濡れていることの表れではあります。壁の状態とあわせて見てください。

点検は無料でしてもらえますか

無料で行う会社もあります。ただし無料であることと、内容が十分であることは別です。どこをどう見たのか、写真や記録が残るのかを確認してください。契約前の見積書について不安があれば、住まいるダイヤルの無料の見積チェックサービスも使えます(電話のみ・契約前限定です)。

雪が積もっている時期でも見てもらえますか

見える範囲は限られます。壁の下部は雪に埋まり、屋根は雪の下です。冬に相談すること自体は問題ありませんが、状態の把握という意味では雪解け後のほうが情報量があります。

地震のあと、どこを見ればいいですか

告示は地震時の臨時点検を求めています。外からは屋根材のずれ、外壁のひび、基礎のひび、といの外れを、室内からは建具の動き、壁と天井の隅を見てください。異常があれば早めに相談してください。

自分で写真を撮るコツはありますか

同じ場所から、同じ画角で撮ることです。比べられる写真でないと変化が分かりません。スケール代わりに定規やコインを添えて撮ると、ひびの幅の変化も追えます。

点検を頼んだら、そのまま工事の話になりませんか

なることはあります。依頼するときに「今回は点検だけ」と伝えておくと、話を分けやすくなります。結果を持ち帰って検討する時間を取ってください。

塗り替えたばかりですが、点検は必要ですか

必要です。塗り替えは表面をやり直す工事で、といのつまりや屋根材のずれ、目地の状態がすべて解決するわけではありません。塗装後も、といの掃除と暴風後の確認は続けてください。

賃貸や親の家でも同じように見ればいいですか

見る箇所は同じです。ただし賃貸の場合、補修の判断や費用負担は所有者側の話になります。気づいた点を写真で伝えるところまでにとどめ、勝手に業者を手配しないでください。離れて暮らす親の家では、帰省のたびに同じ場所を撮っておくと変化を追えます。

外壁材の種類が分かりません

板の継ぎ目があるかどうかで大きく分かれます。縦横に目地が走っていればサイディングかALCパネル、継ぎ目がなく面が連続していればモルタルが候補です。たたいたときに軽い金属音がすれば金属サイディングの可能性があります。新築時の図面や仕様書が残っていれば、そこに書かれています。

出典:住まいるダイヤル「リフォームの見積書に関する相談」

まとめ

外壁の点検は、水が集まる場所と抜けない場所から見るのが順番です。壁の面を漫然とながめるより、窓の下、といの下、屋根と壁の取り合い、北面を先に確認したほうが早く手がかりが出ます。

時期の目安は直近の点検・修繕から10年以内。加えて地震のあと、暴風のあとは臨時に見る。これは長期優良住宅の維持保全について国が定めた基準の考え方で、認定を受けていない住宅では参考のひとつとして使えます。

北海道では、夜間放射で壁の表面温度が外気温より2〜3℃低くなること、雪が当たる高さに傷みが集中すること、屋根の面は気づかれにくいことを頭に入れておいてください。全国向けの解説には出てこない条件です。

そして、見つけたサインは「水が入っているかどうか」で急ぎ具合が変わります。色あせや粉は待てますが、塗膜のふくれや外壁材の欠け、室内のしみは、次の冬を越す前に相談しておくほうが、傷みが広がる範囲を抑えられます。

まずは、雪が解けたあとに家のまわりを一周して写真を撮るところから始めてください。それが翌年の比較材料になります。

雪が原因で同じ場所が傷む場合の見方は雪から外壁を守る、付帯部の見方は付帯部の塗装で扱っています。

ひび割れを見つけたときの判断は外壁のひび割れはどこまで大丈夫か、室内にしみが出ている場合は雨漏りの原因の調べ方で扱っています。

緑や黒の汚れをどう受け止めるかは、外壁のコケ・藻・カビにまとめています。

柄を残すクリア塗装は、劣化が進む前しか選べません。判断の目安はクリア塗装の記事にまとめています。

見つけた症状が一面だけか家全体かで、塗る範囲の考え方が変わります。詳しくは部分塗装の記事をご覧ください。

海が近い家では、軒下や庇の裏まで見る必要があります。理由は外壁の塩害の記事にまとめました。

塗装後に出た膨れや剥がれの原因の切り分けは膨れ・剥がれの原因と対処にまとめています。

ドローンを使った点検の法令と限界は外壁のドローン点検にまとめています。

モルタル外壁は、叩いて確かめる浮きという症状が加わります。モルタル外壁の塗装を参照してください。

本記事は点検の考え方を整理したもので、個別の住宅の診断に代わるものではありません。長期優良住宅の維持保全の基準は認定を受けた住宅に適用されるもので、すべての住宅に法律上の点検義務があるという意味ではありません。実際の判断は、現地を確認した施工業者や専門家によります。

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