外張り断熱と外壁の更新|塗り替えとは別の工事

塗料と外壁材

最終更新:2026年9月6日公開:2026年8月5日編集方針と検証の手順

外壁の塗り替えを検討しているときに、「どうせ足場を架けるなら断熱もやったほうがいいのでは」と考える方がいます。北海道では自然な発想です。

ただ、塗装と断熱改修は、まったく別の工事です。金額の桁が違い、必要な設計も違い、補助制度の扱いも違います。同じ「外壁の工事」という言葉でまとめると、判断を誤ります。

この記事では、国の補助事業の要件と、研究機関の資料をもとに、外側から断熱を足す工事が何をする工事なのか、塗り替えとどう違うのか、補助の対象は何なのかを整理します。

なお、この記事は工事を請け負う立場で書いたものではありません。補助制度の内容は年度で変わるため、公式の案内で最新の情報をご確認ください。

結論:塗料は断熱材ではない

先に要点を示します。

  • 国の補助事業で躯体の断熱改修の対象になっているのは、断熱材です。塗料ではありません
  • 対象製品は、原則として指定のJISに該当し熱伝導率0.052以下のノンフロン製品とされています
  • 補助額は断熱材の使用量に応じて設定され、性能の区分ごとに単価が変わります
  • 外壁の断熱改修は、通気層と防湿層の扱いを含めた設計が要ります。塗装の延長ではありません

「断熱塗料」という言葉を見かけることがありますが、補助制度が断熱材として扱うものとは別のものです。ここを混同しないでください。

この記事で扱わないこと

外側から断熱を足すとはどういう工事か

外張り断熱の施工中

既存の外壁の外側に断熱材を張り、その上に新しい外装材を施工する工事です。外張り断熱や付加断熱と呼ばれます。工事の中身を分解すると、こうなります。

工程 内容
調査 既存の壁の造り、通気層の有無、下地の状態
足場 塗装と同じく必須
下地 既存外装の撤去または上から下地を組む
断熱 断熱材の施工
通気 通気層の確保と、入口・出口の処理
外装 新しい外壁材の施工
取り合い 窓、換気口、といなどの納まりの作り直し

いちばん手間がかかるのが取り合いです。壁が厚くなるため、窓の見込み、換気フード、といの位置、屋根との取り合いがすべて変わります。塗装のように「表面をやり直す」工事とは性質が違います。

厚くなる寸法は、断熱材の種類と厚みによりますが、数センチから十数センチの単位で変わります。その結果、次のようなことが起こります。

  • 窓が壁の奥に入るため、見込み材や水切りを作り直す
  • 庇や軒の出が相対的に短くなる
  • 換気フードのパイプが足りなくなる
  • といの位置と支持金物を作り直す
  • 敷地の境界との距離が変わる

どれも設計で解決できることですが、解決する手間が費用に乗るということです。

国の補助事業は何を対象にしているか

断熱材のロール

2026年時点で実施されている国の事業に、みらいエコ住宅2026事業があります。国土交通省・経済産業省・環境省が連携する「住宅省エネ2026キャンペーン」の一環として、住宅の省エネリフォーム等を支援するものです。

このなかに躯体の断熱改修という区分があり、要件が公表されています。

躯体の断熱改修の対象

外壁、屋根・天井又は床の部位ごとに、最低使用量以上の断熱材を使用する改修を対象とします。過去事業では断熱材の最低使用量の基準値のみを設定し、実際の使用量に関わらず補助額は一定でしたが、本事業では断熱材の使用量に応じて補助額を設定しています。

対象となる製品の基準も具体的です。原則として指定されたJIS(JIS A9504、A9511、A9521、A9523、A9526、A5905、A5901、A5914)に該当し、熱伝導率が0.052 W/(m・K)以下のノンフロン製品で、性能担保と品質管理体制について定められた類型のいずれかを満たすものとされています。

ここに塗料は出てきません。対象は断熱材です。

断熱材の量だけで決まるわけではない

ここが誤解されやすいところです。断熱材の使用量は、この工事の要件にすぎません。補助を受けるには、住宅と工事の組み立てのほうにも条件があります。

  • 住宅 … 原則として平成28年12月31日以前に新築された住宅。平成29年以降の住宅でも、平成11年基準を満たさないことを証明できれば対象
  • 工事の組み立て … 外皮に面する開口部がある1つの居室(トリガールーム)で、あらかじめ定められた組み合わせの要件化工事を行うこと。断熱改修はそのうえで補助額を計算する「補助対象工事」にあたります
  • 契約と着工 … みらいエコ住宅事業者と工事請負契約を結んでいること

つまり、外壁に断熱材を入れる工事だけを単独で申請する、という形にはなりません。自分の家と計画が当てはまるかどうかは、事業者に確認してください。

出典:みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【リフォーム】」

補助額は使用量で決まる

厚みのある断熱材

外壁の断熱改修について公表されている補助額を引用します。断熱材の区分(熱伝導率の範囲)ごとに単価が変わります。

外壁の断熱改修の補助額(断熱材1立方メートルあたり)
外壁の断熱改修の補助額(断熱材1立方メートルあたり)
部位 断熱性能の区分 補助額(円/立方メートル)
外壁 F 44,000
E 30,000
D 15,000
C、B、A-2、A-1 14,000

区分Fは熱伝導率0.022以下、区分A-1は0.052〜0.051、区分A-2は0.050〜0.046です。性能が高い断熱材ほど単価が高い設計になっています。

また、断熱材の最低使用量を算出するための断熱材基準量も示されています。戸建住宅の外壁では、熱伝導率0.052〜0.035の断熱材で9.7立方メートル、0.034以下で5.3立方メートルが基準量とされ、これにトリガールームの床面積÷補助対象住宅の床面積を掛けて最低使用量を求めます。

細かい話ですが、使う断熱材の種類によって必要な量が変わるという点は押さえておいてください。

出典:みらいエコ住宅2026事業「躯体の断熱改修(リフォーム)」国土交通省「みらいエコ住宅2026事業について」

断熱材の区分を知っておくと話が早い

種類の違う断熱材

補助額が区分ごとに違うため、どの区分の断熱材を使うかが金額に直結します。公表されている区分と熱伝導率の範囲を整理します。

区分 熱伝導率 W/(m・K) 断熱材の種類の例
A-1 0.052〜0.051 吹込み用グラスウール(天井用)、インシュレーションファイバー
A-2 0.050〜0.046 グラスウール断熱材(通常品・高性能品の一部)
B 0.045〜0.041 グラスウール、ロックウール、ビーズ法ポリスチレンフォーム4号
C 0.040〜0.035 グラスウール高性能品、押出法ポリスチレンフォーム1種、吹付け硬質ウレタン(A種3)
D 0.034〜0.029 押出法ポリスチレンフォーム2種、硬質ウレタンフォーム1種、吹付け硬質ウレタン(A種1・2)
E 0.028〜0.023 押出法ポリスチレンフォーム3種、フェノールフォーム2種3号、硬質ウレタンフォーム各種
F 0.022以下 押出法ポリスチレンフォーム3種の一部、フェノールフォーム1種

数字が小さいほど熱を通しにくいという意味です。同じ厚みなら性能が高く、逆に言えば同じ性能なら薄く済みます。壁を厚くしたくない場合に効いてきます。

なお、区分「A-1」〜「C」と区分「D」〜「F」の双方を用いる場合、使用量の算出にあたって区分「D」〜「F」の使用量に1.5を乗じて合算できるという取り扱いも示されています。

出典:みらいエコ住宅2026事業「躯体の断熱改修」

部位ごとの基準量が決まっている

壁に取り付けた断熱ボード

断熱材の最低使用量は、部位ごとの断熱材基準量に、トリガールームの床面積÷補助対象住宅の床面積を掛けて求めるとされています。基準量は次のとおりです。

施工部分 熱伝導率 0.052〜0.035 熱伝導率 0.034以下
外壁(戸建住宅) 9.7 5.3
外壁(共同住宅) 4.9 2.7
屋根・天井 9.2 5.1
4.4 2.4
床(基礎断熱の場合) 1.32 0.72

単位は立方メートルです。性能の高い断熱材を使えば、必要な量そのものが減るという関係が読み取れます。

また、最低使用量に満たない躯体の断熱改修は要件化工事に該当しないとされる一方、他の工事により要件化工事が行われている場合は、最低使用量に満たない断熱改修でも使用量に応じて補助を受けることができるという説明も置かれています。

細かい話ですが、窓の改修などと組み合わせる場合に扱いが変わるということです。組み合わせ方は事業の公式案内でご確認ください。

出典:みらいエコ住宅2026事業「躯体の断熱改修」

申請するのは事業者

打ち合わせをする現場

この種の事業では、登録した事業者が交付申請の手続きを行うのが一般的な形です。住まい手が自分で申請する制度ではありません。

したがって、実務としては次のようになります。

  • 工事を頼む会社がその事業に登録しているかを確認する
  • 使う断熱材が対象製品に該当するかを確認する
  • 着工の時期が事業の対象期間に入っているかを確認する
  • 必要な納品証明書などの書類を出してもらえるか確認する

とくに契約と着工の順番は注意が必要です。みらいエコ住宅2026事業では、次のように定められています。

  • 工事着手の期間は2025年11月28日から、遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合はその時点まで)
  • 契約日そのものは問わないが、着工までに工事請負契約が締結されていること。契約より前に着工した場合は対象になりません
  • 交付申請は工事の完了後に提出することができます

気をつけるのは「申請前に着工したらだめ」ではなく、「契約前に着工したらだめ」という点です。制度の探し方と申請でつまずきやすい点は補助金の記事にまとめています。

出典:みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【リフォーム】」

もうひとつ、補助を前提に工事の内容を決めないでください。制度は年度で変わり、予算の上限に達して受付が終了することもあります。建物にとって必要な工事を先に決め、そのうえで使える制度があれば使うという順番が安全です。

塗装との違いを整理する

塗装中の外壁

混同されやすいので、並べて比べます。

外壁塗装と外張り断熱改修は別の工事
外壁塗装と外張り断熱改修は別の工事
外壁塗装 外張り断熱改修
目的 外装材と塗膜の維持 断熱性能を上げる
触る範囲 表面 壁の構成そのもの
窓まわり 基本的に変わらない 納まりが変わる
設計 仕様の選定が中心 結露計算を含む設計が要る
工期 おおむね2〜3週間 大きく長くなる
費用 百万円前後の帯 それを大きく超えることが多い
補助の対象 塗料は対象外 断熱材が対象になりうる

費用の帯は建物の規模と仕様で大きく変わるため、ここに書いた比較は考え方の整理としてご覧ください。実際の金額は見積もりによります。塗装の費用感は費用相場の記事で扱っています。

通気層を止めない設計が要る

通気層をつくる胴縁

外側に断熱材を足すと、壁の中の温度分布が変わります。国の研究機関の資料は、結露発生リスクと関連する要因として断熱層内外各層の透湿抵抗比、層内の温度勾配、断熱層外気側の通気措置、熱橋の形成、構成材の吸放湿特性の5つを挙げています。

外張り断熱では、このうち通気措置の扱いが特に重要になります。同資料は、通気構法において通気層が浸入雨水の移動経路を分断し、排出経路として機能すること、そして室内側から移動する水蒸気の排出路となるため、壁内結露発生および躯体木部の長期湿潤化リスクの軽減にも役立つとしています。

断熱材を足したあとに新しい通気層をどこに設けるのか。ここが設計の要点です。

屋根との取り合いに注意

北海道立総合研究機構の研究では、屋根のかぶせ改修について下屋と外壁の取り合いで壁の通気層下部をふさぎ、耐久性を下げるという指摘があります。屋根と外壁の工事を続けて行う場合、取り合い部で通気が切れていないかを確認してください。

壁の中の水の話は壁の中の結露の記事で詳しく扱っています。

出典:国土交通省国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン」第3編第Ⅳ章北海道立総合研究機構「外壁の通気性能を阻害しない屋根かぶせ改修工法」研究概要

窓を先に考えるという順番

断熱の話をするとき、壁より先に窓という順番がよく示されます。国の補助事業でも、断熱窓の改修を対象とする事業が別に置かれています。

また、所得税のリフォーム促進税制では、省エネ改修において窓の断熱改修が必須とされています。壁や床の断熱だけでは対象にならず、窓とセットであることが前提という組み立てです。

順番として考えやすいのは次の形です。

  • 1. 窓 … 面積あたりの効果が大きい。工事の規模も比較的小さい
  • 2. 天井・屋根 … 熱は上に逃げる。小屋裏からの施工なら外装を触らずに済む場合がある
  • 3. 床・基礎 … 足元の寒さに効く
  • 4. 壁 … 外装の更新と合わせて考える

壁の断熱を最後に置くのは、外装の更新と同時でないと効率が悪いからです。逆に言えば、外壁材の寿命が来ているときが、壁の断熱を考えるタイミングということになります。

減税の中身は減税とリフォームローンの記事で扱っています。

塗り替えか、かぶせか、断熱かの判断

外壁に手を入れるとき、選択肢は3つに分かれます。

選択肢 向く状況
塗り替え 外壁材そのものは健全。塗膜の劣化が主
かぶせ(重ね張り) 外壁材が傷んでいる。下地は使える
張り替え+断熱 外壁材の更新が必要。断熱も上げたい

判断の起点は外壁材が傷んでいるかどうかです。凍害で表面が欠けている、基材が露出している、といった状態であれば、塗り替えだけでは足りない可能性があります。

凍害の見分け方は凍害の記事、かぶせ工法の考え方はカバー工法の記事にまとめています。

出典:みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【リフォーム】」

工事中の暮らしはどうなるか

塗り替えと違い、既存の外装をはがす工法を選んだ場合は、その期間があります。既存外装を残して上から重ねる工法であれば、この期間はありません。騒音、粉じん、雨仕舞い、費用のいずれも工法によって変わるので、どちらの工法での見積もりなのかを確かめてください。住みながらの工事になる場合、影響を先に把握しておいてください。

場面 影響
外装の撤去中 音と粉じん。窓を開けられない日が続く
壁を開けている期間 雨仕舞いの養生。天候で工程が動く
窓まわりの作り直し 一時的に窓が使えない日がある
換気口・給排気 位置が変わることがある
工期全体 塗装より長い。日程の余裕が要る

とくに壁を開けている期間の天候は、工期に直結します。北海道では、この期間に雨や雪が続くと工程が止まります。秋に入ってからの着工は避けたほうが無難です。

工事中の生活と近隣配慮の考え方は工事の流れと工期で扱っています。

石綿の事前調査が関わることがある

既存の外壁材を撤去する工事では、石綿の事前調査が関わります。塗り替えのように表面だけを扱う工事とは、ここが違います。

ここは線引きを誤りやすいところです。厚生労働省は、施工業者(元請事業者)は原則として工事の規模・種類にかかわらず、改修等の対象箇所すべての材料に対し事前調査を行う必要があるとしています。外装をはがす工事はもちろん、塗り替えを含む改修工事も対象になりえます。削る・壊すかどうかで決まるものではありません。

義務の主体も分けて理解してください。事前調査を行うのは施工業者(元請事業者)で、住まい手が自分で調べるものではありません。住まい手の側は、調査結果の報告を受けることと、調査や必要な措置にかかる費用と工期を見込んだ計画にすることが求められます。調査の結果によっては、費用と工期が変わります。

出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト 小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」

制度の中身と、施主がやること・やらなくてよいことはアスベストの事前調査の記事にまとめています。見積もりの段階で、この費用が入っているかを確認してください。

誰に相談すればよいか

外張り断熱は、塗装業者の守備範囲を超えることがあります。相談先の候補を挙げます。

  • 建築士(設計と結露の検討ができる)
  • 断熱改修の実績がある工務店
  • 新築時の施工会社(図面と仕様を持っている可能性)
  • 補助事業の登録事業者

確認したいのは、結露の検討をしているかという点です。「断熱材を足せば暖かくなります」だけの説明であれば、通気と防湿の扱いをどう考えているかを聞いてみてください。

聞き方の例を挙げます。専門的に踏み込む必要はありません。

  • 新しい通気層はどこにできますか。空気の入口と出口は」
  • 「既存の防湿層はそのままでいいのですか
  • 窓まわりの水切りはどう作り直しますか」
  • 「下屋と外壁の取り合いはどう納めますか

これらに具体的な答えが返ってくるかどうかが、判断の材料になります。質問できること自体が、この記事を読む意味だと考えてください。

業者選びの一般的な視点は業者の選び方にまとめています。

費用の見通しをどう立てるか

外張り断熱の費用は、建物の規模、既存外装をはがすか残すか、窓まわりの納まり、外装材の種類で大きく変わります。相場として一律に示せるものではありません。

現実的な進め方はこうです。

  • まず塗り替えの見積もりを取り、下限の目安を知る
  • 次に外装の更新を含む見積もりを取る
  • そのうえで断熱を足す場合の追加を出してもらう
  • 補助の対象になる部分がいくらか分けて示してもらう

3段階で比べると、どこにいくら払うのかが見えます。ひとつの合計金額だけを見ても判断はできません。見積書の読み方は見積書のチェックポイントで扱っています。

あわせて確認したいのが足場の扱いです。塗り替えでも外張り断熱でも足場は必要ですが、工期が長いぶん、足場を架けておく期間も長くなります。見積書のなかで、足場の費用が期間に応じて変わる契約になっていないかを確かめてください。足場の考え方は足場費用の記事にまとめています。

いま何が寒いのかを先に確かめる

断熱を足す前に、どこから寒さが来ているのかを確かめてください。壁とは限りません。

  • 窓のそばが寒い … 窓の性能。まずここ
  • 足元だけが冷たい … 床、基礎、床下の状態
  • 部屋によって差が大きい … 断熱の抜け、熱橋、暖房の効き方
  • すきま風を感じる … 気密。断熱材を足しても解決しないことがある
  • 天井近くだけ暖かく足元が寒い … 空気の動き。暖房の配置

すきま風は断熱ではなく気密の問題です。断熱材を足しても、隙間が残っていれば体感は変わりにくくなります。寒さの原因を切り分けてから工事を選ぶという順番が要ります。

国の研究機関の資料も、想定しない室内温湿度環境の例として局所暖房や24時間換気装置の意図的な運転停止を挙げています。設備の使い方が原因である場合もあるということです。

既存の壁の造りで工法が変わる

外側から断熱を足せるかどうかは、既存の壁がどう作られているかによります。確認する項目を挙げます。

確認すること 影響
通気層があるか 新しい通気層の作り方が変わる
防湿層の状態 室内側の湿気の入り方
既存断熱材の種類と厚み 足す量の設計
下地の健全性 新しい外装を留められるか
外壁材の種類 撤去するか、残すか
基礎の立ち上がりの納まり 壁が厚くなったときの水切り

新築時の図面が残っていれば、多くが分かります。図面がない場合は、一部を開けて確認することになります。この調査費用も見積もりに含まれているかを確認してください。

出典:国土技術政策総合研究所「木造住宅の劣化対策ガイドライン 第Ⅳ章 劣化リスク分析・同解説」

「断熱塗料」をどう考えるか

遮熱や断熱をうたう塗料があります。効果を否定するものではありませんが、制度が断熱材として扱うものとは別だという点は押さえてください。

補助事業が対象としているのは、指定のJISに該当し熱伝導率0.052以下の断熱材です。塗膜の厚みは通常ミリメートル未満で、断熱材のような厚みを持ちません。

北海道の住宅で暖房負荷を下げたいのであれば、窓、天井、壁、床のどこにどれだけ断熱を足すかという設計の話になります。塗料の選択でその代わりになるとは考えないほうが安全です。

塗料そのものの選び方は寒冷地で選ぶ塗料にまとめています。機能をうたう塗料をどう受け止めるかについても、そちらで触れています。

出典:みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【リフォーム】」

工事の時期をどう決めるか

北海道では、外装をはがす工事の時期にも制約があります。

  • 壁を開けている期間に雨や雪が当たらないこと
  • 塗装を含む場合は、気温5℃以上・湿度85%未満あたりが目安とされる条件
  • 工期が長いため、春に始めて秋までに終える段取りが要る
  • 補助事業の申請期間と着工時期との兼ね合い

塗り替えより工期が長いぶん、着工が遅れると越冬のリスクが上がります。時期の考え方は北海道で外壁塗装ができる時期を参考にしてください。

10年後・20年後をどう考えるか

外壁の工事は、次の工事までの期間を決める判断でもあります。3つの選択肢を、時間軸で並べてみます。

選択 次に手を入れるまで そのあいだの暮らし
塗り替え おおむね10年前後で再検討 断熱性能は変わらない
かぶせ(重ね張り) 外装材の耐用に応じて長くなる 断熱は仕様による
張り替え+断熱 外装材の耐用に応じて長くなる 暖房の負荷が変わる可能性

ここに住む年数を重ねて考えてください。あと何年その家に住むのか、次の世代に渡すのか。初期費用の差が回収できるかどうかは、住む年数で変わります。

年数の見込みが短いのであれば、塗り替えで維持していくという判断も合理的です。塗り替えの周期の考え方は劣化サインと点検の目安にまとめています。

よくある質問

断熱塗料は補助金の対象になりますか

国の補助事業で躯体の断熱改修の対象とされているのは断熱材です。対象製品は指定のJISに該当し熱伝導率0.052以下のノンフロン製品とされています。個別の製品が対象かどうかは、事業の公式サイトでご確認ください。

塗り替えのついでに断熱もできますか

「ついで」でできる工事ではありません。外装の更新、窓まわりの納まりの作り直し、通気層の再構成を含むためです。ただし、外壁材の更新が必要な時期であれば、まとめて検討する意味はあります。

内側から断熱するのとどちらがいいですか

内側からの断熱は、住みながらの工事がしにくく、防湿層の連続性が重要になります。外側からは外装の更新とセットになります。どちらが向くかは建物の状態と予算によります。

断熱を足すと結露しやすくなりませんか

外側に足す場合、壁の中の温度が上がるため、一般には結露しにくくなる方向に働きます。ただし通気層と防湿層の扱いを誤ると別の問題が出ます。設計での検討が要る理由です。

補助の申請は自分でできますか

この種の事業では、登録した事業者が申請手続きを行うのが一般的です。工事を頼む会社が登録しているかを確認してください。

どのくらい暖かくなりますか

建物の現状、断熱材の種類と厚み、窓の性能によって変わるため、一律には言えません。設計の段階で試算を出してもらってください。

外壁が厚くなると問題はありますか

敷地の境界との距離、庇の出、といの位置に影響します。設計の段階で確認する項目です。

制度は毎年同じですか

変わります。事業名、補助額、対象、着工時期の要件はいずれも年度で見直されます。工事を計画する年度の公式案内を確認してください。

市町村の補助と併用できますか

制度によります。同じ工事に対する国と自治体の補助は、併用できない場合があります。申請の前に、両方の窓口で確認してください。探し方は補助金の記事で扱っています。

断熱材を厚くすれば厚いほどいいのですか

効果は厚みに比例して増えるわけではなく、増やすほど追加分の効き方は小さくなります。壁の厚みには納まりの制約もあります。設計の段階で、費用と効果のつり合いを検討してもらってください。

屋根の断熱だけ先にやることはできますか

できる場合があります。小屋裏からの施工であれば外装を触らずに済むこともあり、工事の規模が小さくなります。ただし小屋裏換気を止めないことが条件です。

まとめ

外側から断熱を足す工事は、塗り替えの延長ではありません。外装を更新し、窓まわりの納まりを作り直し、通気層を再構成する工事です。

国の補助事業であるみらいエコ住宅2026事業の躯体の断熱改修では、対象になるのは断熱材です。原則として指定のJISに該当し熱伝導率0.052以下のノンフロン製品とされ、補助額は断熱材の使用量に応じて設定されています。外壁では、性能の高い区分Fで1立方メートルあたり44,000円、区分Cなどで14,000円という単価が示されています。

設計で要になるのは通気層です。研究機関の資料は、通気層が浸入雨水の排出経路であり、室内側から移動する水蒸気の排出路でもあるとしています。断熱材を足したあと、この道をどこに確保するのかが問われます。

順番としては、窓が先という考え方が一般的です。壁の断熱は、外壁材の更新が必要になった時期に検討するのが効率的です。

そして、塗料は断熱材の代わりになりません。塗り替えは塗り替えとして必要な工事であり、断熱は別の設計を必要とする工事です。両方を検討するなら、見積もりを3段階に分けて出してもらうところから始めてください。

最後に、動き出す順番を整理しておきます。まず今の家の何が寒いのかを切り分ける。次に外壁材が更新の時期に来ているかを確かめる。そのうえで、塗り替え・かぶせ・張り替えプラス断熱の3つを、同じ物差しで比べる。

外壁材がまだ健全であれば、塗り替えで維持しながら窓や天井の断熱を先に進めるほうが、費用に対する効き方は大きくなります。外壁材が寿命に来ているのであれば、そのときが壁の断熱を考える機会です。順番を決めるのは建物の状態であって、補助制度の有無ではありません。

断熱塗料や遮熱塗料の効果をどこまで期待できるかは断熱塗料の効果にまとめています。

軽さを理由に断熱改修で挙がる外壁材は、樹脂サイディングとはにあります。

本記事は公表資料をもとに一般的な考え方を整理したもので、個別の住宅における工法の選定や、補助の可否を判断するものではありません。補助制度の名称・要件・補助額・対象期間は年度により変更されます。掲載した内容は公表資料にもとづくものです。申請の可否や対象製品の該当性は、事業の公式案内および登録事業者にご確認ください。工法の選定は、現地を確認した建築士または施工業者の判断によります。

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